日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS05] 地震発生の物理・断層のレオロジー

2024年5月27日(月) 09:00 〜 10:15 303 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:奥田 花也(海洋研究開発機構 高知コア研究所)、浦田 優美(産業技術総合研究所)、奥脇 亮(筑波大学)、澤井 みち代(千葉大学)、座長:奥田 花也(海洋研究開発機構 高知コア研究所)、澤井 みち代(千葉大学)


09:00 〜 09:15

[SSS05-11] 沈み込み帯におけるプレート境界断層と変形帯の幅:紀伊半島に分布する四万十帯白亜系花園層の例

★招待講演

*志村 侑亮1、常盤 哲也2、水戸 創也3、菖蒲 一歩4、竹内 誠5 (1.産総研地質調査総合センター、2.信州大学、3.INPEX、4.NEDO、5.名古屋大学)

キーワード:プレート境界断層、メランジュ、四万十帯、紀伊半島

沈み込み帯におけるプレート境界断層とその変形帯の幅は,断層の強度や空間的不均質性など断層のすべり挙動を理解する上で重要なパラメータである.これらの断層と変形帯は,プレート境界で形成される付加体のスラストとメランジュ帯としてそれぞれ保存される.Rowe et al. (2013)は,プレート境界の深度方向への断層と変形帯の幅の変遷を検証し,深度にかかわらず均質であることを報告した.一方,異なる地域や環境の沈み込み帯を統合している点において検討の余地がある.
紀伊半島に分布する四万十帯白亜系の花園層(山本・鈴木, 2012; 栗本ほか, 2015)は,サントニアン期~カンパニアン期に形成された付加体である.花園層は,スラストとメランジュの形態が詳細に検討されている四国の牟岐層(Kimura et al., 2012)と形成時期が類似しているとともに,牟岐層の被熱温度(150~200 °C: Ikesawa et al., 2005; Kitamura et al., 2005)よりも高温であることから(280~290 °C: Awan and Kimura, 1996),牟岐層の深部相とみなすことができる.そこで本研究では,花園層を対象に野外調査に基づく岩相・地質構造の把握,および地質図の作成を行い,スラストとメランジュの分布や形態を把握した.
花園層は,砂岩泥岩互層からなるコヒーレントユニットと泥質基質中に砂岩・多色頁岩・チャート・玄武岩をレンズ状・ブロック状の岩塊として含むメランジュユニットに分けられる.これらのユニットは,構造的上位のコヒーレントユニットと下位のメランジュユニットをひとつのパッケージとして,最下部のスラスト(厚さ数cm~数十cmの剪断帯を伴う)を介してパッケージが繰り返す構造をなしている.また,メランジュユニットの層厚は,側方変化があるものの,数kmと見積もることができ,これは牟岐層のメランジュ帯の層厚(100~150 m: Ikesawa et al., 2005; Kimura et al., 2012)よりも厚い.本研究の結果は,プレート境界の深度に応じて変形帯(メランジュ)の幅が変化することを示唆する.