日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS05] 地震発生の物理・断層のレオロジー

2024年5月27日(月) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:奥田 花也(海洋研究開発機構 高知コア研究所)、浦田 優美(産業技術総合研究所)、奥脇 亮(筑波大学)、澤井 みち代(千葉大学)


17:15 〜 18:45

[SSS05-P08] 小笠原諸島硫黄島で発生する火山性地震の波形の特徴

*及川 元己1上田 英樹1 (1.国立研究開発法人防災科学技術研究所)

キーワード:火山性地震、硫黄島

小笠原諸島に位置する硫黄島は、激しい地殻変動や高い地温が継続的に観測される日本でも火山活動が非常に活発な火山島である。硫黄島では防災科研が1982年に定常観測を始めてからこれまで、多くの地震が日常的に観測されている。硫黄島の地震活動は、火山活動の活発化に伴い大きな地殻変動が観測されると発生数が増加するという特徴があり、地震活動と噴火現象に関連性が指摘されている(Ueda et al. 2018)。硫黄島では2022年7月に観測史上初めてのマグマ噴火が観測されており、将来の大規模噴火の前駆現象を捉える上で、火山性地震と噴火現象の相互作用を理解することは防災上重要である。そこで本研究では、硫黄島で発生する火山性地震の波形の特徴を調べ、火山性地震の分類を試みた。
 硫黄島では高周波成分が卓越する構造性地震と、低周波成分が卓越する低周波地震の2つのタイプのイベントが発生しており、防災科研ではこれらの震源位置を独自に決定している。本研究では防災科研で決められたカタログのうち、2022〜2023年に発生したマグニチュード0以上の構造性地震について波形の分類を行った。観測点は防災科研の定常観測点3点に加え、気象庁の観測点2つの合計5点の3成分速度地震計を用いた。イベントペアの各観測点、各成分について相関係数を計算し、それらの和をクラスタリングの指標として採用した。2-15Hzのバンドパスフィルターをかけ、P波の理論走時から8秒間のウインドウで相互相関関数を計算し、その最大値を各観測点1成分の相関係数とした。クラスタリングのアルゴリズムにはDBSCAN (Ester et al. 1996)を用いた。
 この解析により、構造性地震は25個のクラスターに分類された。1つのクラスターの波形は非常によく似ており、硫黄島の火山構造性地震には相似地震が多く見られるということがわかった。この結果は、ある場所に局在化した小規模な断層面で繰り返し破壊が起こっており、噴火前の地震数の増加は火山性流体の注入を反映していると考えられる。また、観測される地震波形は複雑であり、P波S波に加えて様々な変換波が見られることから硫黄島内部は不均質が強い構造であることが示唆される。