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[STT35-P08] Sentinel-1衛星の後方散乱強度を用いたアラスカ北部ツンドラ湖の結氷状態の検出
キーワード:ツンドラ湖、合成開口レーダ、湖氷、反転現象
アラスカ北部のノーススロープ地域はツンドラ地帯で、その陸地面積の40%ほどが浅い湖で構成されている。これらの湖は「ツンドラ湖」と呼ばれ、9月末に凍結し始めて、次の年の5月まで成長を続け、その厚さは約2メートル以上に達する。すなわち湖は1年の内8~9ヶ月間は氷で覆われることになる。ツンドラ湖の氷の生長と消滅は極域の環境変化や、メタンなどの温室効果ガスの放出を見る上で重要であり、湖の結氷状態の広域的な把握が望まれる。リモートセンシングでツンドラ湖の凍結・融解をモニタリングした先行研究では,合成開口レーダの後方散乱強度を用いて検討を行っており、氷の生長に伴って散乱強度が上昇することや,氷の下に水が存在するかしないのかで後方散乱係数が増減する事などが明らかとなっている.しかし、ツンドラ湖の氷の厚さに関する知見は少なく,結氷と後方散乱強度変化の関係を季節進行から明らかにする必要がある.そこで,本研究ではSentinel-1合成開口レーダの散乱強度画像を用いて,1年間でツンドラ湖の氷がどのように凍結、融解をしているのかを見ると同時に、氷厚との関係の考察を試みた。対象地域はアラスカ北部のテシェクプク湖(Teshekpuk Lake)とその付近とした。解析にはENVIのSARSCapeを用い、2023年の毎月の後方散乱強度画像(dB値)から,年間でどのように氷が成長,融解しているのかを検討した。季節を通して見られた後方散乱強度の特性として、9月頃から氷の凍結が始まり、春は5月まで結氷状態は継続してると判断された。凍結と融解の変化の中で、湖の散乱強度の季節変化傾向が反転する現象が確認された。その反転現象は、融解が進む7月と,凍結が始まる10月に現れていた。7月の反転現象(低下からいったん上昇する)は, 氷と水(または融けている雪)が混じった状態の表面で散乱が大きくなることが原因と考えられた。一方で、10月の後方散乱強度の反転現象(上昇からいったん低下する)は、氷が成長しはじめ,薄い結氷状態で後方散乱が返ってきにくいことが原因として考えられた。後方散乱強度画像と現地の水深データとの比較から、強度の空間分布は水深に対応し、湖の浅い地域(水深3m以下)で強度値が高く、深い(5m以上)地域で低くなることが判明した。