10:00 〜 10:15
[SGD01-15] 空間ハイパス・フィルタリングによる電子基準点の局所的な変位の検出
キーワード:電子基準点、地殻変動、空間ハイパス・フィルタリング、地すべり、地盤沈下
はじめに
国土地理院の電子基準点網(GEONET)は、日本全国の位置とその変化を得ることができる強力なインフラであり、測量、情報化施工から地殻変動解析まで幅広く利用されている。電子基準点で日々得られるF5解は数mmの精度をもっているものの、プレート境界領域に存在する日本列島では、広域にわたって大きな地殻変動が存在するため、こうした大きな地殻変動を除去しないと、電子基準点ごとの精度の評価は困難である。本講演では、GEONETの変位の空間分布に対してハイパス・フィルタリングを適用することにより、広域の地殻変動を除去し、電子基準点ごとの局所的な変位を抽出することについて報告する。
結果
アンテナ交換等に伴う人為的な変動を除去した10年間の変位分布(図1)は、広域の地殻変動を含むために、地震で大きく変位した点以外では、局所的な変位を見出すのは困難である。そこで、空間ハイパス・フィルタを適用し、広域の変位を除去する。図2は東北南部から四国まででの空間ハイパス・フィルタリング後の結果であり、図2からは局所的な変位が一目瞭然となる。
図2では、各時系列や設置場所の環境を確認することで、局所的な変位の原因を推定した。
〇地震(EQ) 2014年長野県北部地震(M6.7)、2016年鳥取県中部地震(M6.6)や2016年12月28日の茨城県北部の地震(M6.3)による変位が見られる
〇火山活動(VC) 箱根周辺、伊豆大島や三宅島で火山活動に伴う変位が見られる
〇地すべり(LS) 周囲の点とは異なる方向に変位し続ける点がある。大半は地すべり変動によって形成された地形的痕跡である「地すべり地形」と判断された場所に存在している。
〇地盤沈下(GS) 千葉県での水溶性天然ガスのくみ上げに伴う地盤沈下や、2011年東北地方太平洋沖地震のあとに継続している東北地方の火山地帯でのやや広域の沈下が見られる。冬期の消雪用地下水のくみ上げに伴う地盤沈下は夏期に元に戻る場合が多く、10年間の変位としてはほとんど現れていない。千葉県の地盤沈下は、時間的に一様に沈下するとともに、水平方向にも地盤沈下地帯に向かうように継続的に変位している(図3)。
〇積雪(SN) 冬期に積雪の過大な加重で地盤が変位したものが夏期に回復しきれずに変位として残っている
〇樹木(TR) 樹木の繁茂によって、GNSS電波の遮蔽・遅延・乱反射を引き起こしているもので、そもそもデータとして取り扱うのには不適である
考察
地震や火山活動による変位は、変位の発生時期や場所の情報から原因の特定がしやすいことに加えて、局所的であっても、ある程度の範囲に連続的に変位が分布する。
課題は、地すべりによる変位を生じている点が非常に多いことである。地すべりは、観測点を含む数百m~数km程度の領域がブロック的に変位するものであり、地すべり領域内のみで変位が発生している。地すべりには定常的にすべり続けるものや、地震や降雨の影響で間欠的にすべるもの(図4)、さらに両者が合わさった変位など複雑である。
このほか、地盤沈下では上下方向の変位が注目されてきたが、水平方向でも、地盤沈下地帯の中心を向くように変位していることがわかる(図3)。
国土地理院の電子基準点網(GEONET)は、日本全国の位置とその変化を得ることができる強力なインフラであり、測量、情報化施工から地殻変動解析まで幅広く利用されている。電子基準点で日々得られるF5解は数mmの精度をもっているものの、プレート境界領域に存在する日本列島では、広域にわたって大きな地殻変動が存在するため、こうした大きな地殻変動を除去しないと、電子基準点ごとの精度の評価は困難である。本講演では、GEONETの変位の空間分布に対してハイパス・フィルタリングを適用することにより、広域の地殻変動を除去し、電子基準点ごとの局所的な変位を抽出することについて報告する。
結果
アンテナ交換等に伴う人為的な変動を除去した10年間の変位分布(図1)は、広域の地殻変動を含むために、地震で大きく変位した点以外では、局所的な変位を見出すのは困難である。そこで、空間ハイパス・フィルタを適用し、広域の変位を除去する。図2は東北南部から四国まででの空間ハイパス・フィルタリング後の結果であり、図2からは局所的な変位が一目瞭然となる。
図2では、各時系列や設置場所の環境を確認することで、局所的な変位の原因を推定した。
〇地震(EQ) 2014年長野県北部地震(M6.7)、2016年鳥取県中部地震(M6.6)や2016年12月28日の茨城県北部の地震(M6.3)による変位が見られる
〇火山活動(VC) 箱根周辺、伊豆大島や三宅島で火山活動に伴う変位が見られる
〇地すべり(LS) 周囲の点とは異なる方向に変位し続ける点がある。大半は地すべり変動によって形成された地形的痕跡である「地すべり地形」と判断された場所に存在している。
〇地盤沈下(GS) 千葉県での水溶性天然ガスのくみ上げに伴う地盤沈下や、2011年東北地方太平洋沖地震のあとに継続している東北地方の火山地帯でのやや広域の沈下が見られる。冬期の消雪用地下水のくみ上げに伴う地盤沈下は夏期に元に戻る場合が多く、10年間の変位としてはほとんど現れていない。千葉県の地盤沈下は、時間的に一様に沈下するとともに、水平方向にも地盤沈下地帯に向かうように継続的に変位している(図3)。
〇積雪(SN) 冬期に積雪の過大な加重で地盤が変位したものが夏期に回復しきれずに変位として残っている
〇樹木(TR) 樹木の繁茂によって、GNSS電波の遮蔽・遅延・乱反射を引き起こしているもので、そもそもデータとして取り扱うのには不適である
考察
地震や火山活動による変位は、変位の発生時期や場所の情報から原因の特定がしやすいことに加えて、局所的であっても、ある程度の範囲に連続的に変位が分布する。
課題は、地すべりによる変位を生じている点が非常に多いことである。地すべりは、観測点を含む数百m~数km程度の領域がブロック的に変位するものであり、地すべり領域内のみで変位が発生している。地すべりには定常的にすべり続けるものや、地震や降雨の影響で間欠的にすべるもの(図4)、さらに両者が合わさった変位など複雑である。
このほか、地盤沈下では上下方向の変位が注目されてきたが、水平方向でも、地盤沈下地帯の中心を向くように変位していることがわかる(図3)。