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[SMP24-P16] 関東山地三波川帯の鮎川-三波川地域における温度構造
キーワード:三波川帯、炭質物ラマン温度計、関東山地、シュードセクション解析
関東山地三波川帯鮎川-三波川地域で採取された泥質片岩中に含まれる炭質物をラマン分光分析し,炭質物ラマン温度計を用いて温度構造を推定した.その結果,Chlorite帯は約360–440℃,Garnet帯は約400–460℃,Biotite帯は約470–520℃の温度が見積もられた.Chlorite帯とGarnet帯の温度幅の重複は,ざくろ石の出現がMnの全岩化学組成に影響されるという先行研究の報告と調和的であり,紀伊半島や四国など他地域の三波川帯でも同様の傾向が見られる.一方,関東山地三波川帯においてGarnet帯からBiotite帯への遷移温度は460℃付近であるのに対し,四国汗見川地域の三波川帯は490℃付近であり,地域によって黒雲母が出現する温度が異なる事が明らかになった.この理由として,(1) 全岩化学組成の影響と(2) 圧力の影響を検証した.シュードセクション解析によって,黒雲母の安定領域は,全岩化学組成のK2O量によって変化することが示された.しかし,関東山地と四国で報告されている全岩化学組成のうち,K2O量に大きな差は見られなかった.一方で,黒雲母の安定領域は圧力の低下に伴って低温側に拡大することが明らかになった.よって,関東山地三波川帯のBiotite帯は四国三波川帯よりも低圧条件下で変成作用を被った可能性が示唆された.シュードセクション解析の結果から,470℃で黒雲母が出現するのは0.7 GPa程度の圧力条件であり,熱力学的に制約されている四国三波川帯のAlbite-Biotite zoneの圧力条件0.80–0.95 GPaよりも0.1–0.25 GPa程度低い可能性が示された.関東山地三波川帯の冷却年代は四国汗見川地域よりも20 Ma程度若いことが報告されており,圧力条件が低い理由として海嶺の接近によるプレートの若返りによって,スラブの沈み込み角度が浅くなったことが原因であると考えられる.