17:15 〜 18:45
[STT38-P05] 最適輸送理論に基づく地震波形データからのイベント検出とその分類
キーワード:最適輸送、低周波微動、k近傍法、イベント分類、エントロピー正則化付き最適輸送問題、スライスワッサースタイン距離
Obara (2002)によって発見された低周波微動は通常のプレート境界型地震より浅いまたは深いプレート境界面上で起こる振動現象である.その微動の顕著な性質として,低周波かつ小さな揺れが数秒から数時間という長さで続くという点が挙げられる.低周波微動はプレート境界型地震と関連していることが期待されており(Obara and Kato 2016),それを解析することは地震学において極めて重要である.しかし,低周波微動の波形はノイズと区別することが難しく,コンセンサスを得た検出アルゴリズムが確立されているとは言えない.
本研究では,最適輸送理論に基づく距離指標を用いて,与えられた地震波形データから地 震イベントの検出を行うことを試みた. イベント検出のための二つの波形間の距離指標は以下の2つの手続きによって計算される.(1)各時刻における波形の振幅の差の二乗と時刻のインデックスの差の二乗の重みつき和をとることでコスト行列を定義する.(2)そのコスト行列をもとにした最適輸送問題の最適値・最適解を計算する.具体的な距離指標として、我々はTime-Adaptive Optimal Transport (TAOT) (Zhang et al., 2020)を採用した.これによって得られた距離指標を用いて,k-nearest neighbor法(k-NN) (Cover and Hart 1967)による地震波形データに含まれるイベント(地震/微動/ノイズ)の分類を行う.k-NN法は事前にラベルのわかっている辞書データを用いる手法であり,ラベルを予測したいテストデータに対して類似度の高い上位k個の辞書データを同定し,その中で最も多いラベルをテストデータのラベルとして予測する手法である.さらに TAOT を高速化させるためのアルゴリズムとして,Sliced-TAOT を提案する. このアルゴリズムは最適輸送距離を高速に計算可能なsliced-Wasserstein距離の概念をTAOTに応用したものである.
TAOT/sliced-TAOT の時系列データ間の距離指標としての性質について,人工データを用いた数値実験及び東北地方のHi-netデータを用いて検証を行ったところ,ノイズ頑健性やシフト頑健性などの性質が保証されることを確認した.さらに,実データへの検証によって,TAOT/Sliced-TAOT に基づくk-NNによる低周波微動の検出アルゴリズムの性能解析を行った.実験結果から,提案した距離指標及び分類アルゴリズムが低周波微動の検出に有用であることが示唆された.
本研究では,最適輸送理論に基づく距離指標を用いて,与えられた地震波形データから地 震イベントの検出を行うことを試みた. イベント検出のための二つの波形間の距離指標は以下の2つの手続きによって計算される.(1)各時刻における波形の振幅の差の二乗と時刻のインデックスの差の二乗の重みつき和をとることでコスト行列を定義する.(2)そのコスト行列をもとにした最適輸送問題の最適値・最適解を計算する.具体的な距離指標として、我々はTime-Adaptive Optimal Transport (TAOT) (Zhang et al., 2020)を採用した.これによって得られた距離指標を用いて,k-nearest neighbor法(k-NN) (Cover and Hart 1967)による地震波形データに含まれるイベント(地震/微動/ノイズ)の分類を行う.k-NN法は事前にラベルのわかっている辞書データを用いる手法であり,ラベルを予測したいテストデータに対して類似度の高い上位k個の辞書データを同定し,その中で最も多いラベルをテストデータのラベルとして予測する手法である.さらに TAOT を高速化させるためのアルゴリズムとして,Sliced-TAOT を提案する. このアルゴリズムは最適輸送距離を高速に計算可能なsliced-Wasserstein距離の概念をTAOTに応用したものである.
TAOT/sliced-TAOT の時系列データ間の距離指標としての性質について,人工データを用いた数値実験及び東北地方のHi-netデータを用いて検証を行ったところ,ノイズ頑健性やシフト頑健性などの性質が保証されることを確認した.さらに,実データへの検証によって,TAOT/Sliced-TAOT に基づくk-NNによる低周波微動の検出アルゴリズムの性能解析を行った.実験結果から,提案した距離指標及び分類アルゴリズムが低周波微動の検出に有用であることが示唆された.