17:15 〜 18:45
[SMP24-P02] 北海道、幌満かんらん岩体上部のかんらん岩とマフィック岩からなる対称構造がある露頭に記録されるメルト-岩石反応とマントルの再肥沃化

キーワード:かんらん岩、マフィック岩、再肥沃化、メルト-岩石反応
幌満かんらん岩体は北海道日高変成帯の南端に位置するかんらん岩体で、8×10×3 kmの大きさを持つ。岩体は地質学的・岩石学的特徴より、層厚約1 kmの岩体上部と、層厚約2 kmの岩体下部に分けられ、数多くの研究がなされてきた。本露頭では、かんらん岩とマフィック岩が互層し、一つのかんらん岩層を中心として上下方向に対称構造が観察される(寅丸, 1997, 地質学論集)。本研究では、幌満岩体上部のアポイ岳北方露頭の鉱物化学組成と全岩化学組成を決定した。
かんらん岩には斜長石を含む層と含まない層があり、斜長石レルゾライトとスピネルハルツバージャイトに分類される。斜長石レルゾライト層の内部構造は、斜長石を含む約5 mmの細粒な薄層と、斜長石を含まないカンラン石と輝石に富む数10 mmの層が互層する。一方、スピネルハルツバージャイトの粒径は比較的均質で斜長石レルゾライトと同程度である。
マフィック岩の鉱物組み合わせや化学組成の特徴は、塩谷・新井田 (1997, 地質学論集)や Takazawa et al. (1999, J. Petrol.) の分類に従うと、タイプⅠに相当する。マフィック岩の全岩微量元素は、軽希土類元素に乏しい中央海嶺玄武岩 (N-MORB) に類似したパターンを示す。また、マフィック岩層中の鉱物化学組成には幅があり、結晶内部には元素拡散による組成勾配がある。マフィック岩とかんらん岩の層境界には粒径約2 mmの大きな輝石が存在することが多く、Ti含有量はリムで高い累帯構造がある。この特徴を、マフィック岩形成に関与したMORB組成メルトの流入と壁岩かんらん岩との反応の記録と解釈する。斜長石レルゾライトの全岩化学組成は、スピネルハルツバージャイトとマフィック岩の中間組成を持ち、マフィック岩を作ったメルトがスピネルハルツバージャイトへ流入し反応した結果、肥沃化し斜長石レルゾライトを形成したと推測する。また、単斜輝石のMg#とTiO2含有量の図には負の相関があり、かんらん岩層毎にメルト浸透による再肥沃化の程度が異なると解釈できる。こうした解釈は、同一露頭の試料を用いて行った結晶方位の研究に基づいて、かんらん岩の多くはメルトを含む状態での変形を記録するという結果(日原ほか, 本大会)と整合的である。
マフィック岩の層厚は、斜長石レルゾライトの斜長石を含む薄層よりも大きい。これらの層厚の違いは、浸透してきたメルトの量と関係すると考える(Spiegelman et al., 2001, J. Geophys. Res.; Pec et al., 2020, Geochem. Geophys. Geosyst.)。その場合は、部分溶融の程度とも相関があっただろう。低い部分溶融度のメルトは薄い層を形成し、高い部分溶融度のメルトは厚い層を形成すると推定する。部分溶融の程度は全岩化学組成のRb/Th比に表れる。RbはThよりもかんらん岩の部分溶融時のメルトへの分配係数が高いと仮定できるので、部分溶融度が低いメルトはこの値が高く、部分溶融度が高いメルトは値が低くなる。この値は斜長石レルゾライトで高く、少量の低部分溶融度のメルトが斜長石レルゾライト中の斜長石を含む薄層を形成したと解釈する。一方でマフィック岩層の値は低く、部分溶融度の高い多くのメルトがマフィック岩層を形成したと提案する。本露頭はメルトと岩石の反応により形成されたと結論するが、対称構造の成因については更なる検討が必要である。
私たちは、アポイ岳の東方に流れる幌満川沿いの斜長石レルゾライトの検討も始めた。その一つは、約5 mmの斜長石濃集層とカンラン石と輝石に富み斜長石が粒界に存在する斜長石レルゾライト層、その境界に粗粒な輝石層からなる。鉱物化学組成はアポイ岳北方露頭の斜長石レルゾライトと似た組成を持つ。一方、10数m離れた露頭で採取したものは斜長石濃集層はなく、単斜輝石中のTiO2含有量が低くアポイ岳北方露頭とは異なる。これらのことから、斜長石レルゾライトにも複数種類存在すると推測される。
かんらん岩には斜長石を含む層と含まない層があり、斜長石レルゾライトとスピネルハルツバージャイトに分類される。斜長石レルゾライト層の内部構造は、斜長石を含む約5 mmの細粒な薄層と、斜長石を含まないカンラン石と輝石に富む数10 mmの層が互層する。一方、スピネルハルツバージャイトの粒径は比較的均質で斜長石レルゾライトと同程度である。
マフィック岩の鉱物組み合わせや化学組成の特徴は、塩谷・新井田 (1997, 地質学論集)や Takazawa et al. (1999, J. Petrol.) の分類に従うと、タイプⅠに相当する。マフィック岩の全岩微量元素は、軽希土類元素に乏しい中央海嶺玄武岩 (N-MORB) に類似したパターンを示す。また、マフィック岩層中の鉱物化学組成には幅があり、結晶内部には元素拡散による組成勾配がある。マフィック岩とかんらん岩の層境界には粒径約2 mmの大きな輝石が存在することが多く、Ti含有量はリムで高い累帯構造がある。この特徴を、マフィック岩形成に関与したMORB組成メルトの流入と壁岩かんらん岩との反応の記録と解釈する。斜長石レルゾライトの全岩化学組成は、スピネルハルツバージャイトとマフィック岩の中間組成を持ち、マフィック岩を作ったメルトがスピネルハルツバージャイトへ流入し反応した結果、肥沃化し斜長石レルゾライトを形成したと推測する。また、単斜輝石のMg#とTiO2含有量の図には負の相関があり、かんらん岩層毎にメルト浸透による再肥沃化の程度が異なると解釈できる。こうした解釈は、同一露頭の試料を用いて行った結晶方位の研究に基づいて、かんらん岩の多くはメルトを含む状態での変形を記録するという結果(日原ほか, 本大会)と整合的である。
マフィック岩の層厚は、斜長石レルゾライトの斜長石を含む薄層よりも大きい。これらの層厚の違いは、浸透してきたメルトの量と関係すると考える(Spiegelman et al., 2001, J. Geophys. Res.; Pec et al., 2020, Geochem. Geophys. Geosyst.)。その場合は、部分溶融の程度とも相関があっただろう。低い部分溶融度のメルトは薄い層を形成し、高い部分溶融度のメルトは厚い層を形成すると推定する。部分溶融の程度は全岩化学組成のRb/Th比に表れる。RbはThよりもかんらん岩の部分溶融時のメルトへの分配係数が高いと仮定できるので、部分溶融度が低いメルトはこの値が高く、部分溶融度が高いメルトは値が低くなる。この値は斜長石レルゾライトで高く、少量の低部分溶融度のメルトが斜長石レルゾライト中の斜長石を含む薄層を形成したと解釈する。一方でマフィック岩層の値は低く、部分溶融度の高い多くのメルトがマフィック岩層を形成したと提案する。本露頭はメルトと岩石の反応により形成されたと結論するが、対称構造の成因については更なる検討が必要である。
私たちは、アポイ岳の東方に流れる幌満川沿いの斜長石レルゾライトの検討も始めた。その一つは、約5 mmの斜長石濃集層とカンラン石と輝石に富み斜長石が粒界に存在する斜長石レルゾライト層、その境界に粗粒な輝石層からなる。鉱物化学組成はアポイ岳北方露頭の斜長石レルゾライトと似た組成を持つ。一方、10数m離れた露頭で採取したものは斜長石濃集層はなく、単斜輝石中のTiO2含有量が低くアポイ岳北方露頭とは異なる。これらのことから、斜長石レルゾライトにも複数種類存在すると推測される。