16:30 〜 16:45
[SSS05-10] 日本海溝および南海トラフにおける準動的地震発生サイクルシミュレーション
★招待講演
我々はこれまで、日本海溝および南海トラフを対象として、地震発生サイクルの数値シミュレーションを多数実施してきた[Nakata et al., 2012; 2014; 2016; 2021; 2023]。本講演では、これまで行ってきた地震発生サイクルシミュレーションの手法の特徴、得られた知見、今後の課題などについて報告する。
数値計算では、プレート境界で発生する地震や非地震性すべりの繰り返しが、プレート相対運動からのずれによって蓄積したすべり欠損を解放する、という過程 [Rice, 1993]をモデル化している。地震波の放射によるエネルギー減衰は、準動的に近似する項 [Rice, 1993; Thomas et al., 2014]を導入して計算している。プレート境界面の摩擦は、すべり速度・状態依存摩擦則 [Dieterich, 1979]に、断層の構成則はNakatani [2001] に従うと仮定しており、強度の時間発展則には、slowness (aging) law [Dieterich, 1979; Ruina, 1983]を用いている。プレート境界面は、海域における構造探査に基づく3次元形状 [Baba et al., 2002; 2006]を、平面の三角形要素に分割した後、3つの三角形要素を1つの四辺形小断層として扱っている。各小断層は、1辺1km前後であり、総数は10~20万となる。それらのすべり応答関数は、均質な半無限弾性媒質中 [Hyodo et al., 2016]において、密行列で計算している。これらの連立微分方程式を、時間刻み幅可変の5次のRunge-Kutta法で時間積分で解いていくが、計算には、海洋研究開発機構の地球シミュレータおよび東北大学サイバーサイエンスセンターの大規模科学計算システムを利用している。
計算の初期条件として、全小断層のすべり速度は、プレート沈み込み速度の0.9倍の値を一様に与えて計算を開始している。モデル領域の外では、すべり速度はプレート沈み込み速度で一定である。また、摩擦パラメタA, B, Lは時間変化しないと仮定している。なお、プレート境界面最浅部での不自然な応力集中を防ぐために、自由表面を海面から6~7 km(トラフ軸の深さまで)下にシフトさせている。摩擦パラメタの設定では、地震発生帯に、A-B<0のすべり速度弱化で小さめのLの値を与えている。背景領域、安定すべり域や非地震性すべり域では、A-B>0にする場合や、A-B<0でLを大きめにする場合もある。
その結果、円形パッチ1つのシンプルなモデルの場合は、ほぼ一定のサイクルで同じ規模の地震やスロー地震の発生を再現できる。複数のパッチがあると、余効すべりによるトリガーなどが見られ、繰り返し間隔はゆらぐが、パッチ同士がある程度空間的に離れている場合、各地震の規模やすべり分布は、おおよそ一定である。また、マルチスケール円形パッチモデル [e.g., Ide and Aochi, 2005]のように、大きさの異なるパッチが重なったり近接したりしている場合、複数のパッチが連動する地震が発生しやすくなり、再現できるマグニチュードや繰り返し間隔のばらつきは大きくなる。また、複数のパッチが連動した場合、ほぼ同じすべり域の同規模の地震であっても、破壊開始点(パッチ)が異なるケースも見られた。
今後も、引き続き様々な状況をモデル化し、地震発生サイクルの多様性の理解につながる計算をしていく。近年は、スパコンの性能も上がっており、より大規模な計算や、小規模な計算を多数試みることも可能になってきた。今後は、他の研究者や学生らとも協力してより多くの仮定や摩擦モデルを用いたシナリオを検討できるよう、一連の作業の単純化にも取り組んでいきたいと考えている。
数値計算では、プレート境界で発生する地震や非地震性すべりの繰り返しが、プレート相対運動からのずれによって蓄積したすべり欠損を解放する、という過程 [Rice, 1993]をモデル化している。地震波の放射によるエネルギー減衰は、準動的に近似する項 [Rice, 1993; Thomas et al., 2014]を導入して計算している。プレート境界面の摩擦は、すべり速度・状態依存摩擦則 [Dieterich, 1979]に、断層の構成則はNakatani [2001] に従うと仮定しており、強度の時間発展則には、slowness (aging) law [Dieterich, 1979; Ruina, 1983]を用いている。プレート境界面は、海域における構造探査に基づく3次元形状 [Baba et al., 2002; 2006]を、平面の三角形要素に分割した後、3つの三角形要素を1つの四辺形小断層として扱っている。各小断層は、1辺1km前後であり、総数は10~20万となる。それらのすべり応答関数は、均質な半無限弾性媒質中 [Hyodo et al., 2016]において、密行列で計算している。これらの連立微分方程式を、時間刻み幅可変の5次のRunge-Kutta法で時間積分で解いていくが、計算には、海洋研究開発機構の地球シミュレータおよび東北大学サイバーサイエンスセンターの大規模科学計算システムを利用している。
計算の初期条件として、全小断層のすべり速度は、プレート沈み込み速度の0.9倍の値を一様に与えて計算を開始している。モデル領域の外では、すべり速度はプレート沈み込み速度で一定である。また、摩擦パラメタA, B, Lは時間変化しないと仮定している。なお、プレート境界面最浅部での不自然な応力集中を防ぐために、自由表面を海面から6~7 km(トラフ軸の深さまで)下にシフトさせている。摩擦パラメタの設定では、地震発生帯に、A-B<0のすべり速度弱化で小さめのLの値を与えている。背景領域、安定すべり域や非地震性すべり域では、A-B>0にする場合や、A-B<0でLを大きめにする場合もある。
その結果、円形パッチ1つのシンプルなモデルの場合は、ほぼ一定のサイクルで同じ規模の地震やスロー地震の発生を再現できる。複数のパッチがあると、余効すべりによるトリガーなどが見られ、繰り返し間隔はゆらぐが、パッチ同士がある程度空間的に離れている場合、各地震の規模やすべり分布は、おおよそ一定である。また、マルチスケール円形パッチモデル [e.g., Ide and Aochi, 2005]のように、大きさの異なるパッチが重なったり近接したりしている場合、複数のパッチが連動する地震が発生しやすくなり、再現できるマグニチュードや繰り返し間隔のばらつきは大きくなる。また、複数のパッチが連動した場合、ほぼ同じすべり域の同規模の地震であっても、破壊開始点(パッチ)が異なるケースも見られた。
今後も、引き続き様々な状況をモデル化し、地震発生サイクルの多様性の理解につながる計算をしていく。近年は、スパコンの性能も上がっており、より大規模な計算や、小規模な計算を多数試みることも可能になってきた。今後は、他の研究者や学生らとも協力してより多くの仮定や摩擦モデルを用いたシナリオを検討できるよう、一連の作業の単純化にも取り組んでいきたいと考えている。
