日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD02] 地殻変動

2024年5月31日(金) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:富田 史章(東北大学災害科学国際研究所)、加納 将行(東北大学理学研究科)、野田 朱美(気象庁気象研究所)、姫松 裕志(国土地理院)

17:15 〜 18:45

[SGD02-P05] 2023年房総SSE

*小沢 慎三郎1宗包 浩志1矢来 博司1 (1.国土交通省国土地理院)

キーワード:SSE、房総

要旨
房総半島沖で2023年11月末から数日かけて遷移的地殻変動が検出された。時間依存のインバージョンにより、フィリピン海プレート上の滑りを推定したところ、従来の房総沖のSSEの領域で2cm程のプレート間滑りが推定された。推定されたMwは6.2と小さく、従来5-6年周期で発生してきたSSEとは異なる可能性があり、今後従来の規模程度のSSEが発生する可能性が残されている。

はじめに
房総域では5-6年程の周期でSSEが発生してきた。2018年のSSEから5年経ち、次のSSEの発生が予想されていた。そのような中、2023年11月に数日かけて、遷移的な地殻変動が発生した。本研究では、2023年11月の遷移的地殻変動に基づき、フィリピン海プレート境界面上の滑りを推定した。

解析方法
2020-2022年の一次トレンド及び周期性分を推定し元データから除去した。40点のGNSS観測点の三隅観測点に対する東西、南北、上下成分を時間依存のインバージョンに使用した。フィリピン海プレートのプレート形状はHirose (2008)に基づき2つの三角形要素を組み合わせた矩形要素で表している。解析期間は2023年9月~2023年12月までとした。滑り角度は固定せず、東方向から時計回りに10-70度の範囲で推定した。時空間のハイパーパラメータは、最尤法により推定している。全点に含まれる共通誤差を考慮して解析を行っており、固定点の影響は比較的小さいと考えられる。

結論
時系列データからは、房総半島で5mm程度の東南東の遷移的地殻変動が数点で検出された。時間依存のインバージョン結果は、従来の房総半島SSEの滑り域で2cm程の滑りが推定されている。推定されたMwは6.2で従来の房総SSEの6.6-6.8程度の規模に比べてかなり小さい値となっている。滑り角度を東、南の条件で推定すると滑り域は房総半島の東、南の2つの領域にピークをもつような結果が推定され、滑り角を東方向から時計回りに10-70度の範囲で推定することが妥当かどうかは検討の余地があると考えられる。従来のSSEより規模がかなり小さいことから、5-6年周期の房総SSEとは違う系統のイベントである可能性があり、このイベントで終わりではなく、今後従来の規模程度のSSEが発生する可能性が残されている。