日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS10] 強震動・地震災害

2024年5月27日(月) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:友澤 裕介(鹿島建設)、林田 拓己(国立研究開発法人建築研究所 国際地震工学センター)

17:15 〜 18:45

[SSS10-P09] 地震動時刻歴波形データのサンプル生成の試み

*岩城 麻子1、今井 隆太2、賀須井 直規2藤原 広行1 (1.防災科学技術研究所、2.みずほリサーチ&テクノロジーズ)

キーワード:入力地震動、サンプル生成、地震動シミュレーション

特定地点や構造物における地域特性を反映した信頼性の高いリスク評価のための入力地震動について、想定される地震の断層位置形状や破壊様式といったシナリオの不確かさに起因する入力地震動のばらつきを考慮するためには、多様な断層モデルを設定する必要がある。しかし、大量の断層モデルに対して、断層近傍や平野部などの断層破壊過程や複雑な地盤構造を考慮した地震動シミュレーションを一つ一つ行うことは現実的ではない。
本研究では、入力地震動波形群の多様性確保を目的として、一定数のシナリオに対する既存の地震動シミュレーション波形を用いて、その集合から新たな地震波形データの集合を生成することを試みる。新たに生成される地震波形データの集合は時間領域・周波数領域における「地震波形らしさ」と入力地震動波形群としての「適切な分布」を有するべきだが、それらはいずれも既存の集合から特徴を引き継ぐことを考え、既存波形データ集合の特徴抽出および確率分布推定に基づくサンプル生成手法を検討した。
まず、不均質媒質モデルと強震動予測の標準的な手法(レシピ)に従った逆断層型の断層モデルを用いて、断層と観測点の位置関係や断層破壊様式の多様性を考慮した約1500波の地震動波形群を計算した(1波形1成分あたり6000次元)。これを「既存波形データ集合」とし、これらの時間・周波数領域における特徴の定量的表現として、時間分解能と周波数分解能を両立できるwavelet packet (WP)変換によるWP係数を算出した。次に、WP係数に対して次元削減した特徴量を抽出し、仮定した確率密度関数に従って特徴量のサンプル生成を行った。サンプルされた特徴量をデコードしWP係数を逆変換することにより地震波形データが生成される。これを「生成された地震波形データ集合」とする。
本発表では、特徴量が従う確率密度関数を仮定するにあたり、Variational Auto Encoder (VAE)による正規分布と経験コピュラ(Imai et al. 2021)に基づく分布の2通りを検討し、生成された地震波形データ集合の特徴の違いを調べた結果について報告する。今後、詳細な建物被害関数の作成という目的に見合った入力地震動群がどのようなばらつきを有するべきかについて検討を進める。