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[SSS08-P04] S-net(日本海溝海底地震津波観測網)データを用いた千島海溝及び日本海溝近傍の最近の地震活動
キーワード:S-net、日本海溝、千島海溝、地震活動
日本海溝および千島海溝域にS-net(Seafloor observation network for earthquakes and tsunamis along the Japan Trench:日本海溝海底地震津波観測網)が設置され,沿岸から海溝軸外側(東側)にかけての海域における地動連続記録が安定的に取得できるようになりほぼ8年が経過した.S-netデータ使用による最近の海域地震活動について調べるために,2016年4月1日以降およそ8年間に発生したいくつかの顕著な地震活動域における震源分布を求めた.震源決定のコードはNonLinLoc(Lomax et al., 2000,2014)を使用し,S-netの各観測点に対してマルチチャネル反射法地震断面図から求めた堆積層厚に基づく補正(西澤ほか,2022)を行った.速度構造モデルは,各地域において実施された構造探査結果を参照し,沈み込む太平洋プレートを考慮した簡単な3次元構造を用いた.
海底ケーブル敷設上の制約から,十勝沖から根室沖にかけてS-netの観測点数は,特に地震活動の高い陸棚から陸側斜面上において十分とはいえない.また震源決定に用いる速度構造モデルの設定は,顕著な海底地形である釧路海底谷を境に特に浅部構造が大きく変化するため容易ではなく,精密な震源決定は困難である.得られた震源分布は速度構造モデルの設定に依存するが,2003年十勝沖地震のすべり域及び海溝軸近傍の地震活動が低調であること,十勝沖での沈み込むプレート境界に沿うより明瞭な地震活動のイメージを得ることができた.
S-net設置後の期間の三陸沖の海溝軸付近の地震活動は一様ではなく,1994年三陸はるか沖地震(Mj 7.6)の余震域である北緯40.5度付近では海溝軸近傍のプレート境界浅部にも地震活動が検出されているが,2011年岩手県沖地震(Mj 7.4)の余震域にあたる北緯39.5度近傍では,海溝軸からプレート境界深度10kmの間の領域では地震活動は見られない。北緯39.5度付近の海溝軸から陸側約60kmの地点で2023年8月25日に,Mj 6.0 (Mw 5.8:F-net MT)の地震がプレート境界で発生し,震源域近傍でやや活発な活動が観測された.震源再決定の結果,8⽉25⽇より始まったプレート境界に沿う地震活動域は東西約40kmの広がりを持ち,震源は時間とともに東方へ移動したが海溝軸までは達することはなく,10日ほどで沈静化したことがわかった.
千葉県東方沖では銚子から南東方向に海溝三重合点に向かって長さ80km程度の地震活動の高い帯が存在する.この地域では,陸側プレート下に沈み込む太平洋プレートの上方にフィリピン海プレートの沈み込みの先端部が存在し,複雑な地震活動が観測されている.また,地震活動帯の西方と東方では、SSEが繰り返し観測されている.2023年12月21日よりMw 4以上の6地震(最大Mj 5.4)を含む活発な地震活動が観測されたので,震源の再決定を行った.震源決定おける速度構造モデルでは,この領域のフィリピン海プレートは島弧地殻に近いと推定されるため,太平洋プレートの沈み込みのみを反映させた.得られた震源の深さはばらつきが大きいが,この領域で推定されているフィリピン海プレート上面の位置に対応している.2024年1月10日までMHi-net 2.0以上の223地震がやや東方に移動する傾向が見えるも約20kmの範囲に集中して断続的に発生した.
海底ケーブル敷設上の制約から,十勝沖から根室沖にかけてS-netの観測点数は,特に地震活動の高い陸棚から陸側斜面上において十分とはいえない.また震源決定に用いる速度構造モデルの設定は,顕著な海底地形である釧路海底谷を境に特に浅部構造が大きく変化するため容易ではなく,精密な震源決定は困難である.得られた震源分布は速度構造モデルの設定に依存するが,2003年十勝沖地震のすべり域及び海溝軸近傍の地震活動が低調であること,十勝沖での沈み込むプレート境界に沿うより明瞭な地震活動のイメージを得ることができた.
S-net設置後の期間の三陸沖の海溝軸付近の地震活動は一様ではなく,1994年三陸はるか沖地震(Mj 7.6)の余震域である北緯40.5度付近では海溝軸近傍のプレート境界浅部にも地震活動が検出されているが,2011年岩手県沖地震(Mj 7.4)の余震域にあたる北緯39.5度近傍では,海溝軸からプレート境界深度10kmの間の領域では地震活動は見られない。北緯39.5度付近の海溝軸から陸側約60kmの地点で2023年8月25日に,Mj 6.0 (Mw 5.8:F-net MT)の地震がプレート境界で発生し,震源域近傍でやや活発な活動が観測された.震源再決定の結果,8⽉25⽇より始まったプレート境界に沿う地震活動域は東西約40kmの広がりを持ち,震源は時間とともに東方へ移動したが海溝軸までは達することはなく,10日ほどで沈静化したことがわかった.
千葉県東方沖では銚子から南東方向に海溝三重合点に向かって長さ80km程度の地震活動の高い帯が存在する.この地域では,陸側プレート下に沈み込む太平洋プレートの上方にフィリピン海プレートの沈み込みの先端部が存在し,複雑な地震活動が観測されている.また,地震活動帯の西方と東方では、SSEが繰り返し観測されている.2023年12月21日よりMw 4以上の6地震(最大Mj 5.4)を含む活発な地震活動が観測されたので,震源の再決定を行った.震源決定おける速度構造モデルでは,この領域のフィリピン海プレートは島弧地殻に近いと推定されるため,太平洋プレートの沈み込みのみを反映させた.得られた震源の深さはばらつきが大きいが,この領域で推定されているフィリピン海プレート上面の位置に対応している.2024年1月10日までMHi-net 2.0以上の223地震がやや東方に移動する傾向が見えるも約20kmの範囲に集中して断続的に発生した.