[S-CG55] 変動帯ダイナミクス

[SCG55-P04] アウターライズ正断層のパラメター化と沈み込み帯のテクトニクス

*西沢 貴志¹、深畑 幸俊² (1.京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻、2.京都大学防災研究所)

キーワード：アウターライズ、断層、線形判別分析、海底面粗さ

海溝軸から海側0-100kmの範囲にあたる海洋プレートの表面では、アウターライズと呼ばれる地形の高まりが認められる。アウターライズの周辺は常に引張場となることから、正断層が数多く形成され、海溝の走行方向に沿って最大100 kmスケールの地塁・地溝構造が発達している。そういった大規模な構造は、沈み込んだ先でプレート境界面上の摩擦特性や流体の挙動に影響を与えることが予想される。そこで、本研究ではアウターライズ正断層をパラメター化し、地震・測地学的なカップリングとの比較を試みる。
標高データはETOPO2022(15 sec grid)およびマルチビーム測量の結果を使用する。これらのデータは空間解像度が大きく異なるが、いずれも比較的大規模な正断層であれば、目視でも確認することができる。断層のパラメター化は2通りの方法を採用した。1つ目は、標高データから断層崖そのものを検出し、個々の断層形状を基にパラメター化する手法である(Vega-Ramírez et al., 2021）。このために、まず標高データをある幅で抜き出し、拡散方程式にフィッティングさせることで、ウィンドウ毎に崖の高さ・拡散年代・RMSEを特定する。その後、線形判別分析と呼ばれる機械学習的アプローチを用いることで、検出した崖が断層崖であるのか、単なる急斜面であるのかを分類する。また、連続したウィンドウはしばしば同じ断層崖を検出するため、カーネル密度推定を適用することで検出結果を改善する。2つ目は、断層の振幅を海底面の粗さとして定義する手法である(Lallemand et al., 2018)。このために、2次元ウィンドウ内に存在する標高データを2次元フーリエ変換し、特定の波長帯が持つパワースペクトル密度のみを積分することで、断層の振幅に由来する比較的短波長のRoughnessを定義する。
これらの結果を地震・測地学的なカップリングなどと比較することで、アウターライズ正断層がプレート境界面上の摩擦特性など、沈み込み帯のテクトニクスに及ぼす影響について考察する。