17:15 〜 18:45
[SMP24-P12] シュードタキライト中の石英の CL 特性とその意義
キーワード:シュードタキライト、カソードルミネッセンス、石英、構造欠陥
シュードタキライトは断層の摩擦熱融解によって生じた脈状またはネットワーク状を呈する細粒な岩石で,その内部に大小様々な破砕岩片を含んでいる.本研究では,摩擦熱融解によって生じたことが明瞭なシュードタキライト脈内の縁辺部および中心部の残存石英粒子の CL (Cathodoluminescence) スペクトル測定を行い,各スペクトルの特徴を検討したので報告する.
本研究で用いた試料は,愛知県足助剪断帯およびスコットランドOuter Hebrides諸島 South Harris Shear Zone に発達するシュードタキライト脈の2つで,いずれも花崗岩類を原岩とする.なお一般的なシュードタキライトの断層脈の厚さは 1 cm未満であるなか,本研究で用いたシュードタキライトは足助剪断帯では 11 cm,South Harris Shear Zoneでは 4 cm とかなり厚いものを用いた.それぞれ,縁辺部および中心部を比較するため脈をいくつかのゾーンに分け,SEMに装着したCL検出器を用いて測定を行った.なお,現在ネパールランタン地域から採取した地滑りに伴うガラス質シュードタキライト(母岩は片麻岩)についても検討中であり,発表時にはその結果も報告する予定である.
石英粒子の CL スペクトル主に青色領域の3.3 eV付近と赤色領域の1.95 eV付近にピークをもつブロードなバンドスペクトルで,2つのバンドの相対的な強度が変化する.シュードタキライト脈の中心部ほど相対的に赤色ピークの強度が増し,全体的な発光強度が弱まるという傾向が見られた.本研究では,分析によって得られたスペクトルを1.65 eV (705 nm),1.9–1.95 eV (620–650 nm),2.15–2.4 eV (500–570 nm),2.6–2.8 eV (440–480 nm),3.1–3.3 eV (380–390 nm) 付近(Stevens-Kalceff, 2009)をピークとする,合計5つのガウス関数の発光成分でフィッティングを行い,各ピークの積分強度を求めた.なおこの傾向は足助剪断帯のシュードタキライトで顕著であった.
得られた5つのピークを比較すると脈の中心部ほど1.9–1.95 eV (620–650 nm) の割合が増加し,3.1–3.3 eV (380–390 nm) の割合が減少する傾向が認められた.1.9–1.95 eV (620–650 nm) のピークは非架橋酸素正孔中心 (NBOHC) が発光原因であると考えられている.これはSiとOの結合が何らかの原因で切られ,酸素原子が電子を獲得した状態の欠陥である.次に 3.1–3.3 eV (380–390 nm) のピークは [AlO4/M+]center が発光原因であると考えられている.これは3価のアルミニウムイオンと1価の陽イオン (H+, Li+, Na+, K+など) がSiに置換することによって生じる欠陥である.[AlO4/M+]center の構造欠陥は陽イオンや電子が移動することでNBOHCへと変化することが知られている (King et al., 2012).シュードタキライト脈の中心部の方が,縁辺部や母岩に比べてNBOHCの割合が高く,[AlO4/M+]center の割合が低くなったのは,溶融時の高温条件下に置かれることで陽イオンの活動が活発となり,[AlO4/M+]center から次々に陽イオンが移動することでNBOHCへと変化していったためであると考えられる.またシュードタキライト脈の中心部の方が,縁辺部や母岩に比べて発光強度が弱まった理由としては,熱により陽イオンの活動が活発であった上,メルトとして存在していた時間が,脈が厚いために長かったので,より欠陥を修復した可能性が考えられる.
本研究で用いた試料は,愛知県足助剪断帯およびスコットランドOuter Hebrides諸島 South Harris Shear Zone に発達するシュードタキライト脈の2つで,いずれも花崗岩類を原岩とする.なお一般的なシュードタキライトの断層脈の厚さは 1 cm未満であるなか,本研究で用いたシュードタキライトは足助剪断帯では 11 cm,South Harris Shear Zoneでは 4 cm とかなり厚いものを用いた.それぞれ,縁辺部および中心部を比較するため脈をいくつかのゾーンに分け,SEMに装着したCL検出器を用いて測定を行った.なお,現在ネパールランタン地域から採取した地滑りに伴うガラス質シュードタキライト(母岩は片麻岩)についても検討中であり,発表時にはその結果も報告する予定である.
石英粒子の CL スペクトル主に青色領域の3.3 eV付近と赤色領域の1.95 eV付近にピークをもつブロードなバンドスペクトルで,2つのバンドの相対的な強度が変化する.シュードタキライト脈の中心部ほど相対的に赤色ピークの強度が増し,全体的な発光強度が弱まるという傾向が見られた.本研究では,分析によって得られたスペクトルを1.65 eV (705 nm),1.9–1.95 eV (620–650 nm),2.15–2.4 eV (500–570 nm),2.6–2.8 eV (440–480 nm),3.1–3.3 eV (380–390 nm) 付近(Stevens-Kalceff, 2009)をピークとする,合計5つのガウス関数の発光成分でフィッティングを行い,各ピークの積分強度を求めた.なおこの傾向は足助剪断帯のシュードタキライトで顕著であった.
得られた5つのピークを比較すると脈の中心部ほど1.9–1.95 eV (620–650 nm) の割合が増加し,3.1–3.3 eV (380–390 nm) の割合が減少する傾向が認められた.1.9–1.95 eV (620–650 nm) のピークは非架橋酸素正孔中心 (NBOHC) が発光原因であると考えられている.これはSiとOの結合が何らかの原因で切られ,酸素原子が電子を獲得した状態の欠陥である.次に 3.1–3.3 eV (380–390 nm) のピークは [AlO4/M+]center が発光原因であると考えられている.これは3価のアルミニウムイオンと1価の陽イオン (H+, Li+, Na+, K+など) がSiに置換することによって生じる欠陥である.[AlO4/M+]center の構造欠陥は陽イオンや電子が移動することでNBOHCへと変化することが知られている (King et al., 2012).シュードタキライト脈の中心部の方が,縁辺部や母岩に比べてNBOHCの割合が高く,[AlO4/M+]center の割合が低くなったのは,溶融時の高温条件下に置かれることで陽イオンの活動が活発となり,[AlO4/M+]center から次々に陽イオンが移動することでNBOHCへと変化していったためであると考えられる.またシュードタキライト脈の中心部の方が,縁辺部や母岩に比べて発光強度が弱まった理由としては,熱により陽イオンの活動が活発であった上,メルトとして存在していた時間が,脈が厚いために長かったので,より欠陥を修復した可能性が考えられる.