日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG50] 機械学習による固体地球科学の牽引

2024年5月26日(日) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:久保 久彦(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、小寺 祐貴(気象庁気象研究所)、直井 誠(北海道大学)、矢野 恵佑(統計数理研究所)

17:15 〜 18:45

[SCG50-P08] Transformerエンコーダーを用いた火山性地震分類における解釈可能性向上の検証

*鈴木 悠悟1金 亜伊1、山崎 眞見1行竹 洋平2 (1.横浜市立大学、2.東京大学地震研究所)

キーワード:地震学、火山性地震、機械学習、トランスフォーマー

火山地帯では火山活動に関連して度々活発な群発地震が発生する。また、噴火が近くなるとその数は増大し、中でも低周波地震の発生数が増加する傾向にある事例が報告されているが、詳細なメカニズムは未知のままである。それらの地震と噴火の関係を明らかにするためにも火山地震の正確なタイプ分類は非常に重要であるが、現在、これらのプロセスは最終的には人間の判断に委ねられ、膨大な時間と人的コストを要する上、分類基準も主観的である。そこで本研究では上記のプロセスをより客観的に正確に行うために、深層学習の一種であるTransformerのエンコーダ部分を用いて様々な地震のタイプ別に特徴を分析し、分類するモデルを開発した。構築したモデルの性能の検証には、様々なタイプの低周波地震が多く観測されている浅間山で発生する地震を解析対象として選んだ。浅間山で発生するA型(構造性地震)、B型(低周波が卓越する地震)の分類を目的とし、その2種類の地震とノイズデータを使用する。データ数はA型地震が1001個(6634波形), B型地震が4204個(31415波形), ノイズが11205波形となっている。これらのデータの80\%を訓練データ、残りを検証データとして性能を評価した結果、A型地震、B型地震、ノイズのPrecisionはそれぞれ0.88、0.96、1.00、Recallは0.87、0.96、0.99となり、従来の機械学習モデルと同等かそれ以上の性能を持つ事が示された。さらに本研究では深層学習においてブラックボックス化しがちな分類結果の解釈性、つまりモデルの分類基準を明らかにするためにアテンションの重みを可視化した。その結果正しく分類された多くの地震についてA型地震は主にP波とS波に、B型地震はP波からイベント波形の中盤にかけて注目して分類を行っている事が示された。以上より、構築したモデルは人間の手で行う時のような基準、つまりP, Sのオンセットなどの波形の特徴に注目する事で地震のタイプを分類していると考えられる。しかし分類精度が良いにもかかわらず、重みがP, Sに集中せず分散されているものも一定数あり、その原因についてさらに検証したところ、その主たる原因の一つに学習データのラベリングの不確実性がある事が示唆された。分類上ではB型地震であるが、P、Sのオンセットが明瞭な波形があり、それらの波形を除いて学習したところ分類精度は大きく変化しなかったがアテンションの重みが地震のシグナルにより集中するようになった。このことから、精査されたデータを使用することでより分類精度の向上が見込めるため、波形を今一度精査し、統一した基準でラベリングを行う事が重要である。