[S-EM13] 地磁気・古地磁気・岩石磁気

[SEM13-P03] 礁性石灰岩を構成する生物種の堆積プロセスと磁気特性

*福與 直人¹、小田 啓邦¹、穴井 千里²、藤田 和彦³、John Tarduno⁴ (1.産業技術総合研究所地質調査総合センター、2.高知大学海洋コア総合研究センター、3.琉球大学理学部物質地球科学科、4.ロチェスター大学地球環境学科)

キーワード：石灰岩、礁性石灰岩、SQUID顕微鏡

礁性石灰岩の年代決定には、主に放射性炭素年代や U/Th 年代法が用いられるが、ここに古地磁気年代の情報を加えることでより堅牢な年代モデルの構築への貢献が期待される。また、礁性石灰岩から得られた岩石磁気学的パラメータは温暖化や寒冷化といった気候変動や海水準変動と関連している可能性がある。礁性石灰岩を構成する生物はサンゴ類、石灰藻、微生物など様々であり、それらの石灰化プロセスや堆積プロセスは異なるため、磁性鉱物の取り込みや磁化獲得プロセスにも大きく影響を与える。しかし、礁性石灰岩が獲得する磁化は非常に弱いため、これまでは生物種が混合したバルクサンプルによる測定に留まっている。
そこで本研究では、沖縄本島の掘削コアから得られた完新世の礁性石灰岩を用いて、生物種毎に概ね３×３×２ mmの個別試料に切断し、小口径SQUID磁力計による自然残留磁化(NRM)の測定を行った。また個別試料を切り出した範囲と同範囲の薄片を作製し、走査型SQUID顕微鏡による磁気マッピングを行った。
小口径SQUID磁力計による測定結果からは、微生物性炭酸塩岩であるマイクロバイアライトからなる試料が相対的に強い残留磁化を示す一方で、段階交流消磁実験において、不安定な磁化成分（~30 mT)が確認された。一部の試料は負の伏角を示し、掘削残留磁化の獲得が疑われる。一方で、石灰藻やサンゴ類からなる試料においては相対的に弱い残留磁化を示す一方で、磁化成分が概ね原点方向に直線的に減衰する傾向が見られ、これらは概ね掘削地点で期待される伏角を示した。また、走査型SQUID顕微鏡による磁気マッピングからは生物種毎の磁化分布が示されたほか、サンゴ骨格内に二次的に充填したマイクロバイアライト による微小な磁化分布も確認された。
本発表ではこれらの結果を報告する。