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[SSS08-07] 地震活動の静穏化と活発化の可視化―東北地方太平洋沖地震の事例―
キーワード:地震活動、静穏化、活発化
小規模地震活動の静穏化・活発化の状態を把握しておくことは,大規模地震の発生準備過程における静穏化現象やドーナツパターンなど,地震活動の異常を早期に客観的に捉えるのに有効と考えられる.これまで西南日本の地震活動についてeMAP(林元・明田川,2010;吉川・ほか,2021)による解析結果を報告してきた(吉川,2022および2023)が,今回2011年東北地方太平洋沖地震(東北地震)発生前の地震活動について調査を行い同方法の効果を確認したので報告する.
東北地震発生前の静穏化に関しては,既にKatsumata(2011)による研究が行なわれている.その結果によれば,静穏化現象は概ね1987年末から2003年頃までの期間,宮城県沖とその周辺で最も顕著に見ることができる.この結果を踏まえ,今回は同地域付近における静穏化と活発化の発生の状況を確認した.eMAPのデータ処理は次のように行う.まず期間全体にわたり発生した個々の震源を中心に一定距離(50km)内にあるイベント数を基準期間と評価期間に分けて計数する.次に評価期間の地震発生数を基準期間の平均発生率を基準とするポアソン確率に変換し,GMT (Wessel and Smith)などにより地図上に表示する.
Katsumata(2011)と同様の基準期間と評価期間を設定し,静穏化と活発化をeMAPにより解析した.今回はデクラスターによる平滑化処理を行なわず,気象庁震源データ(a)およびそれに対して時間ETASモデル(Ogata,1992;2006)により時間軸を変換したデータ(b)に対して解析を行った.Fig.1によると,いずれの震源データでも活発化域はほぼ福島県の沖合約100kmで直径約100kmの範囲に存在しており,静穏化域はそれを取り囲むように現れたことが分かる.一方で三陸はるか沖の1989〜1996年の活動に関して正反対の結果が生じたのは余震活動の処理によると見られる.本震に関連すると思われる地震活動の主な範囲を太い実線枠で示す.Fig. 2に枠内の静穏化および活発化領域の累積地震回数の時間変化を示す.(a),(b)ともに静穏化域では1988年頃から地震発生率の減少傾向を示す一方,活発化域では1992〜1993年から増加を示す様子が認められる.
以上のeMAPによる解析結果は,東北地震の前の静穏化に関しKatsumata(2011)とは範囲を除き矛盾しない結果を示すと共に,本震を含む活発化域の存在を明瞭に示すものである.
東北地震発生前の静穏化に関しては,既にKatsumata(2011)による研究が行なわれている.その結果によれば,静穏化現象は概ね1987年末から2003年頃までの期間,宮城県沖とその周辺で最も顕著に見ることができる.この結果を踏まえ,今回は同地域付近における静穏化と活発化の発生の状況を確認した.eMAPのデータ処理は次のように行う.まず期間全体にわたり発生した個々の震源を中心に一定距離(50km)内にあるイベント数を基準期間と評価期間に分けて計数する.次に評価期間の地震発生数を基準期間の平均発生率を基準とするポアソン確率に変換し,GMT (Wessel and Smith)などにより地図上に表示する.
Katsumata(2011)と同様の基準期間と評価期間を設定し,静穏化と活発化をeMAPにより解析した.今回はデクラスターによる平滑化処理を行なわず,気象庁震源データ(a)およびそれに対して時間ETASモデル(Ogata,1992;2006)により時間軸を変換したデータ(b)に対して解析を行った.Fig.1によると,いずれの震源データでも活発化域はほぼ福島県の沖合約100kmで直径約100kmの範囲に存在しており,静穏化域はそれを取り囲むように現れたことが分かる.一方で三陸はるか沖の1989〜1996年の活動に関して正反対の結果が生じたのは余震活動の処理によると見られる.本震に関連すると思われる地震活動の主な範囲を太い実線枠で示す.Fig. 2に枠内の静穏化および活発化領域の累積地震回数の時間変化を示す.(a),(b)ともに静穏化域では1988年頃から地震発生率の減少傾向を示す一方,活発化域では1992〜1993年から増加を示す様子が認められる.
以上のeMAPによる解析結果は,東北地震の前の静穏化に関しKatsumata(2011)とは範囲を除き矛盾しない結果を示すと共に,本震を含む活発化域の存在を明瞭に示すものである.