17:15 〜 18:45
[STT37-P06] 多数のテンプレート地震を用いた震源決定法(hypoTD)による気象庁一元化震源の相対震源決定
キーワード:hypoTD、hypoDD、相対震源決定
1. はじめに 地下構造には、大きな不均質性が存在し、不均質性が震源決定の大きな誤差要因になっている。Waldhauser & Ellsworth (2000)によるhypoDDは、解析する全領域で発生する地震の到着時刻の差をデータとして、インバージョンで、全ての地震の震源を決定する方法である。この方法は、不均質性の影響を取り除くことができるすぐれた震源決定法であり、多くの研究者により利用されている。しかし、この方法は、1)広域で発生する地震には適用できない、2)地震は、毎日発生するが、新しく発生した地震を追加することが難しい、3)計算される震源位置は、ダンピング定数の与え方で変わる、等の課題があることが知られている。本報告では、多数のテンプレート地震を用いた相対震源決定法を提案し、気象庁一元化震源の到着時刻データを用いて、相対震源決定を行ったので報告する。
2.方法 堀内・他(2022)は、多数の相対震源決定を行うことにより、自動読み取りデータの修正機能を備えた自動震源決定システムを開発した。詳しくは、https://www.homeseismo.com/html/sotaijido.html に示されている。このシステムには、個々の地震を相対的に決定する機能が含まれている。ここでは、このシステムを変更し、気象庁一元化震源の相対震源決定に適用できるようにした。この方法は、先ず、解析領域で過去に発生した大き目の地震の、震源パラメータと、P波、S波到着時刻データを登録する。以下では、この大き目の地震をテンプレート地震と呼ぶ。個々の地震の震源決定では、その地震の震源近傍で発生しているテンプレート地震をN個選び、N組の相対震源決定の走時残差の二乗平均誤差が最小となるように解を求める。ここでは、N=50とした。以下では、この震源決定法をhypoTDと呼ぶことにする。イタレーションは、hypoTDにより計算された震源を、テンプレート地震の震源として与え、再度震源決定することにより行った。従来のテンプレート地震を用いた震源決定法では、1個のテンプレート地震を用いて、複数の震源を決定しているが、本方法では、複数のテンプレート地震を用いて、一個の地震の震源を決定しており、かつ、イタレーションを行っている点が、従来方法との違いである。
3.結果 防災科学技術研究所は、気象庁一元化震源の、震源パラメータと到着時刻データを2-3日遅れで公開している。本報告では、このデータを使わして頂いて、hypoTDによる相対震源決定を行った。イタレーションは一回である。解析期間は、2019年1月から、2024年までの約5年間である。テンプレート地震として登録した地震は、日本列島、及び、その周辺で発生している地震で、P波、S波到着時刻データがそれぞれ、20点、10点以上で震源決定された地震、27万個である。震源再決定された地震数は127万個である。
図1に、hypoTDによる東京湾の地震の震源分布と、一元化震源のそれとの比較を示す。震源分布の比較から明らかなように、hypoTDによる震源は集中しており、高精度の震源分布が得られているように見える。千葉県沖、神奈川県西部・山梨県東部、その他の領域で、同様に一元化震源と比較したところ、hypoTDを用いることにより、高精度の震源分布が得られることが示された。また、能登半島地震の震源域の北東端では、主断層とは直行する、南東下がりの断層面に沿って、余震が発生していることが示された。127万個の地震の相対震源決定の走時残差のRMSの平均値は、0.11秒であった。この値は、通常の震源決定のそれに比べ遥かに小さく、hypoTDにより、地下構造の不均質性の影響が取り除かれることを示している。
4.結論 多数のテンプレート地震を用いた相対震源決定法であるhypoTDを提案した。hypoDDは上述の課題があるが、hypoTDはこの課題が解決されており、かつ、hypoDDと同様に、地下構造の不均質性の影響を取り除くことができる方法であると結論される。従来のテンプレート地震を用いた震源決定法では、テンプレート地震一個を用いて、複数の震源を決定している。このため、個々の地震の震源は、テンプレート地震の震源決定誤差が上乗せされることになる。一方、hypoTDでは、多数のテンプレート地震を用いるため、テンプレート地震に含まれている震源決定誤差が平均化され、不均質性の影響が除去されると思われる。気象庁一元化震源の読み取りデータが2-3日遅れで公開されていることから、このデータを用いることにより、迅速で、高精度の地震活動のモニターが行えると期待される。
2.方法 堀内・他(2022)は、多数の相対震源決定を行うことにより、自動読み取りデータの修正機能を備えた自動震源決定システムを開発した。詳しくは、https://www.homeseismo.com/html/sotaijido.html に示されている。このシステムには、個々の地震を相対的に決定する機能が含まれている。ここでは、このシステムを変更し、気象庁一元化震源の相対震源決定に適用できるようにした。この方法は、先ず、解析領域で過去に発生した大き目の地震の、震源パラメータと、P波、S波到着時刻データを登録する。以下では、この大き目の地震をテンプレート地震と呼ぶ。個々の地震の震源決定では、その地震の震源近傍で発生しているテンプレート地震をN個選び、N組の相対震源決定の走時残差の二乗平均誤差が最小となるように解を求める。ここでは、N=50とした。以下では、この震源決定法をhypoTDと呼ぶことにする。イタレーションは、hypoTDにより計算された震源を、テンプレート地震の震源として与え、再度震源決定することにより行った。従来のテンプレート地震を用いた震源決定法では、1個のテンプレート地震を用いて、複数の震源を決定しているが、本方法では、複数のテンプレート地震を用いて、一個の地震の震源を決定しており、かつ、イタレーションを行っている点が、従来方法との違いである。
3.結果 防災科学技術研究所は、気象庁一元化震源の、震源パラメータと到着時刻データを2-3日遅れで公開している。本報告では、このデータを使わして頂いて、hypoTDによる相対震源決定を行った。イタレーションは一回である。解析期間は、2019年1月から、2024年までの約5年間である。テンプレート地震として登録した地震は、日本列島、及び、その周辺で発生している地震で、P波、S波到着時刻データがそれぞれ、20点、10点以上で震源決定された地震、27万個である。震源再決定された地震数は127万個である。
図1に、hypoTDによる東京湾の地震の震源分布と、一元化震源のそれとの比較を示す。震源分布の比較から明らかなように、hypoTDによる震源は集中しており、高精度の震源分布が得られているように見える。千葉県沖、神奈川県西部・山梨県東部、その他の領域で、同様に一元化震源と比較したところ、hypoTDを用いることにより、高精度の震源分布が得られることが示された。また、能登半島地震の震源域の北東端では、主断層とは直行する、南東下がりの断層面に沿って、余震が発生していることが示された。127万個の地震の相対震源決定の走時残差のRMSの平均値は、0.11秒であった。この値は、通常の震源決定のそれに比べ遥かに小さく、hypoTDにより、地下構造の不均質性の影響が取り除かれることを示している。
4.結論 多数のテンプレート地震を用いた相対震源決定法であるhypoTDを提案した。hypoDDは上述の課題があるが、hypoTDはこの課題が解決されており、かつ、hypoDDと同様に、地下構造の不均質性の影響を取り除くことができる方法であると結論される。従来のテンプレート地震を用いた震源決定法では、テンプレート地震一個を用いて、複数の震源を決定している。このため、個々の地震の震源は、テンプレート地震の震源決定誤差が上乗せされることになる。一方、hypoTDでは、多数のテンプレート地震を用いるため、テンプレート地震に含まれている震源決定誤差が平均化され、不均質性の影響が除去されると思われる。気象庁一元化震源の読み取りデータが2-3日遅れで公開されていることから、このデータを用いることにより、迅速で、高精度の地震活動のモニターが行えると期待される。