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[SSS05-P09] Olami-Feder-Christensenモデルに自己組織化臨界現象をもたらす対称性の破れ
キーワード:自己組織化臨海現象、Olami-Feder-Christensenモデル
自己組織化臨界現象(SOC)は自然界に存在する様々な現象に対する重要な概念であり, Bak, Tang, Wiesenfeldにより導入され, 地震もそのひとつであることが指摘された(Bak et al. 1987). SOCとは, 系が温度などの外部パラメータの調整なしに臨界状態へと発展し, 時空間の相関関数がべき乗則となる現象のことを指す. Gutenberg-Richter(GR)則としてよく知られているように, 地震もサイズ頻度分布がべき乗則となるが, GR則を再現するモデルとして提案されたものがOlami-Feder-Christensen(OFC)モデルである(Olami et al. 1992). OFCモデルは断層を模したモデルであり, 分配ルールと境界条件が重要な役割を果たす. 分配ルールは一般に空間的に一様なルールを仮定し, 境界条件としてopen boundary conditions(BCs)かfree BCsを計算領域の周囲に課した場合にSOCを示す. 興味深いことに, 境界条件をperiodicにすると(periodic BCs), 系はSOCを示さない(Socolar et al. 1993, Grassberger 1994). また, 分配ルールに空間的非一様性を導入したモデルも提案されているが(Janosi and Kertesz 1993, Ceva 1995, Mousseau 1996, Bach et al. 2008, Li and Wang 2018, Matin et al. 2020), SOC発現の有無は非一様性の強さと境界条件に依存し, SOC発現に関する統一的な理解は未だなされていない.
OFCモデルは2次元正方格子のそれぞれのサイトにエネルギーとされる実数が割り当てられている系であり, 瞬間的な緩和(toppling)と相対的に遅く一様なエネルギーの増加(loading)によって駆動される. それぞれのサイトではtopplingの度に分配ルール(閾値に到達したサイトは隣接する4サイトにエネルギーを分配し, その際エネルギー散逸を起こすものとする)に従いエネルギーを分配する. open BCsもしくはfree BCsの境界では, 系の外側への分配を0とする. そして, この境界からクラスターが生成され(Middleton and Tang 1995), 系全体が自発的にSOCの状態へと移行し(Hergarten and Krenn 2011), 人工的境界の分配ルールの非一様性がSOCの発現に必要であると推測されている(Grassberger 1994).
我々はSOC発現のより根源的な条件を明らかにするために, 最も単純な非一様性を考える. 具体的には, OFCモデルにHoleを加えたモデルである. この系は一様な分配ルールとperiodic BCsの下で駆動する. すなわち, Holeがなければ完全な一様系でありSOCを起こさない. ここにHoleと呼ぶ非一様性を導入する. ここでHoleに対する分配ルールとして隣接サイトからHoleへのエネルギーの分配を0とし, エネルギー吸い込み口として作用する. すなわち, 従来のOFCモデルでは境界で強い散逸が起きるのに対し, 本研究のHoleモデルではperiodic BCsの下, エネルギー散逸はHoleでのみ起こる. まさに境界の役割が全てHoleに託されたモデルである. このモデルはHoleを除き系は空間的に完全に一様である.
数値シミュレーションの結果, Holeが存在しない状況だとSOCを示さないが, Holeが1つでもあればSOCを示した. また, Holeの数が増加させ, 分配ルールに大域的な非一様性を導入すると, サイズ頻度分布がべき乗則から指数関数的な分布に変化しSOCの振る舞いを示さなくなった. これは格子欠陥を持つOFCモデルの結果(Ceva 1995)と整合的である. 以上のことより, OFCモデルがSOCを示すためには局所的な非一様性(hole)が必須であり, 完全な一様性や大域的な非一様性はSOCの状態を壊すと結論付けることができる. 既往研究の理解の範囲では, 系の境界からエネルギーのクラスター化が始まり, そのクラスターによってサイズ頻度分布がべき乗則に従うとされてきた(Hergarten and Krenn 2011). しかし, クラスター化の根源, ひいてはSOCの発現の鍵は系に存在するわずかな非一様性であり, 従来の計算領域周囲に仮定されたopen BCsとfree BCsは意図せずにこの必要条件を含んでいたことを明らかにした.
本研究では, 非一様性を計算領域の外側境界ではなく内側領域のHoleが担い, そこからクラスター構造が形成された. となれば, 次の疑問はHoleが現実世界において何に対応する存在なのか?という問題である. Holeに物理的解釈を与えることが可能になれば, 地震のべき乗則を理解する大きな手掛かりとなるであろう. また, 本研究は空間の対称性が破られた場合, SOCの状態が自ら出現することを示した. SOCに先立って起きるエネルギーのクラスター化は, 対称性の破れ(例えば, 巨視的な磁性において多体系のスピンが一斉にそろいだし磁化を獲得する現象)を想起させる.
OFCモデルは2次元正方格子のそれぞれのサイトにエネルギーとされる実数が割り当てられている系であり, 瞬間的な緩和(toppling)と相対的に遅く一様なエネルギーの増加(loading)によって駆動される. それぞれのサイトではtopplingの度に分配ルール(閾値に到達したサイトは隣接する4サイトにエネルギーを分配し, その際エネルギー散逸を起こすものとする)に従いエネルギーを分配する. open BCsもしくはfree BCsの境界では, 系の外側への分配を0とする. そして, この境界からクラスターが生成され(Middleton and Tang 1995), 系全体が自発的にSOCの状態へと移行し(Hergarten and Krenn 2011), 人工的境界の分配ルールの非一様性がSOCの発現に必要であると推測されている(Grassberger 1994).
我々はSOC発現のより根源的な条件を明らかにするために, 最も単純な非一様性を考える. 具体的には, OFCモデルにHoleを加えたモデルである. この系は一様な分配ルールとperiodic BCsの下で駆動する. すなわち, Holeがなければ完全な一様系でありSOCを起こさない. ここにHoleと呼ぶ非一様性を導入する. ここでHoleに対する分配ルールとして隣接サイトからHoleへのエネルギーの分配を0とし, エネルギー吸い込み口として作用する. すなわち, 従来のOFCモデルでは境界で強い散逸が起きるのに対し, 本研究のHoleモデルではperiodic BCsの下, エネルギー散逸はHoleでのみ起こる. まさに境界の役割が全てHoleに託されたモデルである. このモデルはHoleを除き系は空間的に完全に一様である.
数値シミュレーションの結果, Holeが存在しない状況だとSOCを示さないが, Holeが1つでもあればSOCを示した. また, Holeの数が増加させ, 分配ルールに大域的な非一様性を導入すると, サイズ頻度分布がべき乗則から指数関数的な分布に変化しSOCの振る舞いを示さなくなった. これは格子欠陥を持つOFCモデルの結果(Ceva 1995)と整合的である. 以上のことより, OFCモデルがSOCを示すためには局所的な非一様性(hole)が必須であり, 完全な一様性や大域的な非一様性はSOCの状態を壊すと結論付けることができる. 既往研究の理解の範囲では, 系の境界からエネルギーのクラスター化が始まり, そのクラスターによってサイズ頻度分布がべき乗則に従うとされてきた(Hergarten and Krenn 2011). しかし, クラスター化の根源, ひいてはSOCの発現の鍵は系に存在するわずかな非一様性であり, 従来の計算領域周囲に仮定されたopen BCsとfree BCsは意図せずにこの必要条件を含んでいたことを明らかにした.
本研究では, 非一様性を計算領域の外側境界ではなく内側領域のHoleが担い, そこからクラスター構造が形成された. となれば, 次の疑問はHoleが現実世界において何に対応する存在なのか?という問題である. Holeに物理的解釈を与えることが可能になれば, 地震のべき乗則を理解する大きな手掛かりとなるであろう. また, 本研究は空間の対称性が破られた場合, SOCの状態が自ら出現することを示した. SOCに先立って起きるエネルギーのクラスター化は, 対称性の破れ(例えば, 巨視的な磁性において多体系のスピンが一斉にそろいだし磁化を獲得する現象)を想起させる.
