日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT38] 最先端ベイズ統計学が拓く地震ビッグデータ解析

2024年5月27日(月) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:長尾 大道(東京大学地震研究所)、加藤 愛太郎(東京大学地震研究所)、矢野 恵佑(統計数理研究所)、椎名 高裕(産業技術総合研究所)

17:15 〜 18:45

[STT38-P01] 少量データに適用可能な地震波検出モデルの転移学習:マルチプル・クラスタリングを用いた二段階アプローチ

*徳田 智磯1長尾 大道1,2 (1.東京大学地震研究所、2.東京大学大学院情報理工学系研究科)

キーワード:地震波検出、深層学習、転移学習

近年、地震検出のために深層学習モデルが使われるようになってきた。多量の地震波形データを用いて深層学習モデルを学習することにより、効果的に地震波形の特徴を捉え、これまでよりも精度よく地震を検出することが可能になった。しかし、研究、あるいは実用上の対象となる地域でそのような多量の地震波形データが利用可能であるとは限らない。この問題の対処策として、他地域のデータを使って学習させたモデルを対象地域に適用させる転移学習の枠組みが有効である。転移学習の代表的な手法はアップデートするパラメータ数を少なくした上でモデルを再学習する方法である。しかし、この方法では依然として少なからず多くの学習データが必要となり、数十から数百程度の学習データしか利用できない場合、その適用は困難である。本研究ではこのように少量のデータしか利用でない場合の転送学習を二段階アプローチで効果的におこなう手法を提案する。第一段階では、他地域のデータを用いて学習済みのモデルを対象地域の波形データに適用する。第二段階では、陽性(例えばp波)と判定された波形について、さらなる判別器を用いて真陽性・偽陽性を判定する。この二段階アプローチの着眼点は、学習済みの深層学習モデルで陽性と判定された波形について、少量のデータで学習可能な非深層学習モデルを用いて判定結果の精緻化をおこなう点である。本研究の主要な貢献は第二段階の判別器に対して、安定性の高い、新しい手法を導入したことである。提案手法はマルチプル・クラスタリング手法を用いてデータ駆動的に波形データの特徴量を抽出することにより、波形データの次元を削減し、効果的に判別することが可能になった。実データを用いた適用例では、通常の教師あり学習手法と比較して、異なるデータセットに対してより安定的に地震検出ができることが示された。特に、地震波形データが極めて限られている場合、提案手法は他の地域で得られた地震波形データを有効に活用し、効果的に地震を検出できることがわかった。