日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD02] 地殻変動

2024年5月31日(金) 13:45 〜 15:00 303 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:富田 史章(東北大学災害科学国際研究所)、加納 将行(東北大学理学研究科)、野田 朱美(気象庁気象研究所)、姫松 裕志(国土地理院)、座長:石川 直史(海上保安庁海洋情報部)、富田 史章(東北大学災害科学国際研究所)

14:45 〜 15:00

[SGD02-05] 大規模降雪イベントに伴うGNSS局のステップ状沈降の検出について

*日置 幸介1、郑 硕2 (1.北海道大学大学院理学研究院地球惑星科学部門、2.中国科学院大学)

キーワード:全地球航法衛星システム、表層荷重、沈降、豪雪

2019年台風19号や2017-2020夏季の西日本豪雨の時に、GNSS局が雨水荷重によって一時的に沈降したことが報告されている(Zhan et al., 2020 JGR; Heki & Arief, 2021 EPSL)。それらの沈降は、日本列島では雨水が急速に海へ流出することを反映して、1日程度の短期間しか継続しない。そのため、降雨荷重による沈降は季節的な地殻変動としては現れない。一方、冬季の降雪は数ヶ月の間陸域に積雪としてとどまり、積雪地域に季節的な地殻変動をもたらす (Heki, 2001 Sci.)。
夏季の西日本豪雨のような大規模降雪イベントが冬季に発生すると、広域でステップ状の沈降が生じることが予想され、共通誤差を除去すれば容易に検出できそうである。しかし、積雪荷重による沈降の従来の観測例は季節変化にとどまっており、季節内に複数回含まれるはずの大規模降雪イベントに伴うステップ状の沈降の検出が行われたことはなかった。その際に困難をもたらすのは、(1)大量降雪をもたらす低気圧が大気荷重の減少による地表の隆起をもたらし、積雪荷重による沈降をマスクすること、及び(2)アンテナを格納するレドームへの着雪に伴って見かけの沈降が生じること、の二点である。
今回はGFZのプロダクトであるNTAL (Non-tidal atmospheric loading) を用いて大気圧荷重をあらかじめ補正することによって(1)の問題を解決した。また(2)については、着雪による衛星からのマイクロ波信号の信号対雑音比(SNR)の低下が、見かけの沈降と比例関係にあること(Heki & Jin, 2023 Sat. Nav.)を利用して、着雪の影響の補正を試みた。本研究では、これらの新しいアプローチを用いることによって、北海道で2022年1-2月に生じた大規模降雪イベントに伴うGEONET局のステップ状の沈降を検出することに成功したので、報告する。