日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC26] 活動的⽕⼭

2024年5月28日(火) 10:45 〜 12:15 国際会議室 (IC) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、三輪 学央(防災科学技術研究所)、松島 健(九州大学大学院理学研究院附属地震火山観測研究センター)、座長:為栗 健(京都大学防災研究所附属火山活動研究センター)、川口 亮平(気象研究所)

11:00 〜 11:15

[SVC26-08] マグマ蓄積期における姶良カルデラの周辺地震活動の変化

*為栗 健1井口 正人1筒井 智樹1 (1.京都大学防災研究所附属火山活動研究センター)

キーワード:姶良カルデラ、火山構造性地震

姶良カルデラは九州南部の鹿児島湾奥に位置する東西20km,南北20kmの広がりをもった火山性陥没地形である.姶良カルデラの最後の噴火とされ,入戸火砕流を生じた噴火は約2.9万年前(奥野, 2002)に発生している.その後,カルデラ南縁に桜島火山が形成され,現在も活発な噴火活動を継続している.1992年以降,姶良カルデラ周辺の地盤の隆起・膨張が続いており,GNSS観測および水準測量から膨張源(マグマ溜り)は姶良カルデラ中心下の深さ約10 kmと見積もられている(例えば,Iguchi , 2013 ; Yamamoto et al., 2013).自然地震観測データに人工地震探査データを加えてトモグラフィー法による3次元地震波速度構造解析が行われ,マグマ溜まりと考えられる地震波速度異常領域が姶良カルデラ中央部の深さ12-22 kmに見出されている.Hidayati et al. (2006) では,姶良カルデラのマグマ蓄積期のうち1995年~2005年の地震データから膨張加速期に火山構造性地震が増加していることを示した.本発表ではマグマ蓄積期における姶良カルデラ周辺の地震活動と地震波速度構造および減衰構造との関連を明らかにする.
姶良カルデラ周辺の火山構造性地震の震源決定および震源メカニズムの推定には,南九州一帯において設置している臨時地震観測点(最大時17点)と既存観測点(桜島火山観測所,防災科学技術研究所Hi-netのJDXデータ流通網の観測点)のデータを含め,47点の地震データを使用した.
姶良カルデラ膨張期にカルデラ周辺で発生している火山構造性地震は主に,1.カルデラ内の若尊海底火山周辺の深さ6 km以浅,2.姶良カルデラ縁の東から南東付近の深さ5-10 km,3.姶良カルデラおよび桜島の南西部の深さ6-12 km,4.桜島山頂周辺直下の深さ4 km以浅の4カ所で発生している.震源メカニズムとしては1.は北東-南西方向にP軸を持つ横ずれ断層もしくは正断層型,2.は北東-南西方向にP軸を持つ横ずれ断層型,3.は正断層型が主である.カルデラ近傍の北東域にある福山観測点で震源決定には至らない微小地震まで含め地震発生状況を精査したところ,姶良カルデラを東西に挟むGNSS基線長で2015前半から2017年前半に見られた伸び(姶良カルデラの膨張加速)時に地震数が通常の1.5倍程度増えていた.また,2021年のやや東西基線の伸びが進行している際にはカルデラ外の北西域で有感地震が発生している.カルデラ内のS波低速度異常領域の上端は深さ12 km付近であり,カルデラ周辺で発生している火山構造性地震の震源の深さは12 km以深では発生しておらず,マグマ溜まりの上部にマグマ蓄積によるひずみが蓄積して火山構造性地震が発生していると考えられる.