[S-SS08] 地震活動とその物理

[SSS08-P02] 東北日本における観測点マグニチュード偏差

*堀井 信之介¹、前田 拓人¹、高野 智也¹ (1.弘前大学大学院理工学研究科)

キーワード：ローカルマグニチュード

ローカルマグニチュードは通常、観測された地震計の振幅に基づいて推定される。ローカルマグニチュードを推定するにはまず地震波の変位振幅や速度振幅用いて観測点マグニチュードを推定し、その後各観測点でのマグニチュードを平均することで求められる。しかし、この手法では観測された振幅が観測点付近の影響 (サイト増幅等) によって影響を受ける場合があり、この影響はマグニチュードが小さくなるにつれてより顕著になると考えられる。なぜなら、マグニチュード推定に用いられる観測点が、マグニチュードが小さくなるほど少なくなるためである。本研究では東北日本で観測された地震波の速度振幅から観測点マグニチュードを改めて推定することによって、観測点マグニチュードとその平均マグニチュードの偏差 (観測点マグニチュード偏差と定義) を網羅的に調査した。

本研究ではまず、気象庁による地震検測記録に含まれる地震波の振幅値を元に観測点マグニチュードを推定した。2000年から2023年の間に東北地方周辺で発生した気象庁マグニチュード4.0以下でかつ深さが50km以下の地震を用いた。渡辺 (1971) で提案された速度マグニチュード計算式を用いて観測点マグニチュードを推定した。次に、各観測点でのマグニチュードを全観測点で平均し平均マグニチュードを推定した。最後に、観測点マグニチュードから平均マグニチュードを引くことで観測点マグニチュード偏差を推定した。

観測点マグニチュード偏差には系統的な誤差が見られ、一部の観測点では一貫して偏差が正の値、または負の値になるものも見られた。この調査から観測点マグニチュード偏差はその場所ごとに固有のものであることが示唆された。しかしながら、これらの偏差とAVS30やARVといった地震波のサイト増幅を示すものとの相関は小さかった。また、微地形区分や活火山との位置関係、推定に用いた地震の平均震央距離、Hi-net観測点の掘削長等他の指標も観測点マグニチュード偏差と明瞭な相関はなかった。他にも、一部の観測点では推定されたマグニチュード偏差の分布が正規分布から逸脱していることがわかった。これらの原因については不明である。観測点マグニチュード偏差の要因を探るため、強震記録に基づいたサイト増幅の推定等さらなる調査が必要であると考える。