[S-VC26] 活動的⽕⼭

[SVC26-02] 霧島硫黄山南火口における地震・空振活動と表面現象

*村松 弾¹、市原 美恵¹、行竹 洋平¹、松島 健²、田島 靖久³、西村 太志⁴、長妻 努⁵、村田 健史⁵ (1.東京大学地震研究所、2.九州大学大学院理学研究院附属 地震火山観測研究センター、3.日本工営(株) 中央研究所、4.東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻、5.国立研究開発法人 情報通信研究機構)

キーワード：霧島硫黄山、地震、空振

霧島硫黄山の南火口では2018年の水蒸気噴火以降も活発な熱水・噴気活動が続いており，現在Y2a，Y2b，Y3の主に３つの噴出孔が活動している．特にY2aとY2bでは2022年以降，噴出孔の拡大や小規模な噴出イベントを繰り返し発生させている．南火口における表面現象の変化と地震・空振活動の関係を調べるため，空振（音波）・地震・映像観測とその解析を行った．空振と地震は硫黄山火口周辺に３点展開している臨時観測点，映像は情報通信研究機構が運用している監視カメラのデータを使用した．解析は主に①地震・空振スペクトルおよびRMS振幅の時系列解析，②火山性地震（VT）の震源分布・発生数との比較を行った．①では空振に対する地盤の応答関数を推定し（Ichihara et al., 2021, EPS），地震微動に含まれる空振由来のパワーを評価した．②についてはYukutake et al. (2023, EPS)の手法により作成された霧島火山の震源カタログを参照した．時系列解析の結果，2022年11月と2023年3月の噴出イベントでは地震微動振幅の有意な増大が見られた．このときの地震パワーは3–20 Hzの広い帯域で増大し，特に5–10 Hz付近が卓越していた．また，噴出に先行して硫黄山直下の深さ500–1500 m付近のクラスターにおいてVT地震の増加が見られた．一方，2023年10月の噴出イベントでは微動振幅は既に高止まりの状態で有意な増大は見られず，またVT地震発生数が減少した後に発生していた．南火口近傍での地震アレイ解析により，地震微動は深さ100 m付近の極浅部熱水系に由来することが示唆されている（畑他, 火山学会2023）．また，硫黄山の比抵抗構造（Tsukamoto et al., 2018, GRL）と比較すると，VT地震のクラスターは粘土層（キャップロック）直下の球状圧力源（熱水だまり）の周辺に位置しており，クラスターの活発化は熱水だまりへの流体供給増加を示唆する．発表では噴出イベント間に見られた差異と極浅部熱水系，VT地震活動との関係について議論する．