17:15 〜 18:45
[SGD02-P04] ハイレートGNSSデータの変曲点自動検出:房総半島沖におけるスロースリップイベントの事例
キーワード:ハイレートGNSS、スロースリップイベント
スロー地震の多様な時間スケールにおける研究が進められている中、100秒から1日程度の継続時間を持つイベントの検出例はまだ少ない(例: Ide and Beroza, 2023)。さらに、より長い継続時間を持つイベントが、より短いイベントの集合体である可能性についての議論も活発に行われている(例: Frank and Brodsky, 2019)。このため、スロー地震の理解を深める上で、1日以下の短いサンプリング間隔での測地学的観測データを用いたスロースリップイベント(SSE)の検出が重要である。
本研究では、1日より短いサンプリング間隔を持つハイレートGNSSデータを用いて、網羅的なイベント検出方法について検討する。このために、Nevada Geodetic Laboratoryが提供する5分間隔の精密単独測位解データセット(例: 三井・新井, 2023)を使用した。我々が以前に行った予備研究では、ハイレートGNSSデータのノイズが大きいため、1日サンプリングデータで行われているテンプレートマッチングによるシグナル検出(例: Rousset et al., 2017)が困難であることがわかった。そこで、イベントの開始時刻と終了時刻に生じる時系列データの変曲点を自動で検出する手法(Taylor and Letham, 2017)を採用した。具体的には、変曲点の候補を多数設定し、事前分布としてラプラス分布を仮定した最大事後確率推定に基づく折れ線回帰を用いて、有意な変曲点を抽出する。
手法の性能を評価するために、ノイズの少ない1日サンプリングGNSSデータに基づいて先行研究が検出したシグナルを、ハイレートGNSSデータで再検出した事例を紹介する。具体的には、東日本の相模トラフ及び日本海溝沈み込み帯に沿う房総半島沖のプレート境界で発生した、2011年、2016年、および2018年のSSE(例: Hirose et al., 2012; Nishimura, 2021)を対象とした。検出テストの結果、2011年と2018年のイベントでは、変位の方向、開始時刻、および終了時刻が以前の研究とほぼ一致し、シグナルの自動検出に成功した。しかし、2016年のイベントでは、明確なシグナルを検出できなかった。これは、2011年および2018年のイベントでは2 cm以上の観測点変位があったのに対し、2016年のイベントでは変位が最大でも1 cmに満たず、シグナルがノイズに対して不十分であったためと考えられる。
ハイレートGNSSデータは短いサンプリング間隔を持つため、イベントの時間発展を詳細に捉えることが期待される。例えば、回帰した折れ線の傾きの変化率を示すデルタ値を用いて、SSEの開始時刻と終了時刻のどちらがより明確に捉えられたかを評価した。結果として、2011年のSSEでは開始時刻が、2018年のSSEでは終了時刻がより高いデルタ値を示した。これは、イベントによって、開始・終了のどちらがより急激な現象となるか異なる可能性を示唆する。本研究で導入した手法は、煩雑な前処理を必要としない自動検出であり、世界中のSSEを対象としてその時間発展の多様性および普遍性を比較検討するのに役立つと考えられる。
本研究では、1日より短いサンプリング間隔を持つハイレートGNSSデータを用いて、網羅的なイベント検出方法について検討する。このために、Nevada Geodetic Laboratoryが提供する5分間隔の精密単独測位解データセット(例: 三井・新井, 2023)を使用した。我々が以前に行った予備研究では、ハイレートGNSSデータのノイズが大きいため、1日サンプリングデータで行われているテンプレートマッチングによるシグナル検出(例: Rousset et al., 2017)が困難であることがわかった。そこで、イベントの開始時刻と終了時刻に生じる時系列データの変曲点を自動で検出する手法(Taylor and Letham, 2017)を採用した。具体的には、変曲点の候補を多数設定し、事前分布としてラプラス分布を仮定した最大事後確率推定に基づく折れ線回帰を用いて、有意な変曲点を抽出する。
手法の性能を評価するために、ノイズの少ない1日サンプリングGNSSデータに基づいて先行研究が検出したシグナルを、ハイレートGNSSデータで再検出した事例を紹介する。具体的には、東日本の相模トラフ及び日本海溝沈み込み帯に沿う房総半島沖のプレート境界で発生した、2011年、2016年、および2018年のSSE(例: Hirose et al., 2012; Nishimura, 2021)を対象とした。検出テストの結果、2011年と2018年のイベントでは、変位の方向、開始時刻、および終了時刻が以前の研究とほぼ一致し、シグナルの自動検出に成功した。しかし、2016年のイベントでは、明確なシグナルを検出できなかった。これは、2011年および2018年のイベントでは2 cm以上の観測点変位があったのに対し、2016年のイベントでは変位が最大でも1 cmに満たず、シグナルがノイズに対して不十分であったためと考えられる。
ハイレートGNSSデータは短いサンプリング間隔を持つため、イベントの時間発展を詳細に捉えることが期待される。例えば、回帰した折れ線の傾きの変化率を示すデルタ値を用いて、SSEの開始時刻と終了時刻のどちらがより明確に捉えられたかを評価した。結果として、2011年のSSEでは開始時刻が、2018年のSSEでは終了時刻がより高いデルタ値を示した。これは、イベントによって、開始・終了のどちらがより急激な現象となるか異なる可能性を示唆する。本研究で導入した手法は、煩雑な前処理を必要としない自動検出であり、世界中のSSEを対象としてその時間発展の多様性および普遍性を比較検討するのに役立つと考えられる。