16:30 〜 16:45
[SCG52-11] 太平洋プレートの沈み込みに伴う脱水分解反応の深さ範囲の制約
キーワード:レシーバー関数、日本、海洋モホ
玄武岩質の海洋地殻に取り込まれた水は、海洋プレートの沈み込みによって地球内部へと供給される。その後玄武岩質地殻は相転移に伴い脱水し、特にエクロジャイトへの相転移によって多量の水が排出される。玄武岩質の海洋地殻はスラブマントルに比べ地震波速度が低速であるのに対し、エクロジャイトの速度はほとんど変わらず地震学的に区別がつかないため、地震波速度に着目することで海洋地殻の相転移領域を推定することができる。また、沈み込むプレートから放出された流体は、その上部にあるマントルウェッジ底部に低速の蛇紋岩層を形成することがモデル計算から示されている(Iwamori, 1998; Iwamori, 2000)。東北地方ではレシーバー関数解析により含水海洋地殻の存在範囲と蛇紋岩層の底部であると考えられる速度境界面が明瞭にイメージされている(Kawakatsu and Watada, 2007)。一方で東北地方では深部の太平洋プレートは日本海下に存在することから含水海洋地殻と蛇紋岩層の深さ方向の広がりを評価することは難しい。そこで本研究では、東北地方から関東地方について沈み込み方向に沿ったレシーバー関数イメージングを行い、海洋地殻、海洋モホ、蛇紋岩層の深さ方向および南北方向の特徴を調べた。
2005年4月から2023年3月までに発生したマグニチュード5.5以上、震央距離が30-90°の範囲にある地震の波形を使用した。機器補正(Maeda et al., 2011)を行った後、SN比の良い波形について0.1-0.5 Hzの範囲についてウォーターレベル法(water level =0.001)を用いてレシーバー関数を計算し、得られたレシーバー関数をIASP91一次元速度モデル(Kennett and Engdahl, 1991)を用いて断面上に投影した。この時太平洋プレートの形状(Nakajima et al., 2009)を仮定し、プレート上面での屈折を考慮する方法(Kawakatsu and Yoshioka, 2011)を用いた。
以上の結果、関東地方下では海洋地殻、海洋モホでの速度境界の存在が約150-200 km程度まで存在することが明らかになった。さらに、太平洋プレートの直上に深さ300-350 km程度まで続く正の振幅を持つ層がイメージされた。これは関東地方では東北地方より深部まで含水相が持ち込まれることを示唆する結果であり、フィリピン海プレートの重なりに伴い太平洋プレートの脱水反応が深部へシフトするというモデル(Iwamori, 2000)と整合的である。また、この正の振幅を持つ層は地震の発生面より30 km程度上にあることから、沈み込むスラブから放出された流体によって形成された含水相であると考えられる。
2005年4月から2023年3月までに発生したマグニチュード5.5以上、震央距離が30-90°の範囲にある地震の波形を使用した。機器補正(Maeda et al., 2011)を行った後、SN比の良い波形について0.1-0.5 Hzの範囲についてウォーターレベル法(water level =0.001)を用いてレシーバー関数を計算し、得られたレシーバー関数をIASP91一次元速度モデル(Kennett and Engdahl, 1991)を用いて断面上に投影した。この時太平洋プレートの形状(Nakajima et al., 2009)を仮定し、プレート上面での屈折を考慮する方法(Kawakatsu and Yoshioka, 2011)を用いた。
以上の結果、関東地方下では海洋地殻、海洋モホでの速度境界の存在が約150-200 km程度まで存在することが明らかになった。さらに、太平洋プレートの直上に深さ300-350 km程度まで続く正の振幅を持つ層がイメージされた。これは関東地方では東北地方より深部まで含水相が持ち込まれることを示唆する結果であり、フィリピン海プレートの重なりに伴い太平洋プレートの脱水反応が深部へシフトするというモデル(Iwamori, 2000)と整合的である。また、この正の振幅を持つ層は地震の発生面より30 km程度上にあることから、沈み込むスラブから放出された流体によって形成された含水相であると考えられる。