日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT35] 合成開口レーダーとその応用

2024年5月30日(木) 10:45 〜 12:00 202 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:阿部 隆博(三重大学大学院生物資源学研究科)、木下 陽平(筑波大学)、姫松 裕志(国土地理院)、朴 慧美(上智大学地球環境学研究科)、座長:阿部 隆博(三重大学大学院生物資源学研究科)、姫松 裕志(東京大学地震研究所)

11:45 〜 12:00

[STT35-05] InSAR解析を用いた2014年御嶽山噴火後の山体収縮過程の時空間変化

*坂本 侑太1伊藤 武男2 (1.名古屋大学 環境学研究科、2.名古屋大学大学院環境学研究科附属 地震火山研究センター)

キーワード:InSAR、ALOS-2、御嶽山、山体収縮、GBIS

御嶽山で2014年9月27日に発生した水蒸気噴火は, 戦後最大の火山災害を引き起こした. この水蒸気噴火に伴い, 御嶽山は山体収縮に伴う地殻変動を引き起こした. 噴火後, 気象庁のGNSS観測基線 (落合唐谷-田の原基線)は年間7.5 mmで短縮していたが, 2020年以降は年間2.5 mmへと減少した. この原因はまだ明らかになっていない. 2014年水蒸気噴火による山体内部の圧力状態を解明するために, Narita and Murakami (2018)は2014から2017年までのInSARデータを用いて, 火口周辺の局所的な沈降と, 地下500 mの熱水貯溜層に相当する球状に近い圧力源を同定した. しかし, これは噴火後10ヶ月間の短期データに基づいており, 2020年以降の地表変動はまだ研究されていない. また, Narita et al. (2019)は2014から2017年までの噴煙画像を用いて, 噴出量と球状圧力源の収縮量との質量収支について考察し, その結果, 噴煙の70 %は深部の圧力源から供給されていることを推定した. しかし, その詳細は明らかになっていない. そこで本研究は, 2014年水蒸気噴火以降の山体収縮の時空間変化を長期データに基づいて解析し, 山体内部の圧力状態を推定することで山体収縮の全体像を明らかにすることを目的としている.

本研究は, 2014から2023年までのALOS-2のSAR画像 (Path 19, 20, 121, 126)を使用して干渉解析を実施し, LOS方向の地表面変動の時系列データを得た. また, 南行軌道 (19, 20)と北行軌道 (126)のデータを用いて2.5次元解析 (Fujiwara et al., 2000)を実施し, 準東西・準上下方向の地表面変動の時系列データを得た. 解析には, RINC (Ozawa et al., 2016)とrinc_gui (奥山, 2018)を使用し,GEONETの高根 (950281)のF5解を変動の基準点として設定した. 地表面変動の時系列データから圧力源のモデルパラメータをGBIS (Bagrardi and Hooper, 2018)を用いて推定した.

結果として, 全てのPathのLOS方向の地表変動時系列は概ね一致し, 山頂の南西部において局所的な沈降が観測された. この地殻変動時系列は,気象庁のGNSSの落合唐谷-田の原基線の短縮量より1桁大きな変動量ではあるが, 変動パターンが一致した. また, 準東西・準上下方向の時系列を山頂付近のキャンペーンGNSS観測データ (2016から2022年まで)と比較したところ, 概ね整合的であった. これらの観測データを用いて, 複数のモデルを適用して検討して, モデルパラメータを推定した結果, 細長いラグビーボール型の楕円体圧力源 (Yang et al., 1988)が最適なモデルとなった. この解析結果の解釈としては, 火道に相当するような楕円体圧力源は熱水の通り道を反映しており, 2014年水蒸気噴火の影響で熱水の通り道の一部が決壊してNarita and Murakami (2018)が推定した球状圧力源に接続されたと考えた. 結論として, 2014年噴火以降の山体収縮過程としては, 噴火後の活発な水蒸気噴火直後には球状圧力源が収縮し, その後静穏化した時期には楕円体圧力源が収縮していると考えた.

謝辞:本研究で用いたALOS-2データはPIXELで共有しており, JAXAとの共同研究契約に基づき提供されたものであり, その所有権はJAXAにある. また, 本研究は東大地震研共同利用 (2021-B-03)の援助を受けた. 処理の過程や結果の描画においては, 国土地理院の数値地図10 mメッシュ (標高)と全球ジオイドモデルEGM96 (Lemoine et al., 1997)を元にしたDEHMを使用した.