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[SMP24-P09] 愛媛県高縄半島,松山市東部の領家変成岩類の変成P-T条件

キーワード:高縄半島、領家帯、変成分帯、変成P-T条件、ざくろ石+菫青石共生、部分融解
はじめに
愛媛県高縄半島に分布する変成岩類と白亜紀花崗岩類は,領家帯に属している.この地域の花崗岩類は,トーナル岩質岩・花崗閃緑岩・花崗岩の3つの岩相に分類されている (越智, 1982).この分類に基づきジルコンU- Pb年代の測定が行われており,本研究地域に分布する湯ノ山岩体の年代は,98.8 ± 1.0 Ma とされている (Shimooka et al., 2019).
変成岩類は,半島基部に東西方向に狭長に分布しているほか,花崗岩体中の捕獲岩体としても分布している.半島基部の変成岩体は,変成分帯 (Fig. 1),各帯の鉱物組合せの記載が,鳥海ほか (1991)と宮崎ほか (2016)により行われている.最高変成度で見られる泥質変成岩の鉱物組合せは,Grt, Crd, Kfs, Bt, Ms, Pl, Qzであるが,Grt + Crdは明確に報告されていない.
本研究では,松山市東部の半島基部の変成岩体の変成分帯と変成P-T条件の推定を行った.
花崗岩と変成岩の産状
本地域の変成岩と花崗岩は,南東部に半島基部の変成岩体 (以下,M岩体),北西部に,越智 (1982)の湯ノ山岩体に相当する黒雲母花崗岩体と,松山岩体に相当する角閃石黒雲母花崗岩体が分布する.2つの花崗岩体は,変成岩類の片理面に対して非調和的に貫入している.また,変成岩は角閃石黒雲母花崗岩体中の変成捕獲岩体 (以下,X岩体)にも分布する. X岩体やM岩体の一部では,Grt + Crdが見られる.また,X岩体の変成岩は一部ミグマタイト質であり,カリ長石は見られず,優白部の斜長石には波動累帯構造が見られる.
変成分帯
M岩体とX岩体について鉱物組合せに基づいて,以下のように変成分帯を行った.本地域の変成岩は,変成度の低い方から高い方へそれぞれ,Bt zone,Crd zone,Kfs zone,Grt zone,Grt-Crd zoneに分帯できる.このことから,本地域の変成度は南東側から北西側に上昇していることがわかる(Fig. 1).
変成P-T条件
Crd zoneのピーク期の変成P-T条件は,Grt-Bt地質温度計 (Hodges and Spear, 1982)とGMPB地質圧力計 (Hoisch, 1991)の計算結果から,約150–300 MPa,約540–550℃と見積もられる.
Grt-Crd zoneのピーク期の温度条件は, Grt-Crd地質温度計 (Thompson, 1976; Wells, 1979; Perchuk et al., 1985)の計算結果から,約670–750℃と見積もられる.
まとめ
M岩体はこれらの結果より,以下のような順番で変成作用を受けたと考えられる.
(1)領家帯の広域変成作用.
(2)黒雲母花崗岩体と角閃石黒雲母花崗岩体による接触変成作用.
Grt zoneの泥質変成岩は,Kfsが見られる.このことから,Bt + Als + Qz → Grt + Crd + Kfs + H2O (Wei et al., 2004)の反応が起きたと考えられる.また,これらの産状より部分融解は起きていないと考えられる.
X岩体の変成岩には,Kfsが見られない.このことから,Bt + Als + Qz + H2O → Grt + Crd + L (Wei et al., 2004)の反応が起きたと考えられる.また,これらの産状より,X岩体では部分融解が起きたと考えられる.
引用文献
Hodges and Spear (1982) Amer. Mineral., 67, 1118–1134.
Hoisch (1991) CMP, 108, 43–54.
宮崎ほか (2016) 地質図幅「松山」(第2版). 産総研.
越智 (1982) 地質学雑誌, 88, 511–522.
Perchuk et al. (1985) JMG, 3, 265–310.
Shimooka et al. (2019) JMPS, 114, 284–289.
Thompson (1976) AJS, 276, 425–454.
鳥海ほか (1991) 日本の地質「四国地方」. 日本の地質「四国地方」編集委員会, 6–8.
Wei et al. (2004) JMG, 22, 495–508.
Wells (1979) JP. 20, 187–226.
愛媛県高縄半島に分布する変成岩類と白亜紀花崗岩類は,領家帯に属している.この地域の花崗岩類は,トーナル岩質岩・花崗閃緑岩・花崗岩の3つの岩相に分類されている (越智, 1982).この分類に基づきジルコンU- Pb年代の測定が行われており,本研究地域に分布する湯ノ山岩体の年代は,98.8 ± 1.0 Ma とされている (Shimooka et al., 2019).
変成岩類は,半島基部に東西方向に狭長に分布しているほか,花崗岩体中の捕獲岩体としても分布している.半島基部の変成岩体は,変成分帯 (Fig. 1),各帯の鉱物組合せの記載が,鳥海ほか (1991)と宮崎ほか (2016)により行われている.最高変成度で見られる泥質変成岩の鉱物組合せは,Grt, Crd, Kfs, Bt, Ms, Pl, Qzであるが,Grt + Crdは明確に報告されていない.
本研究では,松山市東部の半島基部の変成岩体の変成分帯と変成P-T条件の推定を行った.
花崗岩と変成岩の産状
本地域の変成岩と花崗岩は,南東部に半島基部の変成岩体 (以下,M岩体),北西部に,越智 (1982)の湯ノ山岩体に相当する黒雲母花崗岩体と,松山岩体に相当する角閃石黒雲母花崗岩体が分布する.2つの花崗岩体は,変成岩類の片理面に対して非調和的に貫入している.また,変成岩は角閃石黒雲母花崗岩体中の変成捕獲岩体 (以下,X岩体)にも分布する. X岩体やM岩体の一部では,Grt + Crdが見られる.また,X岩体の変成岩は一部ミグマタイト質であり,カリ長石は見られず,優白部の斜長石には波動累帯構造が見られる.
変成分帯
M岩体とX岩体について鉱物組合せに基づいて,以下のように変成分帯を行った.本地域の変成岩は,変成度の低い方から高い方へそれぞれ,Bt zone,Crd zone,Kfs zone,Grt zone,Grt-Crd zoneに分帯できる.このことから,本地域の変成度は南東側から北西側に上昇していることがわかる(Fig. 1).
変成P-T条件
Crd zoneのピーク期の変成P-T条件は,Grt-Bt地質温度計 (Hodges and Spear, 1982)とGMPB地質圧力計 (Hoisch, 1991)の計算結果から,約150–300 MPa,約540–550℃と見積もられる.
Grt-Crd zoneのピーク期の温度条件は, Grt-Crd地質温度計 (Thompson, 1976; Wells, 1979; Perchuk et al., 1985)の計算結果から,約670–750℃と見積もられる.
まとめ
M岩体はこれらの結果より,以下のような順番で変成作用を受けたと考えられる.
(1)領家帯の広域変成作用.
(2)黒雲母花崗岩体と角閃石黒雲母花崗岩体による接触変成作用.
Grt zoneの泥質変成岩は,Kfsが見られる.このことから,Bt + Als + Qz → Grt + Crd + Kfs + H2O (Wei et al., 2004)の反応が起きたと考えられる.また,これらの産状より部分融解は起きていないと考えられる.
X岩体の変成岩には,Kfsが見られない.このことから,Bt + Als + Qz + H2O → Grt + Crd + L (Wei et al., 2004)の反応が起きたと考えられる.また,これらの産状より,X岩体では部分融解が起きたと考えられる.
引用文献
Hodges and Spear (1982) Amer. Mineral., 67, 1118–1134.
Hoisch (1991) CMP, 108, 43–54.
宮崎ほか (2016) 地質図幅「松山」(第2版). 産総研.
越智 (1982) 地質学雑誌, 88, 511–522.
Perchuk et al. (1985) JMG, 3, 265–310.
Shimooka et al. (2019) JMPS, 114, 284–289.
Thompson (1976) AJS, 276, 425–454.
鳥海ほか (1991) 日本の地質「四国地方」. 日本の地質「四国地方」編集委員会, 6–8.
Wei et al. (2004) JMG, 22, 495–508.
Wells (1979) JP. 20, 187–226.