日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS10] 強震動・地震災害

2024年5月27日(月) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:友澤 裕介(鹿島建設)、林田 拓己(国立研究開発法人建築研究所 国際地震工学センター)

17:15 〜 18:45

[SSS10-P01] 令和6年能登半島地震による地震動最大値の距離減衰特性に関する検討

*司 宏俊1古村 孝志1 (1.東京大学地震研究所)

キーワード:能登半島地震、最大加速度、最大速度、距離減衰特性、地震動予測式

2024年1月1日16時10分ごろにMw7.5の能登半島地震が発生し、この地震により石川県を中心とする広域において多数の家屋が倒壊し241名(2月14日現在)もの尊い人命を失った甚大な災害をもたらした。特に能登半島では2か所において震度7が観測され、住宅倒壊等の被害が大きかった。このような被害の生成要因などを検討するには当該地震による地震動強度の情報を、国内外で発生した他の大地震との比較を含めて検討する必要があると考えられる。そのために、本稿では、令和6年能登半島地震の際に震源近傍の能登半島で得られた観測記録も含めた多数の強震記録を用いて、地震動の最大加速度、最大速度の距離減衰特性の検討を通じて能登半島地震による地震動強度について検討を行ったので、その結果を報告する。
検討に用いた強震記録は防災科学技術研究所(NIED)が運営するK-NET, KiK-netにより観測された加速度波形である。これらの観測記録について、0.1-10Hzで平坦なバンドパスフィルターをかけ、時間積分して速度波形を求めた。これらの波形から最大加速度(PGA)、最大速度(PGV)を求めた。なお、PGAは地表観測値をそのまま、PGVは観測値を司・翠川(1999)の式(4)で定義する地盤の増幅率で除することによりVS30=600m/sの硬質地盤上での地震動に変換した値を使用した。PGVはVS30の値が推定されている観測点のみを使用した。地震動の最大値は水平2成分のうち大きいほうの値とした。それぞれの観測点から震源断層までの断層最短距離は2024年1月30日に国土地理院により推定された断層モデルを用いて求めた。断層の平均深さは10㎞程度とし、地震のMwは7.5とした。
図1にMw 7.5能登半島地震で観測されたPGAおよびPGVの距離減衰特性をそれぞれ示す。図には司・翠川(1999)の地震動予測式(距離減衰式)による予測値も示されている。これらの図から、PGAとPGVはいずれも約20㎞より遠い観測点では観測記録と予測値が平均的におおむね整合しているが、それより近距離では平均か平均より大きい値を持つ地震動が多くみられた。これは、これらの観測点の多くが断層の上盤にあり、海側にある下盤では観測点がないことや地盤特性による影響が残っているなどが要因として考えられる。ただし、震源断層などの情報もまだ暫定的であると考えられるため、結果は今後変わる可能性もある。