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[SSS06-P07] 中部・近畿地方の最近130年間の大地震による静的応力変化と周辺活断層への影響評価
キーワード：静的クーロン応力変化
南海トラフ沿いの巨大地震やトルコカフラマンマラシュ地震，熊本地震に見られるように，連鎖的地震発生は海溝型地震でも内陸地震でも起こりうる．大地震を起こした断層運動によって周辺地域の断層に応力が伝播し，その後の地震活動が励起されるためである．応力伝播―地震応答に関しては，最近30年ほどで膨大な研究例が報告されているが，防災面でも，防災情報としての大地震後の隣接断層への影響評価が望まれている（たとえば、地質調査委員会，2016）．このような断層間の相互作用の定量的な指標として，一般に大地震による静的クーロン応力変化（Coulomb failure stress change，ΔCFF）が用いられる．本研究では，中部・近畿地方の過去約130年間の内陸大地震の発生過程において，このような応力伝播・断層間相互作用が有意かを確認することを目的とする．また，今後の地震活動へ適用するために，過去の地震活動による主要活断層への影響を評価する手順として，同地域に発生した大地震の震源断層パラメータを収集・モデル化し，Okada (1992)の半無限弾性体中でΔCFFの逐次計算を行った．その結果，1890年以降の地域内での地震活動のうち，特に1891年濃尾地震（M8.0），1944年東南海地震（M7.9），1946年南海地震（M8.0）において，地震活動の活発化・静穏化に影響を及ぼし得る0.1 bar以上のΔCFFが多くの活断層で顕著に確認された．また，1948年福井地震以降では，すべての地震において震源となった断層上で地震発生直前に0.1 bar以上のΔCFFの増加を確認した．これらの結果より，現在までのこの地域の断層活動には，1)地域全体に影響を及ぼしているイベントは，濃尾地震，東南海地震，南海地震であり，2)その他のイベントは近傍の断層の活動を促進・遅延した，という特徴が見出された．この結果が偶然かどうかを検証するためのランダム試行を行ったところ，得られた結果はランダムなものではないということがわかり，先述した特徴が有意なものであるということがわかった．さらに，地震調査研究推進本部の選定した主要活断層において，地域の過去130年間の地震活動による現在までのCFF変化量を計算した結果，中部地方の主要活断層は濃尾地震，1923年関東地震(M7.9)，東南海地震，南海地震，近畿地方の主要活断層は1927年丹後地震(M7.3)，東南海地震，南海地震，1995年兵庫県南部地震(M7.3)が顕著に影響していることが確認された．地域の102の活断層のうち，魚津断層帯，阿寺断層帯など，20の活断層で顕著な応力蓄積が推定され，平均活動間隔や最新活動からの経過年などの古地震データなどを考慮すると境峠・神谷断層帯，糸魚川静岡構造断層帯などが，今後特に注意が必要な活断層であると考えられる．