日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-MP 岩石学・鉱物学

[S-MP23] 鉱物の物理化学

2024年5月31日(金) 10:45 〜 12:00 201A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:萩原 雄貴(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、近藤 望(岡山大学惑星物質研究所)、柿澤 翔(高輝度光科学研究センター)、座長:萩原 雄貴(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、近藤 望(岡山大学惑星物質研究所)、柿澤 翔(高輝度光科学研究センター)

11:30 〜 11:45

[SMP23-07] 衝撃を受けた隕石中におけるSiO2高圧相の高温非晶質化カイネティクス

副島 美優1、*西 真之1森 祐紀2大野 正和1三浦 巧1鶴岡 椋1、河口 彰吾2、新名 亨3、境家 達弘1近藤 忠1 (1.大阪大学理学研究科宇宙地球科学専攻、2.高輝度光科学研究センター、3.愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)

キーワード:ショック隕石、スティショバイト、ザイフェルタイト、非晶質化

天体衝突による強い衝撃を受けた隕石中に発見される超高圧下で安定な鉱物は、隕石が経験した温度圧力履歴を記録する重要な物質学的情報をもたらす。衝撃圧縮時の高圧力は短時間で解消されるため、我々が試料を観察する大気圧下において準安定状態の高圧鉱物は、それらが生成した高圧環境下での結晶構造を保てず、低密度相への逆相転移や結晶性の著しく低下した非晶質化が進行した状態で発見されることがある。特に脱圧直後に残る高温(残留温度)は高圧鉱物の非晶質化を著しく進行させる。Nishi et al. (2023) は、天体衝突前後の温度圧力履歴を解明するための新しい指標として、隕石中に残存するブリッジマナイトに着目し、ブリッジマナイトが非晶質化する速度とその温度依存性を決定した。その結果、非晶質化にともない発生する圧力が非晶質化の進行の阻害することを発見した。本研究では,SiO2の高圧相であるスティショバイトとザイフェルタイトの高温XRD測定により、非晶質化速度とその温度依存性を定量的に決定し、これらの鉱物を含む隕石の残留温度の推定を試みた。出発物質としてマルチアンビル装置で合成したスティショバイトとザイフェルタイトの多結晶体を用いた。高温下非晶質化実験はSPring-8のBL02B2で実施した。窒素ガス高温吹付装置により温度を制御しつつ、1秒から10秒間隔のX線回折データを連続的に取得し、昇温にともなう非晶質化の割合と格子体積の変化を計算した。温度上昇に伴うスティショバイトの格子体積の変化率は、非晶質化が起こる850 K前後で著しく減少した。これはブリッジマナイトの非晶質化実験の結果と同様に、スティショバイトにおいても非晶質化による圧力(応力)発生したことを示唆する。今回発生した圧力は最大約3GPaと見積もられた。また、非晶質化割合の時間変化から、発生した圧力が非晶質化の進行を妨げることが明らかとなった。