17:15 〜 18:45
[SSS09-P08] 東部南海トラフにおける地震探査による地殻構造調査
キーワード:南海トラフ、地殻構造、地震探査、反射波プロファイル、沈み込み帯
プレート沈み込みに伴う地震およびスロー地震が繰り返し発生する南海トラフにおいて、多様な地震活動と地質構造の関係について理解を深めるためには、広域かつ稠密に地殻構造を調査し、沈み込み帯の詳細な構造と物性を三次元的に明らかにしていくことが必要である。海洋研究開発機構では、2018年から継続的に、稠密な測線を新たに設定し、反射法地震探査および屈折法・広角反射法地震探査による地殻構造調査を実施している。本講演では、2022年および2023年に、東部南海トラフにおいて実施された地震探査について報告する。熊野灘沖から遠州灘沖は、1944年昭和東南海地震の発生域を含み、大型の地震が幾度も発生してきた。近年ではスロー地震の繰り返し発生が確認されているもの、その分布は一様ではない。また、海底地形や付加体形状が大きく変わる海域であり、古銭洲海嶺のように起伏に富む海洋地殻がトラフ軸に対して斜めに沈み込みことが、付加体の構造発達および地震活動へ影響することが示唆される。
調査航海は、①海底地震計の設置、②反射法・屈折法探査、③海底地震計の回収という一連の作業からなる。2022年度には、①「よこすか」によるYK22−14、②「かいめい」によるKM22-10、および③傭船航海、2023年度には、①と②からなる「かいめい」によるKM23-13および③傭船航海による調査を実施した。反射法探査では、長尺ハイドロフォンストリーマーケーブル(4.5kmまたは5.5km)と50m間隔で発震する大容量エアガン(10,600cu.in.)を用い、トラフ軸と概ね直交ないし並行する複数測線を設定してデータ取得を行なった。主としてトラフ軸と概ね直交な方向には、既存調査と合わせて4km間隔で対象地域をカバーできるよう測線を設定した。ただし、実際には8kmないし12kmの間隔でしかデータ取得が進んでいない領域があり、同程度の密度で測線を埋め合わせるための調査を今後も継続する予定である。一方、屈折法・広角反射法探査は、トラフ軸と概ね直交方向の既存測線を利用し、過去の調査における海底地震計設置点の間に2台を追加する間隔で、各測線に50点ずつ四成分海底地震計を設置し、同じく大容量エアガンによる200m間隔の発震記録を収録した。既存測線に対して海底地震計の設置密度を上げる目的は、従来の初動走時トモグラフィに続いて、全波形情報を用いる波形インバージョンを適用することで、地殻内の地震波速度構造を従来よりも高分解能に推定するのに利用するためである。
反射法データは、調査する船上では簡易的な基本処理を適用され、その後、標準処理を適用された断面を用いて新規取得データと既存データの一部を合わせて、近年の標準的なデータ処理およびイメージング技術を適用して統一的に解析を行う。複合的なノイズ抑制と多重反射波抑制処理、デ・ゴースト処理、デ・バブル処理等を含む前処理を適用後、時間領域および深度領域の重合前マイグレーションを適用して、地下構造断面を生成し、調査海域全体の詳細な地質構造を描像する。その結果、広域的な沈み込む海洋地殻上面の形状、付加体内部の変形構造および堆積盆地が、トラフ軸に沿って変化する様子が確認された。全体的には複数の覆瓦状スラストが繰り返すことで付加体が形成されている様子を確認でき、一部には周辺に比べて付加体内の堆積構造に変形が乏しい場所や、広域的な横ずれ運動に伴って形成されるフラワー構造が確認された。今後、稠密な反射法データに基づく詳細な地質構造解釈と、屈折法・広角反射法データによる地震波速度に基づく物性推定を組み合わせた解析により、起伏に富む海洋プレートの斜め沈み込みに伴う、付加体形成および地震活動への影響を明らかにするために重要となる。
調査航海は、①海底地震計の設置、②反射法・屈折法探査、③海底地震計の回収という一連の作業からなる。2022年度には、①「よこすか」によるYK22−14、②「かいめい」によるKM22-10、および③傭船航海、2023年度には、①と②からなる「かいめい」によるKM23-13および③傭船航海による調査を実施した。反射法探査では、長尺ハイドロフォンストリーマーケーブル(4.5kmまたは5.5km)と50m間隔で発震する大容量エアガン(10,600cu.in.)を用い、トラフ軸と概ね直交ないし並行する複数測線を設定してデータ取得を行なった。主としてトラフ軸と概ね直交な方向には、既存調査と合わせて4km間隔で対象地域をカバーできるよう測線を設定した。ただし、実際には8kmないし12kmの間隔でしかデータ取得が進んでいない領域があり、同程度の密度で測線を埋め合わせるための調査を今後も継続する予定である。一方、屈折法・広角反射法探査は、トラフ軸と概ね直交方向の既存測線を利用し、過去の調査における海底地震計設置点の間に2台を追加する間隔で、各測線に50点ずつ四成分海底地震計を設置し、同じく大容量エアガンによる200m間隔の発震記録を収録した。既存測線に対して海底地震計の設置密度を上げる目的は、従来の初動走時トモグラフィに続いて、全波形情報を用いる波形インバージョンを適用することで、地殻内の地震波速度構造を従来よりも高分解能に推定するのに利用するためである。
反射法データは、調査する船上では簡易的な基本処理を適用され、その後、標準処理を適用された断面を用いて新規取得データと既存データの一部を合わせて、近年の標準的なデータ処理およびイメージング技術を適用して統一的に解析を行う。複合的なノイズ抑制と多重反射波抑制処理、デ・ゴースト処理、デ・バブル処理等を含む前処理を適用後、時間領域および深度領域の重合前マイグレーションを適用して、地下構造断面を生成し、調査海域全体の詳細な地質構造を描像する。その結果、広域的な沈み込む海洋地殻上面の形状、付加体内部の変形構造および堆積盆地が、トラフ軸に沿って変化する様子が確認された。全体的には複数の覆瓦状スラストが繰り返すことで付加体が形成されている様子を確認でき、一部には周辺に比べて付加体内の堆積構造に変形が乏しい場所や、広域的な横ずれ運動に伴って形成されるフラワー構造が確認された。今後、稠密な反射法データに基づく詳細な地質構造解釈と、屈折法・広角反射法データによる地震波速度に基づく物性推定を組み合わせた解析により、起伏に富む海洋プレートの斜め沈み込みに伴う、付加体形成および地震活動への影響を明らかにするために重要となる。