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[SVC26-01] 新燃岳で発生したブルカノ式噴火における火山灰放出源の深度の推定と噴火発生場の考察
キーワード:ブルカノ式噴火、火山灰放出源の深度、噴火に伴う傾斜変動、火口直下の噴火発生場のイメージ
霧島火山の新燃岳では, 2008年8月に16年ぶりに噴火した後,2010年に6回の小噴火,2011年に準プリニー式噴火を含む激しい噴火活動があった.以後6年間の休止を経て2017年10月に噴火活動を再開し,2018年3月〜6月に噴火活動があって現在に至る.及川・田島(2019a,2019b,2020)は,2011年と2018年に霧島山新燃岳で発生したブルカノ式噴火を調べ,火山灰噴出量は噴火微動継続時間の2乗に比例することを明らかにし,また,火口直下に存在する噴火流体溜りから長さ一定の火道を乱流で火山性流体が流れて噴出するモデルを考察して,流体の噴出量が噴火継続時間の2乗に比例することを示した.本研究は,モデルの重要なパラメータである火道の長さ,すなわち噴火流体溜まりの深度を推定し,噴火発生場を考察する.
火山灰放出源を火口直下の深さHに仮定し,噴火による体積変動量をΔVとすると,火口から水平距離rにおけるr方向の傾斜変動uzrは,茂木モデルを仮定し,定数λ,μを簡単のためλ=μとするとuzr=-(9HrΔV)/(4π(r2+H2)5/2)と表される.
本研究では,及川・田島(2019a,2019b,2020)で研究に用いられた火山灰噴出量が推定されている噴火イベントのうち,噴火に伴う傾斜変動が明瞭に観測された噴火を対象にする.整理のために対象噴火の発生順に番号をつけ,噴火の日時,および,新燃岳火口から3.2kmの地点にある気象庁の高千穂河原観測点で噴火に伴って観測された傾斜変動量を以下に示す.
1.2011年3月13日噴火 13x10-8 rad
2.2011年4月3日噴火 11x10-8 rad
3.2011年4月9日噴火 4.9x10-8 rad
4.2011年4月18日噴火 12x10-8 rad
5.2018年4月5日噴火 8.3x10-8 rad
6.2018年5月11日噴火 7.5x10-8 rad
噴火に伴う傾斜変動の様子の例として1および6に対応する傾斜変動の記録をそれぞれFig.1aおよびFig.1bに示す.図の縦軸は 傾斜を表し単位はμrad,横軸は日本時間を表す.青線は 南北方向,赤線は東西方向の傾斜を示し,軸の+方向がそれぞれ北方向上りと西方向上りを表す.各噴火に伴う傾斜変動量と,田島・他(2019)および西来邦章・他(2013)で公表された対応する火山灰噴出量をΔVとして圧力変動源の深さを求めた結果をFig.2に示す.横軸はイベント番号,縦軸は深さを表す.値のばらつきはあるものの,噴火流体溜りは火口直下極浅部に存在し,一点観測のデータを用いた解析の限界や誤差の影響を考えると,深度は200m〜400m程度の一定値と解釈することができる.
及川・田島(2020)によれば,火山灰噴出量Mと噴火継続時間TにはM=CT2の関係があり,定数Cは,火道半径a,火道壁の凸凹のスケールd,噴火流体溜りの半径Rと体積弾性率K,周囲の岩石の剛性率μ,火道の長さH,乱流実験で決まる値b=0.417を用いて表されるが,新燃岳の場合はC=1と推定されており,また,パラメータを適当におくと(例えば,a/d〜10,μ〜K〜1010Pa,ρ〜1000kg/m3),a,R,Hはa5/(HR3)〜1.4x10-7の関係を満たすことが示される. Hとして今回求められた深度より300m程度とすると,a5/(R3)〜4.2x10-5が得られる.これより,火道半径aが1〜3mのとき,噴火流体溜りの半径Rは30m〜200mとなる.以上から,噴火発生場として,火口直下300m程度の深度に噴火物質を溜めやすい半径100m程度の領域が存在し,爆発的噴火が起こる場合は半径数mの火道を通って火山灰が放出される,というイメージを持つことができる.
新燃岳では2011年1月から始まった準プリニー式噴火を含む噴火活動において溶岩が旧火口を埋めているが,本研究で示された噴火流体溜りは旧火口底もしくはそのすぐ下にあることを意味する.したがって,本研究で対象にした爆発的噴火は,溶岩流に火口を埋められたことによって旧火口底の噴火口直下に噴火物質を溜めやすい領域が構築され,その後の爆発的噴火を繰り返し起こしたと考えられる.
謝辞:本研究では気象庁の傾斜データを使わせていただいた.また,名古屋大学前田講師には新燃岳における爆発的噴火に伴う傾斜変動の情報をいただいた.ここに感謝申し上げる.
火山灰放出源を火口直下の深さHに仮定し,噴火による体積変動量をΔVとすると,火口から水平距離rにおけるr方向の傾斜変動uzrは,茂木モデルを仮定し,定数λ,μを簡単のためλ=μとするとuzr=-(9HrΔV)/(4π(r2+H2)5/2)と表される.
本研究では,及川・田島(2019a,2019b,2020)で研究に用いられた火山灰噴出量が推定されている噴火イベントのうち,噴火に伴う傾斜変動が明瞭に観測された噴火を対象にする.整理のために対象噴火の発生順に番号をつけ,噴火の日時,および,新燃岳火口から3.2kmの地点にある気象庁の高千穂河原観測点で噴火に伴って観測された傾斜変動量を以下に示す.
1.2011年3月13日噴火 13x10-8 rad
2.2011年4月3日噴火 11x10-8 rad
3.2011年4月9日噴火 4.9x10-8 rad
4.2011年4月18日噴火 12x10-8 rad
5.2018年4月5日噴火 8.3x10-8 rad
6.2018年5月11日噴火 7.5x10-8 rad
噴火に伴う傾斜変動の様子の例として1および6に対応する傾斜変動の記録をそれぞれFig.1aおよびFig.1bに示す.図の縦軸は 傾斜を表し単位はμrad,横軸は日本時間を表す.青線は 南北方向,赤線は東西方向の傾斜を示し,軸の+方向がそれぞれ北方向上りと西方向上りを表す.各噴火に伴う傾斜変動量と,田島・他(2019)および西来邦章・他(2013)で公表された対応する火山灰噴出量をΔVとして圧力変動源の深さを求めた結果をFig.2に示す.横軸はイベント番号,縦軸は深さを表す.値のばらつきはあるものの,噴火流体溜りは火口直下極浅部に存在し,一点観測のデータを用いた解析の限界や誤差の影響を考えると,深度は200m〜400m程度の一定値と解釈することができる.
及川・田島(2020)によれば,火山灰噴出量Mと噴火継続時間TにはM=CT2の関係があり,定数Cは,火道半径a,火道壁の凸凹のスケールd,噴火流体溜りの半径Rと体積弾性率K,周囲の岩石の剛性率μ,火道の長さH,乱流実験で決まる値b=0.417を用いて表されるが,新燃岳の場合はC=1と推定されており,また,パラメータを適当におくと(例えば,a/d〜10,μ〜K〜1010Pa,ρ〜1000kg/m3),a,R,Hはa5/(HR3)〜1.4x10-7の関係を満たすことが示される. Hとして今回求められた深度より300m程度とすると,a5/(R3)〜4.2x10-5が得られる.これより,火道半径aが1〜3mのとき,噴火流体溜りの半径Rは30m〜200mとなる.以上から,噴火発生場として,火口直下300m程度の深度に噴火物質を溜めやすい半径100m程度の領域が存在し,爆発的噴火が起こる場合は半径数mの火道を通って火山灰が放出される,というイメージを持つことができる.
新燃岳では2011年1月から始まった準プリニー式噴火を含む噴火活動において溶岩が旧火口を埋めているが,本研究で示された噴火流体溜りは旧火口底もしくはそのすぐ下にあることを意味する.したがって,本研究で対象にした爆発的噴火は,溶岩流に火口を埋められたことによって旧火口底の噴火口直下に噴火物質を溜めやすい領域が構築され,その後の爆発的噴火を繰り返し起こしたと考えられる.
謝辞:本研究では気象庁の傾斜データを使わせていただいた.また,名古屋大学前田講師には新燃岳における爆発的噴火に伴う傾斜変動の情報をいただいた.ここに感謝申し上げる.