[S-EM13] 地磁気・古地磁気・岩石磁気

[SEM13-P08] 堆積軟岩の圧密に伴う磁気特性の変化

*神谷 奈々¹、林田 明² (1.京都大学、2.同志社大学)

キーワード：圧密、磁気特性、堆積軟岩

海底表層の堆積物に含まれる磁性鉱物は，海底面から約15-40 cmほどの深さまでに地球磁場方向に配列し，その後，圧密により固結していく過程で粘土鉱物が定向配列する．変動帯では，上載圧による鉛直方向の圧密に加え側方圧縮により水平方向にも圧密が進行する．これら粒子の再配列によって，磁性鉱物も回転する可能性がある．海底堆積物のような未固結堆積物では，「獲得される残留磁化の伏角が浅くなる現象（伏角誤差）」が確認され，室内実験などから誤差補正の関係式が提案されている（Irving & Major, 1964; Kent, 1973）が，半固結堆積岩への影響は未解明な点が多い．本研究では，圧密により磁気特性がどのように変化するかを明らかにすることを目的として，圧密実験の前後で初磁化率の異方性（AMS）と非履歴性残留磁化（ARM）を測定し，両者を比較して変化の度合いを検討した．
試料は，房総半島に分布する新第三系〜第四系前弧海盆から採取した泥質岩とし，直径約25 mm，高さ約20 mmの円柱形に成形して供試体を作製した．圧密実験は，一軸圧縮試験機を用いて実施し，供試体を圧密リングにはめ込んだ状態で最大80 MPaまで載荷した．圧密実験の前後で，AMSとARMを測定し，両者の結果を比較したところ，初磁化率に関するステレオネットを用いた解析では，異方性楕円体の最大軸と斜交する方向で圧密を行った場合，最大軸が水平に近づく方向へ変化することが判明した．AMS測定結果を用いたフリン図からは，異方性楕円体の最大軸に直交する方向で圧密を行った場合，圧密試験後に面構造の発達度合いが増加することが確認された．ARMの測定結果からは，圧密方向に直交する平面内の２軸（xおよびy軸）方向では，圧密前後で値の変化は見られなかったものの，圧密方向に平行な方向（z軸）では，圧密後に残留磁化が減少する傾向が見られた．この傾向は，圧密方向でARMが減少したことを示しており，初磁化率の異方性楕円体が扁平度を増したことと整合的である．