日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG50] 機械学習による固体地球科学の牽引

2024年5月27日(月) 10:45 〜 12:00 コンベンションホール (CH-B) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:久保 久彦(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、小寺 祐貴(気象庁気象研究所)、直井 誠(北海道大学)、矢野 恵佑(統計数理研究所)、座長:佐脇 泰典(国立研究開発法人産業技術総合研究所地質調査総合センター)、直井 誠(北海道大学)、小寺 祐貴(気象庁気象研究所)

11:15 〜 11:30

[SCG50-06] 地盤工学問題に対する大規模言語モデルの適用調査

*う すてふぁん1,4、大竹 雄2、水谷 大二郎2、劉 暢1、浅野 湖太郎2、佐藤 那奈2、斉藤 大雅2、馬場 英寿3、福永 勇介5、肥後 陽介3、加村 晃良2、児玉 しんのすけ6、目時 雅隆2、中村 朋佳2、中里 悠人2、塩井 瑛大7、竹信 正寛8、月岡 桂吾9、吉川 崚3 (1.統計数理研究所、2.東北大学、3.京都大学、4.総合研究大学院大学、5.沿岸技術研究センター、6.株式会社日建設計、7.株式会社構造計画研究所、8.国土技術政策総合研究所、9.鉄道総合技術研究所)

キーワード:大規模言語モデル、地盤工学

本研究は、土壌の挙動と地上構造の関係性に焦点を当てた土木工学の重要な分野である地質工学において、GPTのような大規模言語モデル(LLMs)の潜在的な応用に関する調査を報告する。計算方法の進歩にもかかわらず、地質工学は予測できない地下環境の条件やプロジェクトの複雑さの増大といった課題に直面しており、まだコストの超過や安全リスクを引き起こしている。この研究は、人間のような自然言語を理解し生成する能力を持つLLMsを応用し、地質工学における予測能力の向上、設計プロセスの最適化、意思決定の効率化に寄与する可能性を調べる。

本発表の始めには、LLMsとその主要な拡張機能に関する簡単に紹介する。広範な自然言語データセットでトレーニングされたLLMsは、テキストを理解し、要約し、解釈する能力があり、地質工学において技術文書の処理、データの抽出、結果の予測、設計コンセプトの生成などの補助ツールとしての可能性はよく知られている。一方,この研究では、テキストから情報的な特徴を抽出し、マルチモーダルモデリングを行い、説明可能な予測を提供するLLMsの能力を活用して、地質工学におけるLLMsの適用性と効果を評価する。

この研究のために地盤工学の専門家を20人集め,ワークショップを開催した。LLMsが複雑な問題を単純化し、意思決定を強化する役割を示すために、4つのケーススタディを完成した。地質工学のタスクには、斜面安定性評価、地震リスクによるマイクロゾーニング、液状化シミュレーションのためのパラメータ推奨、およびサイトの類似性予測が含まれる。LLMsの利点に加えて、LLMsの確率的性質と単語関係に依存する特性が、複雑な工学タスクにおける正確な解決策を得るために専門家の監視と特定の入力が必要であることがわかった。地質工学における特化した応答のためのLLMsのファインチューニングはまだ課題であり、他のシステムとのシームレスな統合のための効果的なインターフェース設計の必要性もある。

結論として、LLMsの地質工学への応用によるより効率的なデータ駆動型のアプローチへが可能になる。この研究は、LLMsおよびデータサイエンスの初心者であっても、これらのツールを迅速にワークフローに統合し、革新を促進し、この基礎的な工学分野の効率を高めることができることを示している。LLMsは固体地球科学の将来を形作る潜在力があると考えている。