日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS08] 地震活動とその物理

2024年5月26日(日) 09:00 〜 10:00 コンベンションホール (CH-B) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:千葉 慶太(公益財団法人 地震予知総合研究振興会)、山下 裕亮(京都大学防災研究所地震災害研究センター宮崎観測所)、座長:熊澤 貴雄(統計数理研究所)、尾形 良彦(大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 統計数理研究所)

09:45 〜 10:00

[SSS08-04] 能登半島での一連の地震活動の推移とM7.6発生前期間における異常活動の解釈

*熊澤 貴雄1尾形 良彦1 (1.統計数理研究所)

キーワード:群発地震、背景地震強度、ETASモデル、能登半島地震

本発表の要点は以下の4点である.先ず,群発地震開始地域の深部で,2022年初めに一連の加速的な群発地震活発化を検出し,それに伴うGNSS基線斜距離の同時的急増加と対比した.この時に流体の大規模な移動とゆっくりすべりが開始,それらが継続したと考えられる.
次に,M6.5地震の断層モデルの深部延長部で前駆的滑りを仮定した場合の応力変化と,地震活動変化や測地学的変動との対応関係に関して論じた.すなわち深部すべりを仮定したΔCFSパターンは,A地域全域での静穏化,珠洲観測点を起点とする斜距離の増加トレンド,そして南部地域(B地域)の地震群の東方へのマイグレーションと矛盾しない.これらはいずれも2022年終わりから見られた変動であった.同様に,M5.4断層の事後的な滑りを仮定したΔCFSパターンは,M5.4発生(2022年6月19日)の後暫くして北部地域(A,D地域)で見られた活動静穏化と矛盾しない.
そして,M6.5とその最大余震M5.9は群発地震の数密度分布が低い領域で発生し,かつ本震周辺で纏まった数の前震が起こった点を指摘した.また,2022年のM5.4地震直後の最大余震であるM5.0から本震M6.5への主応力方向に沿う短冊域での地震発生分布は深部から浅部への流体の移動またはスロースリップを示唆する.
最後に本震以降の活動に関しては,本震後0.4日間の解析では最大余震M5.9直前にその周辺地域で静穏化が見られた.より長期間の非定常ETASモデル解析によるとM6.5以降に各地域の背景強度は大きく減少し,暫くして増大した.
追加として、2024年にM7.6の地震が発生した後の地震活動の傾向や統計的特徴についても、順次更新しつつ議論する予定である。