[S-SS07] 地震波伝播:理論と応用

[SSS07-P13] 九州における非等方な不均質構造検出の試み

*奥田 祐大¹、松本 聡²、江本 賢太郎²、河野 太紀¹ (1.九州大学大学院理学府地球惑星科学専攻、2.九州大学理学研究院付属・地震火山観測研究センター)

キーワード：heterogeneities、anisotropic structure、peak delay times

短周期地震波は，地下の短波長不均質により散乱され，コーダが励起されたり，主要動のエンベロープ幅が拡大されたりする．短波長不均質の特徴的スケールが方向によって異なる非等方な不均質構造の場合には，伝播方向によって異なる影響を受ける．多重前方散乱近似に基づく理論モデルでは，地震波が非等方な不均質構造の長軸方向に伝播する場合のほうが主要動継続時間が大きくなることが知られている．九州は，その形成史により，南北で異なる地質構造をしており，その中央部では臼杵-八代構造線のように，東西に伸びた非等方な地質構造が存在する．もしこのような地質構造が観測される地震波に影響を及ぼすならば，この地域での短波長不均質構造を推定に系統的な影響を及ぼす可能性がある．本研究では九州中央部の地質構造線に対して平行・直交方向に伝播する地震波の観測波形を調べ，非等方な構造の影響が検出されるのかを調べた．

地質構造線を挟むように，九州の東西南北方向に位置するマグニチュード2.4~3.1の地震を選び，東西方向，南北方向の測線上にあるそれぞれ10個の観測点で記録された水平動成分を解析対象とする．2 - 4 Hzのバンドパスフィルターを適用した後，波形の包絡線（エンベロープ）を作成し，S波到達からS波のピークまでのピーク遅延時間を求める．東西・南北それぞれの伝播方向の違いによるピーク遅延時間の伝播距離依存性を調べた．

東西・南北の両方の伝播方向において，伝播距離とともにピーク遅延時間が大きくなる様子が見られた．しかし，両者の方位依存性に対して明瞭な違いは見られず，現時点では地質構造線による不均質構造を示す特徴は見られなかった．ピーク遅延時間にはばらつきも大きかったため，今後地震と観測点ペアの数を増やし，統計的な解析とより詳細な空間スケールでの解析を行うことで，非等方な不均質構造の検出可能性を精査する．