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[SMP24-14] 部分溶融岩から深成岩への組織変化再現実験

キーワード:部分溶融岩、岩石実験、岩石組織
深成岩組織の多様性には、部分溶融岩組織から深成岩組織への変化過程が反映されていると考えられる。したがって、天然岩石組織の非平衡状態から地質学時間等の情報を引き出せる可能性がある。まずは、部分溶融岩から深成岩組織への変化過程がどのようなものか実験的に調べた。
細粒(約10 µm)なフォルステライト(Mg2SiO4)+5 vol%エンスタタイト(MgSiO3)+5 vol%ダイオプサイト(MgCaSi2O6)に5 wt.%スピネル(MgAl2O4)を加えた多結晶体(融点=1,316 ℃)を真空焼結法(Koizumi et al. 2010)により合成した。実験では部分溶融岩組織再現のために大気圧下、1,400 ℃で5時間部分溶融させた後、サブソリダス下での変化過程を再現するために異なる時間1,220 ℃で保持し、その後室温まで急冷した。実験後、エネルギー分散型X線分光器(JEOL JED-2300F)が付属されている走査電子顕微鏡(JSM-7800F PRIME)を用いて、試料の化学分析および微細組織観察を行った。
化学分析の結果、結晶化した部分溶融箇所(ex-液相部と呼ぶ)にはCa濃度に幅を持つオージャイト((MgCa)2Si2O6)とアノーサイト(CaAl2Si2O8)[rh1] が見いだされた。微細組織観察の結果、1,220 ℃保持時間が30分以内の試料中では粒子三重点に存在するex-液相部は内向きに湾曲した構造を持ち(fig. 1)、液相-固相の界面張力で決定される外形を保存していた。37時間保持によってex-液相部の外形が変形し始め、130時間保持で波打つような外形を持ち始め(fig. 2)、固相-固相の界面張力に応じたような構造を取った。500時間を経てもex-液相部は完全な固相-固相の平衡形を持つには至らなかった(fig. 3)。
細粒試料を用い組織変化に必要な拡散が効率よく進行したことで、地質時間がかかるような部分溶融岩から深成岩組織への変化過程を再現することに成功した。組織変化は、液相-固相の界面張力から固相-固相の界面張力に従う平衡形への変化に従った。今後はex-液相部の外形変化の定量化を進め、サブソリダス条件下の保持時間との関係を調べる。
引用
Koizumi, S., Hiraga, T., Tachibana, C. et al. Synthesis of highly dense and fine-grained aggregates of mantle composites by vacuum sintering of nano-sized mineral powders. Phys Chem Minerals 37, 505–518 (2010).
細粒(約10 µm)なフォルステライト(Mg2SiO4)+5 vol%エンスタタイト(MgSiO3)+5 vol%ダイオプサイト(MgCaSi2O6)に5 wt.%スピネル(MgAl2O4)を加えた多結晶体(融点=1,316 ℃)を真空焼結法(Koizumi et al. 2010)により合成した。実験では部分溶融岩組織再現のために大気圧下、1,400 ℃で5時間部分溶融させた後、サブソリダス下での変化過程を再現するために異なる時間1,220 ℃で保持し、その後室温まで急冷した。実験後、エネルギー分散型X線分光器(JEOL JED-2300F)が付属されている走査電子顕微鏡(JSM-7800F PRIME)を用いて、試料の化学分析および微細組織観察を行った。
化学分析の結果、結晶化した部分溶融箇所(ex-液相部と呼ぶ)にはCa濃度に幅を持つオージャイト((MgCa)2Si2O6)とアノーサイト(CaAl2Si2O8)[rh1] が見いだされた。微細組織観察の結果、1,220 ℃保持時間が30分以内の試料中では粒子三重点に存在するex-液相部は内向きに湾曲した構造を持ち(fig. 1)、液相-固相の界面張力で決定される外形を保存していた。37時間保持によってex-液相部の外形が変形し始め、130時間保持で波打つような外形を持ち始め(fig. 2)、固相-固相の界面張力に応じたような構造を取った。500時間を経てもex-液相部は完全な固相-固相の平衡形を持つには至らなかった(fig. 3)。
細粒試料を用い組織変化に必要な拡散が効率よく進行したことで、地質時間がかかるような部分溶融岩から深成岩組織への変化過程を再現することに成功した。組織変化は、液相-固相の界面張力から固相-固相の界面張力に従う平衡形への変化に従った。今後はex-液相部の外形変化の定量化を進め、サブソリダス条件下の保持時間との関係を調べる。
引用
Koizumi, S., Hiraga, T., Tachibana, C. et al. Synthesis of highly dense and fine-grained aggregates of mantle composites by vacuum sintering of nano-sized mineral powders. Phys Chem Minerals 37, 505–518 (2010).