11:00 〜 11:15
[SSS07-06] 地殻と上部マントルにおけるエネルギー散逸の振幅依存性について

キーワード:Q値、内部減衰
地球(岩石惑星)は弾性体として近似できるが,変形時にエネルギー散逸(内部減衰)を引き起こす非弾性(Q-1)も持っている.岩石の変形実験は,Q-1が 約10-6以上のひずみに対して顕著な振幅依存性を示すことを実証しているが,地震波によって誘発されるひずみは,通常その閾値よりもはるかに小さい.したがって,すべての地震学的解析は,振幅に依存しない減衰を仮定してきた.しかし,高温高圧条件下における転位による減衰の理論モデルは,地殻と最上部マントルに相当する条件下で,減衰が振幅に依存することを予測している.本研究では,異なる観測振幅を持つ同位置で発生した2つの地震のスペクトルを系統的に解析することにより,本当に地震波減衰が振幅に依存しないかどうかを調査した.
解析した地震は,東北地方で発生したM3−5のスラブ内(深さ:60−80 km),プレート境界(10−50 km),および地殻内(<~10 km)地震である.まず,P波の上下動を使用して速度振幅スペクトルを算出し,震源間距離が5 km以下の地震ペアのスペクトル比を計算した.続いて,幾何減衰を補正するためにスペクトル比を走時で割り,観測された振幅比が特定の範囲内(振幅比の常用対数が0.2ごと)に収まる全てのスペクトル比をスタックして,観測スペクトル比を計算した.最後に,異なる観測振幅比に対するQ-1の差(ΔQ-1)を算出するために,観測スペクトル比に対して理論式をフィッティングした.
結果として,観測された振幅が同一である地震ペアに関してはΔQ-1が0である一方,観測振幅比が増加するにつれてΔQ-1が単調に増加した.この観測振幅比とΔQ-1の間の正の相関は,内部減衰が地震波の振幅に依存することを示唆している.さらに,スラブ内地震が振幅とQ-1の間で最も強い正の相関を示すことも分かった.Q-1と地震波振幅の関係を定量化するためにモデル計算を行ったところ,Q-1と振幅Aの比例関係はQ-1∝Anと表現できることが示唆された.ここで,nは0.05から0.2の範囲だと推定され,深さが増すにつれて増加する.したがって,減衰の振幅依存性を引き起こす物理メカニズムは,高温高圧条件下でより効果的に働くと推測される.
解析した地震は,東北地方で発生したM3−5のスラブ内(深さ:60−80 km),プレート境界(10−50 km),および地殻内(<~10 km)地震である.まず,P波の上下動を使用して速度振幅スペクトルを算出し,震源間距離が5 km以下の地震ペアのスペクトル比を計算した.続いて,幾何減衰を補正するためにスペクトル比を走時で割り,観測された振幅比が特定の範囲内(振幅比の常用対数が0.2ごと)に収まる全てのスペクトル比をスタックして,観測スペクトル比を計算した.最後に,異なる観測振幅比に対するQ-1の差(ΔQ-1)を算出するために,観測スペクトル比に対して理論式をフィッティングした.
結果として,観測された振幅が同一である地震ペアに関してはΔQ-1が0である一方,観測振幅比が増加するにつれてΔQ-1が単調に増加した.この観測振幅比とΔQ-1の間の正の相関は,内部減衰が地震波の振幅に依存することを示唆している.さらに,スラブ内地震が振幅とQ-1の間で最も強い正の相関を示すことも分かった.Q-1と地震波振幅の関係を定量化するためにモデル計算を行ったところ,Q-1と振幅Aの比例関係はQ-1∝Anと表現できることが示唆された.ここで,nは0.05から0.2の範囲だと推定され,深さが増すにつれて増加する.したがって,減衰の振幅依存性を引き起こす物理メカニズムは,高温高圧条件下でより効果的に働くと推測される.