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[SGL19-03] 北海道の蝦夷層群における炭素・オスミウム同位体・浮遊性有孔虫の統合層序とU-Pb年代を用いたアプチアンのOAE1aの年代
キーワード:白亜紀、海洋無酸素事変1a、アプチアン、蝦夷層群
アプチアンのOAE1aの年代や超オントンジャワ海台との関係については,未解決の大きな問題として残されている.OAE1aの層序については,下部白亜系が連続的に露出するヨーロッパのテチス海域(イタリア,フランス,スペイン)において詳細に検討されてきた.これらの地域では,化石,炭素・オスミウム同位体比による統合層序により,OAE1aを含む下部アプチアン階の詳細な国際年代対比が可能であることが示された(Bottini et al., 2013; Du Vivier et al., 2014; Martínez-Rodríguez et al., 2021).さらに,オスミウム同位体比の検討により,OAE1aの開始期に大規模な火成活動が推定され,その原因として超オントンジャワ海台の噴火が指摘されてきた.一方,OAE1aの絶対年代については,これまで様々なモデルが提案され,各年代モデル間で500万年ちかい相違があった(Erba et al., 2015).その大きな要因としては,これらテチス海域の地層には凝灰岩が挟まらないために,放射年代による直接的な年代決定ができなかったことが挙げられる.一方,近年,オントンジャワ海台の玄武岩類のアルゴン年代の再検討が行われ,OAE1aよりもはるかに若い年代値が提案され,OAE1aと超オントンジャワ海台との関連に疑問が生じた(Davidson et al., 2023).
北海道中央部の惣芦別川上流域では,アプチアンに当時アジア大陸東縁の前弧海盆で堆積した地層が露出する.この地層には多数の珪長質凝灰岩が挟まれており,アプチアンの年代モデルを構築するのに適している.今回,惣芦別川本流及び支流の中天狗沢において,浮遊性有孔虫化石,炭素同位体比,オスミウム同位体比層序を基に,ヨーロッパの代表的なアプチアン階の地層と詳細に対比し,各対比基準面に挟まる19層の凝灰岩のジルコンのU-Pb年代(CA-ID-TIMES)を測定した.その結果,OAE1aの開始と終了年代は,それぞれ119.456 + 0.051/-0.032と118.810 + 0.040/-0.101 Maで,OAE1aの区間は101万6000年であることが明らかとなった.この結果は,GST2020よりもさらに100万年若いが,期間についてはAstronomical age modelで推定されたOAE1aの期間とおおむね整合的である(Charbonnier et al., 2023).さら,アプチアン下部の重要な示準化石であるL. cabriが惣芦別川と中天狗沢共に,OAE1a期間の直上から産出しており,その年代は118.810~118.527 Maの年代を示す.L. cabriはオントンジャワ海台の玄武岩を覆う堆積物からも産出していることから,OAE1aはオントンジャワ海台の噴火によって引き起こされた可能性が高いことが示唆される.
Rerferences
Bottini et al., 2012. Geology, 40, 583–586; Du Vivier, 2014.Earth. Planet. Sci. Lett. 389, 23–33; Martínez-Rodríguez et al., 2021, Glob. Planet Change 207, 103652; Erba et al., 2015. The Geological Society of America Special Paper 511, 271–303; Gale et al., 2020. Geologic Time Scale 2020, 1023–1086.; Davidson et al., 2023. Science 380, 1185–1188; Charbonnier et al., 2023. Earth. Planet. Sci. Lett. 610, 118104.
北海道中央部の惣芦別川上流域では,アプチアンに当時アジア大陸東縁の前弧海盆で堆積した地層が露出する.この地層には多数の珪長質凝灰岩が挟まれており,アプチアンの年代モデルを構築するのに適している.今回,惣芦別川本流及び支流の中天狗沢において,浮遊性有孔虫化石,炭素同位体比,オスミウム同位体比層序を基に,ヨーロッパの代表的なアプチアン階の地層と詳細に対比し,各対比基準面に挟まる19層の凝灰岩のジルコンのU-Pb年代(CA-ID-TIMES)を測定した.その結果,OAE1aの開始と終了年代は,それぞれ119.456 + 0.051/-0.032と118.810 + 0.040/-0.101 Maで,OAE1aの区間は101万6000年であることが明らかとなった.この結果は,GST2020よりもさらに100万年若いが,期間についてはAstronomical age modelで推定されたOAE1aの期間とおおむね整合的である(Charbonnier et al., 2023).さら,アプチアン下部の重要な示準化石であるL. cabriが惣芦別川と中天狗沢共に,OAE1a期間の直上から産出しており,その年代は118.810~118.527 Maの年代を示す.L. cabriはオントンジャワ海台の玄武岩を覆う堆積物からも産出していることから,OAE1aはオントンジャワ海台の噴火によって引き起こされた可能性が高いことが示唆される.
Rerferences
Bottini et al., 2012. Geology, 40, 583–586; Du Vivier, 2014.Earth. Planet. Sci. Lett. 389, 23–33; Martínez-Rodríguez et al., 2021, Glob. Planet Change 207, 103652; Erba et al., 2015. The Geological Society of America Special Paper 511, 271–303; Gale et al., 2020. Geologic Time Scale 2020, 1023–1086.; Davidson et al., 2023. Science 380, 1185–1188; Charbonnier et al., 2023. Earth. Planet. Sci. Lett. 610, 118104.