14:45 〜 15:00
[SCG55-15] 地殻深部の塑性流動による地震発生層へのせん断歪みエネルギーの蓄積:山陰ひずみ集中帯で発生する大地震の原動力
キーワード:歪みエネルギー、塑性流動、山陰ひずみ集中帯
2次元半無限媒質中の地震発生層の下部における横ずれクリープ運動 (面外ひずみ)は,横ずれ断層を引き起こす応力場を地震発生層に形成する最もシンプルなモデルである.さらに,もし地震と深部クリープの断層面が同一平面上にあるならば,大地震のすべりは深部クリープによるすべり遅れの解消とみなすことができる(e.g., Savage and Burford 1970, 1973).山陰ひずみ集中帯で観測されている地表のせん断変形は,このシンプルな面外ひずみのモデルで再現することができる.しかし,大地震の走向はクリープの走向と異なるため(Nishimura & Takada 2017),大地震の断層すべり量を単純に地震間のすべり遅れ量とみなすことができない.また,深部クリープは断層というより有限幅をもつ塑性流動領域であること(Meneses-Gutierrez & Nishimura 2020),定常断層運動や定常塑性流動に対してアセノスフェアは弾性的に振る舞わないなど,地震間のせん断変形と大地震との定量関係を議論するためには,さらなる考慮が必要である.
本研究では,地震を引き起こす応力の蓄積過程を理解するために,2次元面外ひずみ問題として,地殻深部の定常的な塑性流動によって形成される変位速度/応力速度場を定式化する.さらに,山陰ひずみ集中帯を例に地震発生層のせん断歪みエネルギーの蓄積と解放を考える.リソスフェア(厚さH)とアセノスフェアの二層構造のリソスフェア深部に,定常なせん断ひずみ速度v/2Tをもつ塑性流動領域(上端の深さD,幅T)を考える.定常運動に対して,アセノスフェアの粘性は完全緩和状態となる.このときの弾性リソスフェアでの変位速度・応力速度の解析解を導出した.このモデルではH=30km, T=30km, D = 15km, v = 11 mm/yと設定することで,実際に観測されている地表変位速度分布 (Meneses-Gutierrez & Nishimura 2020) を再現できる.さらに,Saito et al (2018 JGR)の方法によって,塑性流動による応力変化と,応力テンソル逆解析により得られた山陰ひずみ集中帯周辺での背景応力場を併せて用いることで,せん断歪みエネルギー増加速度を見積もった.塑性流動領域直上の地震発生層では,およそ4 J/m3/yearでせん断歪みエネルギー密度が増加する(ただし,差応力を50 MPaと仮定).一方,2000年鳥取県西部地震 (MW 6.6) によって,剪断ひずみエネルギー密度は断層面上でおよそ1.2 kJ/m3解消される(ただし,差応力を50 MPaと仮定).つまり,この大地震によって~300年間相当の歪みエネルギー量を解消したことになる.これは一般的な内陸地震の再来間隔(>〜1000年)より短い.今後,地震サイクルにおけるエネルギー収支を明らかにするため,大地震だけでなく,余震活動,余効変動,その他の地震性・非地震性の地震活動による歪みエネルギー解消の定量比較が重要であろう.
本研究では,地震を引き起こす応力の蓄積過程を理解するために,2次元面外ひずみ問題として,地殻深部の定常的な塑性流動によって形成される変位速度/応力速度場を定式化する.さらに,山陰ひずみ集中帯を例に地震発生層のせん断歪みエネルギーの蓄積と解放を考える.リソスフェア(厚さH)とアセノスフェアの二層構造のリソスフェア深部に,定常なせん断ひずみ速度v/2Tをもつ塑性流動領域(上端の深さD,幅T)を考える.定常運動に対して,アセノスフェアの粘性は完全緩和状態となる.このときの弾性リソスフェアでの変位速度・応力速度の解析解を導出した.このモデルではH=30km, T=30km, D = 15km, v = 11 mm/yと設定することで,実際に観測されている地表変位速度分布 (Meneses-Gutierrez & Nishimura 2020) を再現できる.さらに,Saito et al (2018 JGR)の方法によって,塑性流動による応力変化と,応力テンソル逆解析により得られた山陰ひずみ集中帯周辺での背景応力場を併せて用いることで,せん断歪みエネルギー増加速度を見積もった.塑性流動領域直上の地震発生層では,およそ4 J/m3/yearでせん断歪みエネルギー密度が増加する(ただし,差応力を50 MPaと仮定).一方,2000年鳥取県西部地震 (MW 6.6) によって,剪断ひずみエネルギー密度は断層面上でおよそ1.2 kJ/m3解消される(ただし,差応力を50 MPaと仮定).つまり,この大地震によって~300年間相当の歪みエネルギー量を解消したことになる.これは一般的な内陸地震の再来間隔(>〜1000年)より短い.今後,地震サイクルにおけるエネルギー収支を明らかにするため,大地震だけでなく,余震活動,余効変動,その他の地震性・非地震性の地震活動による歪みエネルギー解消の定量比較が重要であろう.