17:15 〜 18:45
[SSS10-P13] 隣接地点間の地震観測記録を用いた表層地盤の不均質パラメータの推定
キーワード:表層地盤、不均質性、空間変動、相関距離
表層地盤の不均質性は地表の隣接地点間の地震動に空間変動をもたらし、建物の地震応答に影響を与えることが指摘されており、表層地盤の不均質性を定量的に把握することが重要と考えられる。本検討では東京大学生産技術研究所の千葉アレイ観測施設の観測記録から、表層地盤におけるS波の不均質パラメータを推定する。
Table1に千葉アレイ観測点における表層地盤のS波速度構造および変動係数を示す。ここで変動係数は、片山他(1990)に示されているN値を太田他(1975)によりS波速度に変換したときのばらつきから推定した。不均質パラメータの推定のために使用する地震観測記録は、地震規模(MJ)5.0以上、震源深さ80km以上、見かけの入射角40°以内、最大加速度100cm/s2以内の地震から抽出した。
Ritter et al.(1998)に基づき、隣接する2点間における観測記録の時刻歴波形の平均をコヒーレント成分u、もとの時刻歴波形との差をばらつき成分ufとし、ufとuのパワースペクトルの比の平均を地震動の空間変動v2と定義した。アレイ観測点の離間距離ごとにln(v2+1)を描いた結果をFig.1に実線で示す。周波数が高くなるほどln(v2+1)が大きくなる。また2観測点間の離間距離が小さいほど、ln(v2+1)が小さくなる傾向が見られる。徳光他(2022)は、表層地盤の非等方的な不均質パターンをガウス型と仮定し、Ritter et al.(1998)を参考に表層地盤の不均質性と隣接地点間の地震動の空間変動との関係を示した。本検討では、徳光他(2022)により評価したln(v2+1)とFig.1に示すln(v2+1)との残差の2乗和が最小となるように、水平方向および鉛直方向におけるS波速度の相関距離a1、a3を決定した。Table1にa1、a3の推定結果を示す。a1、a3はいずれの層においてもa1の方が大きく評価されている。この傾向は、水平方向よりも鉛直方向の相関距離の方が大きいという既往の研究における指摘とも対応している。
a1、a3の推定結果を反映した3次元FEM不均質地盤モデルにより、数値シミュレーションを実施した。Fig2に地盤モデルおよび不均質パターンのイメージを示す。地盤モデルの底面よりインパルス状の平面波を入射し、地表中央部の100mの線上において1m間隔で抽出した応答波により隣接地点間のln(v2+1)を計算した。本検討では初期の乱数が異なる5種類の不均質地盤モデルにてシミュレーションを実施した。数値シミュレーションに基づくln(v2+1)の結果をFig.1に点線で示す。観測記録より評価したln(v2+1)(実線)に比べてやや小さいが、観測記録と同様に、離間距離が大きくなるほどln(v2+1)も大きくなる傾向が確認できる。
謝辞
震災予防協会(当時)より公開された千葉アレイ観測施設の観測記録を使用いたしました。一部の作図にGMTを使用いたしました。
Table1に千葉アレイ観測点における表層地盤のS波速度構造および変動係数を示す。ここで変動係数は、片山他(1990)に示されているN値を太田他(1975)によりS波速度に変換したときのばらつきから推定した。不均質パラメータの推定のために使用する地震観測記録は、地震規模(MJ)5.0以上、震源深さ80km以上、見かけの入射角40°以内、最大加速度100cm/s2以内の地震から抽出した。
Ritter et al.(1998)に基づき、隣接する2点間における観測記録の時刻歴波形の平均をコヒーレント成分u、もとの時刻歴波形との差をばらつき成分ufとし、ufとuのパワースペクトルの比の平均を地震動の空間変動v2と定義した。アレイ観測点の離間距離ごとにln(v2+1)を描いた結果をFig.1に実線で示す。周波数が高くなるほどln(v2+1)が大きくなる。また2観測点間の離間距離が小さいほど、ln(v2+1)が小さくなる傾向が見られる。徳光他(2022)は、表層地盤の非等方的な不均質パターンをガウス型と仮定し、Ritter et al.(1998)を参考に表層地盤の不均質性と隣接地点間の地震動の空間変動との関係を示した。本検討では、徳光他(2022)により評価したln(v2+1)とFig.1に示すln(v2+1)との残差の2乗和が最小となるように、水平方向および鉛直方向におけるS波速度の相関距離a1、a3を決定した。Table1にa1、a3の推定結果を示す。a1、a3はいずれの層においてもa1の方が大きく評価されている。この傾向は、水平方向よりも鉛直方向の相関距離の方が大きいという既往の研究における指摘とも対応している。
a1、a3の推定結果を反映した3次元FEM不均質地盤モデルにより、数値シミュレーションを実施した。Fig2に地盤モデルおよび不均質パターンのイメージを示す。地盤モデルの底面よりインパルス状の平面波を入射し、地表中央部の100mの線上において1m間隔で抽出した応答波により隣接地点間のln(v2+1)を計算した。本検討では初期の乱数が異なる5種類の不均質地盤モデルにてシミュレーションを実施した。数値シミュレーションに基づくln(v2+1)の結果をFig.1に点線で示す。観測記録より評価したln(v2+1)(実線)に比べてやや小さいが、観測記録と同様に、離間距離が大きくなるほどln(v2+1)も大きくなる傾向が確認できる。
謝辞
震災予防協会(当時)より公開された千葉アレイ観測施設の観測記録を使用いたしました。一部の作図にGMTを使用いたしました。