日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS05] 地震発生の物理・断層のレオロジー

2024年5月27日(月) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:奥田 花也(海洋研究開発機構 高知コア研究所)、浦田 優美(産業技術総合研究所)、奥脇 亮(筑波大学)、澤井 みち代(千葉大学)


17:15 〜 18:45

[SSS05-P01] ニュージーランド南島北西部、反転テクトニクス地域における中・小断層の活動評価

*田上 綾香1岡田 知己1Savage Martha2、Chamberlain Calum2Townend John2松野 弥愛1松本 聡3河村 優太3飯尾 能久4佐藤 将1平原 聡1、木村 洲徳1、Bannister Stephen5、Ristau John5、Ghisetti Francesca6、Sibson Richard7 (1.東北大学大学院理学研究科地震・噴火予知研究観測センター、2.Victoria University of Wellington, New Zealand、3.九州大学大学院理学研究院附属地震火山観測研究センター、4.京都大学防災研究所、5.GNS Science, New Zealand、6.TerraGeologica, New Zealand、7.University of Otago, New Zealand)

キーワード:応力場、断層活動、ニュージーランド、反転テクトニクス断層

目的
 現在のニュージーランドでは、北島から南島北部にかけてオーストラリアプレートに太平洋プレートが沈み込んでいる。南島北部ではおよそESE-WNW方向の圧縮応力場が分布することが確認されている(Townend et al., 2012)。南島北西部ではタスマン海形成時の引張応力場により発達した古い正断層が分布する(例えば、Ghisetti and Sibson, 2006)。現在の南島北西部における逆断層活動のほとんどが、これらの古い正断層が逆断層として活動(反転テクトニクス)しているものである(Ghisetti et al., 2014)。現在の南島北西部は、ニュージーランドの他の地域に比べて地震の発生頻度が低い。しかし、歴史的な大規模地震(例えば、1929年Buller地震 Mw7.3、1968年Inangahua地震 Mw7.2、1991年Hawks Crag地震 Mw6.0)が発生している。よって、この地域に分布する断層のすべりやすさの評価を行うことはこの地域の地震活動の理解のために重要である。
これまでに我々はSlip Tendency法(ST)(Morris et al., 1996)を用いて、Buller地震やInangahua地震の応力場に対する断層のすべりやすさの評価を行った(例えば、田上・他,JpGU 2023)。断層は概ね応力場に対してすべりやすい傾向を示したが、多くの大規模地震においてはメカニズム解が示されているものの実際の断層面は特定されておらず、断層面の選択に任意性が残った。
 そこで、今回はMatched Filter法を用いて中〜微小地震(テンプレート地震の余震)の検出を行い、南島北西部における中〜微小地震の地震断層面の傾向の推定を試みる。それぞれの地震の余震が面状に分布する場合、その余震は断層面で発生していると考えられる。よって、メカニズム解の2つの節面から断層面を判別することが可能と考える。さらに、推定した面とST法による評価の比較を行う。

データと手法
 微小地震の検出にはMatched Filter法(EQcorrscan; Chamberlain et al., 2018)を用いた。テンプレート波形にはHash program(Hardebeck and Shearer, 2002)でP波初動極性から決定したメカニズム解のうち、メカニズム解の品質がAまたはBのものを用いた。
 波形データは臨時観測データ(Okada et al., 2024)と定常観測データ(GeoNet)を用いた。
検出したイベントはNonLinLoc(Lomax et al., 2000)で絶対位置を決定し、さらにGrowClust(Trugman and Shearer, 2017)で波形相関による走時差も使用し、相対位置を決定した。

結果
2013年6月に生じた地震のうち、GeoNetカタログにおいてearthquakeと分類されている5つの地震をテンプレートとして用いた。2013年6月を対象にEQcorrscanを用いて余震の検出を行なった。その結果、74個の地震を検出した。検出した地震にはGeoNetカタログに登録されていない地震も含まれる。
特に多くの余震を検出した地震は以下の3つである。
・6月1日15:38 (M 3.2)の地震
メカニズム解は横ずれ断層型を示す。
余震分布は走向NE-SW、深さ方向の分布はおよそ垂直な傾斜を示し、メカニズム解と整合的である。走向NE-SW(dip 87°)の節面のST値は0.451と0.7よりも小さく、すべりにくい状態を示した。
・6月12日07:29(M 3.3)の地震
メカニズム解は逆断層型を示す。
余震分布は深さ方向の分布から東に傾斜する傾向を示した。東に傾斜する節面(dip 37°)のST値は0.821を示し、すべりやすい状態を示した。
・6月25日04:41(M3.2)の地震
メカニズム解は逆断層型を示す。
余震分布は走向NE-SW、西に傾斜する面を示した。西に傾斜する節面(dip 30°)のST値は0.987とすべりやすい状態を示した。

Matched Filter法で検出した余震分布を用いて、断層面の特定を行うことができた。また断層面の一部はST値の結果とも整合的であった。Matched Filter法による余震分布の検出は断層面の特定および本地域の地震活動の傾向を評価する上で有用であると考えられる。