日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM12] Electric, magnetic and electromagnetic survey technologies and scientific achievements

2024年5月26日(日) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:後藤 忠徳(兵庫県立大学大学院理学研究科)、臼井 嘉哉(東京大学地震研究所)、Li Yuguo(Ocean University of China)、Heise Wiebke(GNS Science, PO Box 30368, Lower Hutt, New Zealand)

17:15 〜 18:45

[SEM12-P05] 2011年東北津波に起因する電場変動を用いた神津島地下比抵抗の検討

*武林 哲志1南 拓人1 (1.神戸大学大学院理学研究科惑星学専攻)

キーワード:神津島、津波誘導電磁場、東北地方太平洋沖地震、比抵抗

津波によって高電気伝導度の海水が地球主磁場中を運動する際には、電磁誘導によって観測可能な電磁場変動が発生する(e.g., Tyler, 2005)。2011年東北地方太平洋沖地震によって発生した津波では、海底や陸上で多くの津波誘導電磁場が観測された(Minami and Toh, 2013; Minami et al., 2017)。伊豆諸島の島の一つである神津島では、潮位計データの振幅が最大(~0.8m)となる時刻に、ほぼ同時刻のピークを持つ電場変動が観測されている(中谷, 2015, 東京学芸大卒論)。海底で観測される津波電磁場変動は海底の比抵抗構造の影響が小さい一方で(Shimizu and Utada, 2015)、島で観測される津波誘導電磁場は地下比抵抗構造の影響が大きいことが数値計算で報告されている(柴原, 2022, 神戸大卒論)。また、L字型導体モデルによって位相異常を説明できる可能性が示唆されている(Ichihara and Mogi 2009)。本研究では神津島で観測された津波に誘導されたと思われる電場変動データを用いて、神津島の地下比抵抗値の推定を試みた。
 神津島では観測当時科学技術庁の「地震国際フロンティア研究」の一環として、織原義明博士、野田洋一氏によって観測が行われた。神津島には[拓南1] 南東-北西方向(2.382km)と北東-南西方向(2.137km)の2本の長基線[拓南2] が配置されており、電位差2成分が観測された。本研究では、この電位差データを基線長で割ることで、南北成分と東西成分の電場データに変換し、地下比抵抗構造を変化させながら、数値計算による再現を試みた。神津島の電場計算では、津波計算コードCOMCOT (Wang and Liu 2006)によって津波による流速場を作成したのち、これを入力として、時間領域の有限要素法電磁場計算コードTMTGEM (Minami et al. 2017) による電磁場計算を行った。津波計算の波源にはSatake et al. (2013)の波源モデルを用いた。神津島の地下比抵抗構造については、1000、100、10Ωmの一様構造、及び、島の南東部の海岸線に沿うL字型の低比抵抗領域が存在する比抵抗構造を用いて、電磁場計算を行った。また電磁場計算においては、観測された電位差データとの正確な比較ために、電位差観測の長基線に沿って南東-北西方向は238.2m間隔、北東-南西方向は213.7m 間隔で擬似観測点を配置し、擬似観測点で計算された電場を長基線方向に積分することで、観測値と比較可能な電位差を計算した。
本研究で計算された電場変動では、神津島の地下比抵抗値が大きいほど、電場の変動振幅が大きくなった。成分ごとにみると、観測された電場変動は南北方向よりも東西方向に強く変動していた。比抵抗構造が一様構造で計算された電場は南北方向に強く変動し、東西方向の変動は弱かった。島の南東部にL字型の低比抵抗領域が存在する構造では、南北方向と東西方向で同程度の変動であり、一様構造よりも観測に近い結果であった。東西方向の電場変動を強める比抵抗構造が存在すると予想される。本研究では、今後、より観測に近づく比抵抗構造、並びに、神津島での観測結果に津波以外に起因する電場変動が含まれていた可能性について、詳しく検討していく予定である。