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[SEM13-01] 磁鉄鉱形状に基づいた遠洋性堆積物の磁性への火山性物質の寄与の推定
キーワード:マリアナ海盆、沈み込み帯、新生代
新生代の遠洋性堆積物中には砕屑性磁鉄鉱が含まれている。磁気測定により砕屑性磁鉄鉱の変動を読み取ることで、大陸ダストの量やソースが推定されている。一方、顕微鏡観察により、特に西太平洋域の堆積物には島弧火山に由来する磁鉄鉱が含まれている例が報告されている。本研究では、遠洋性堆積物に含まれる火山由来の磁鉄鉱の堆積物磁性への影響を検討するために、マリアナ海盆のODPサイト777の堆積物について、電子顕微鏡による磁鉄鉱形状の観察・分類と、堆積物の岩石磁気特性との比較を行った。用いた試料の岩相は遠洋性粘土であり、古地磁気層序から約25 Ma までをカバーすると推定される。ネオジウム磁石により分離した磁性鉱物を観察したところ、大陸ダストと考えられる摩耗した粒子と、火山由来と考えられる角ばった粒子(多くは正八面体状)が見られた。粒子の大きさや化学組成は試料間で大きく変化せず、粒子の形状とも目立った相関は示さない。各試料について40粒子の形状を観察し、摩耗した粒子と角ばった粒子の割合を求めたところ、角ばった粒子は最大50%を占めた。この結果は、少なくとも島弧に近い堆積物の磁性には、火山由来の粒子が顕著に貢献していることを示唆する。また、角ばった粒子の割合は約4 Ma 以前には数十%なのに対し、それ以降はおおむね10%以下であった。この変化は、北太平洋の他のサイトで報告されている約3.6 Ma以降の大陸ダストフラックスの増加と調和的である。さらに、この年代は等温残留磁化 (IRM) 着磁曲線の深度変化のトレンドが変わるタイミングと対応している。IRM着磁曲線の成分分解によると、約4 Ma 以降に高保磁力 ( > 100 mT) な成分が増加している。火山由来の反強磁性粒子は少ないと考えられるため、この変化は火山由来の粒子に対する大陸ダストの割合の増加として説明できる。この結果は火山由来の磁鉄鉱のバルク磁性への貢献を支持する。さらに、大陸ダストの磁気特性に大きな変動を仮定する必要はなくなり、約2500万年間にわたる定常的な供給源を暗示する。一方で、IRM着磁曲線の成分分解においては、火山由来の磁鉄鉱と大陸由来の磁鉄鉱とを明確に区別することはできなかった。したがって、IRM成分として求められる砕屑性磁鉄鉱は必ずしも大陸ダストだけのプロキシではない可能性がある。大陸ダストの磁性鉱物組成がほぼ一定であるとすれば、砕屑性磁性鉱物の保磁力の変化によって、火山由来の磁鉄鉱が間接的に定量できるかもしれない。