11:45 〜 12:00
[SCG49-05] 固体地球科学と材料科学の融合における回転式ダイヤモンドアンビルセルが担える役割
★招待講演
キーワード:回転式ダイヤモンドアンビルセル、高温高圧、近赤外線加熱、半導体
近年開発を進めてきた回転式ダイヤモンドアンビルセル(rDAC)によって下部マントル全域をカバーする圧力で定量的な大歪変形実験が可能になった(Nomura et al., 2017; Azuma et al., 2019)。最近では、近赤外線を試料に集光するシステム(イメージ炉)を導入することによって安定した高温条件も実現できつつある。これらの装置はSPring-8(BL47XU)に最適化されており、高輝度X線と組み合わせることで変形中の試料の相変態、応力、結晶選択配向などのその場測定ができる(Park et al., 2022)。この開発によって、下部マントル以深の鉱物の変形特性への理解に貢献することが期待されている。その一方で、rDACを用いた高温高圧下における大歪変形実験は、固体地球科学での貢献だけでなく材料科学分野への応用の可能性を見出そうとしている。rDACで行える高圧ねじり試験は、材料科学分野では巨大ひずみ加工法(SPD)の1つとして知られており、試料に大歪の塑性変形を加えて結晶粒を微細にすることで、金属の機械的を変化させる研究が行われている(e.g., Valiev et al., 2000)。他にも、間接遷移型半導体として知られるシリコン(Si)やゲルマニウム(Ge)などは加圧、急速減圧、アニールすることによってその電気伝導度が1桁以上変化することが知られているが、最近では高圧下におけるねじり加工を加えることで、結晶細粒化や準安定相、格子欠陥の導入による半導体の機能向上を図る研究も注目されている。特にSiに対してねじり加工と加熱を加えることで4-6桁の電気伝導度の変化が確認されている(e.g., Ikoma 2019)。主に地球深部科学を対象に実用化されてきたrDACだが、その共通点(ねじり変形、高圧、その場X線測定など)が多い材料科学分野の研究に対し、新たな知見を提供することができると考え、本発表ではrDACで行える実験手法と、提供できるデータを紹介し、材料科学への応用を見据えた議論を行う。現段階では、不純物をドープした間接遷移型半導体を対象とし、rDACを用いてこれまでにない超高圧力、ねじり加工を加え、常圧回収もしくは高圧その場電気伝導度測定を行うことを計画しており、その構想についても紹介する予定である。