17:15 〜 18:45
[SSS07-P12] 東北日本背孤側における地震波ピーク遅延

キーワード:地震波散乱、不均質構造、エンベロープ拡大、東北日本、背孤側
地球内部の構造が均質であるならば、観測される波形は主にP波、S波の直達波のみから構成されるはずである。しかしながら、実際に観測される波形は、インパルス的な波が崩れ、コーダ波が励起する。この現象は、主に地球内部の短波長不均質構造に起因する、地震波散乱によるものである。先行研究から、S波領域の包絡線の拡大(以下、S波エンベロープ拡大)が、地震波散乱を引き起こす短波長不均質構造をよく特徴づけることが知られている。これまでに、東北日本太平洋側で発生した地震を解析する研究は盛んに行われてきたが、日本海側で発生した地震についての研究例はないようである。しかし、日本海で発生した地震についても、東北日本の背孤側で観測波形が崩れ、火山フロントを超えずともS波エンベロープ拡大が生じているケースがある。そこで本研究は、東北日本の日本海で発生した地震の波形を解析し、東北日本背孤側における不均質構造の地域性を調査した。
本研究では、気象庁の一元化震源カタログと、防災科学技術研究所が公開しているHi-net高感度地震観測網の速度波形データを使用した。2004年4月から2023年4月の期間で、東北日本の日本海下で発生した、マグニチュード3.0から5.5、深さ70 km以浅の地震を解析対象とした。これらの地震に対し、100 kmから250 kmの震源距離にあるHi-net観測点を解析に用いた。先行研究に倣い、S波エンベロープ拡大を特徴づけるパラメータとしてピーク遅延時間を用いる。私たちは、2-4、4-8、8-16、16-32 Hzの4つの周波数帯について、それぞれ平滑化されたエンベロープ波形の最大振幅を与える時刻から最大振幅到達時を計測した。そして、気象庁の理論走時モデル(JMA2001)から予測されるS波理論走時を引くことによりピーク遅延時間を推定した。さらに、私たちは、震源距離に対するピーク遅延時間の回帰からの対数偏差を求めた。私たちは、対象領域を10 km四方のグリッドに分割した2次元の空間分布に表すことで、詳細な不均質構造の地域性を調べた。
解析の結果、ピーク遅延時間は、全ての周波数帯において震源距離依存性と波線経路依存性が明確に確認された。特に、秋田県沖や山形県沖、火山フロントを超える波線経路では値が大きくなった。しかしながら、火山フロントの前孤側と背孤側の双方で周波数依存性が見られなかった。ピーク遅延時間の対数偏差は、秋田県沖や山形県沖の一部領域で大きな値を示した。加えて、火山フロント上の火山や背孤側の一部火山付近でよく一致するように大きな値が現れ、火山フロント上の火山の間隙では小さな値が観測された。ピーク遅延時間の対数偏差が大きくなった地域では、地震波の散乱を起こす短波長不均質構造の存在が示唆され、火山周辺での結果は先行研究と整合する。しかしながら、ピーク遅延解析において重要な指標であるS波の到達時間が、用いた理論走時とずれているケースがあった。この場合、S波の到達時が遅れているか、S波のピークが遅れているかの区別ができていない。したがって、目視で検測するなどの精密な走時検測により、ピーク遅延時間の精度の向上が期待される。
本研究では、気象庁の一元化震源カタログと、防災科学技術研究所が公開しているHi-net高感度地震観測網の速度波形データを使用した。2004年4月から2023年4月の期間で、東北日本の日本海下で発生した、マグニチュード3.0から5.5、深さ70 km以浅の地震を解析対象とした。これらの地震に対し、100 kmから250 kmの震源距離にあるHi-net観測点を解析に用いた。先行研究に倣い、S波エンベロープ拡大を特徴づけるパラメータとしてピーク遅延時間を用いる。私たちは、2-4、4-8、8-16、16-32 Hzの4つの周波数帯について、それぞれ平滑化されたエンベロープ波形の最大振幅を与える時刻から最大振幅到達時を計測した。そして、気象庁の理論走時モデル(JMA2001)から予測されるS波理論走時を引くことによりピーク遅延時間を推定した。さらに、私たちは、震源距離に対するピーク遅延時間の回帰からの対数偏差を求めた。私たちは、対象領域を10 km四方のグリッドに分割した2次元の空間分布に表すことで、詳細な不均質構造の地域性を調べた。
解析の結果、ピーク遅延時間は、全ての周波数帯において震源距離依存性と波線経路依存性が明確に確認された。特に、秋田県沖や山形県沖、火山フロントを超える波線経路では値が大きくなった。しかしながら、火山フロントの前孤側と背孤側の双方で周波数依存性が見られなかった。ピーク遅延時間の対数偏差は、秋田県沖や山形県沖の一部領域で大きな値を示した。加えて、火山フロント上の火山や背孤側の一部火山付近でよく一致するように大きな値が現れ、火山フロント上の火山の間隙では小さな値が観測された。ピーク遅延時間の対数偏差が大きくなった地域では、地震波の散乱を起こす短波長不均質構造の存在が示唆され、火山周辺での結果は先行研究と整合する。しかしながら、ピーク遅延解析において重要な指標であるS波の到達時間が、用いた理論走時とずれているケースがあった。この場合、S波の到達時が遅れているか、S波のピークが遅れているかの区別ができていない。したがって、目視で検測するなどの精密な走時検測により、ピーク遅延時間の精度の向上が期待される。