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[SCG50-P14] ランダムフォレスト解析による地震前の大気中ラドン濃度の異常検知

キーワード:機械学習、ランダムフォレスト解析、大気中ラドン濃度、東北地方太平洋沖地震、兵庫県南部地震
現在、地震発生を予測するために、地震前に発生する様々な異常が研究されているが、その一つが放射性元素ラドン(222Rn)である。土壌、水、大気中のラドン濃度は、地殻変動に応じて変動することが知られている。最近の研究では、地震前のラドン濃度の変動を統計的に解析することで異常を検出し、ラドンの定量的な評価を行っている。しかし、解析に用いるパラメータの決定方法に問題があったことから、本研究ではより客観的な解析目指した。大きな地震がなかった期間の大気中ラドン濃度を平年変動として学習させ、ランダムフォレスト解析によって地震の前の期間に観測されたデータと変動の様子や差の比較を行った。また、予測値と観測値の標準偏差を求めることで、統計的に異常とされる閾値を求め、その値を超えた場合異常であるとみなすことによって異常の検知を行った。神戸薬科大学(N34.733063, E135.283268)では、排気モニターの大気中ラドン濃度データを用いた。1984年から1988年を平常期(教師データ)として1990年から1995年の大気中ラドン濃度を予測し、実際の観測データと比較した。その結果1994年末から観測値が予測値を上回る期間が続いていたことが明らかになった。地震発生の25日前には予測値と観測値の差分から計算された標準偏差の3倍を上回る濃度が観測されていた。これらの結果から、兵庫県南部地震発生前に異常な大気中ラドン濃度の増加が起こっていたと考えられる。また、1990年から1991年には地震発生前の静穏化が原因と考えられる大気中ラドン濃度の低下も確認された。福島県立医科大学(N37.690326, E140.470872)では、排気モニターで観測された電離電流値を、ラドン濃度と線形関係にあることから大気中ラドン濃度に対応する指標として用いた。2002年から2007年を平年変動(教師データ)とし、東北地方太平洋沖地震の発生前の期間(2008年から2011年)の電離電流値を予測した。その結果2010年10月末に予測値と観測値の差分から計算された標準偏差の3倍を上回る濃度が観測された。また、ラドン濃度は季節変動をしており、冬に高いピークを持つ変動をしているが、2010年においてはピークが例年より早く、秋から冬にかけて高いピークをもっていたことが明らかになった。これらの異常から、東北地方太平洋沖地震前に異常な大気中ラドンの増加が起こっていたと考えられる。そのほか、2008年の岩手宮城内陸地震の1週間前に東北地方太平洋沖地震前と同様に標準偏差の3倍を上回る濃度が観測されたことが明らかになった。これらの結果は、地震発生前の大気中ラドン濃度の異常を特定し、地震の前兆を捉えることができる可能性を示している。また、従来の大気中ラドン濃度の異常検知では季節変動を除去したデータを用いて解析を行っていた。しかし、本研究での福島県立医科大学で得られた結果のように、観測された電離電流値をそのまま使用しても先行研究と同様の時期に異常が検知できたことから、異常検知に必要な手順の簡略化に貢献した。