[S-VC26] 活動的⽕⼭

[SVC26-P12] 精密水準測量とGNSSキャンペーン観測によって検出された箱根火山の地殻変動(2015-2023)

*村瀬 雅之¹、萬年 一剛²、松島 健³、及川 純⁴、内田 和也³、〆野 辰乃介³、生田 璃音³、額賀 悠成¹、細谷 和暉¹、宮下 雄次²、安部 祐希²、二宮 良太²、外山 浩太郎²、栗原 亮²、長岡 優² (1.日本大学文理学部地球科学科、2.神奈川県温泉地学研究所、3.九州大学大学院理学研究院、4.東京大学地震研究所)

キーワード：箱根火山、精密水準測量、GNSS、地殻変動

箱根火山では 2001 年以降、群発地震や地殻変動など、火山活動の活発化がたびたび認められてきたため、2015年、中央火口丘北部を横断する県道734～735 号に路線距離11km、水準点41点で構成される水準路線（二ノ平から桃源台に向かう本路線と、分岐して大涌谷へ向かう支線）を設置した。2015年6月に大涌谷で発生した小噴火後の2015年12月に第一回の測量を実施した後、 2016 年 9月、2017 年 12 月、2018年12月、2019年12月、2020年12月、2021年12月、2023年12月に測量を実施し、8年間の上下変動を検出した。また、2017年から水準測量と同時期にGNSSキャンペーン観測を路線沿いの4か所で実施した。キャンペーン観測の4点と、GEONET箱根観測点を加えた5点で、GEONET厚木を基準としてRTKLIB（高須・他，2007）を用いて解析を行い、水平変動を得た。
2021年12月―2023 年12月の直近の2年間では、二ノ平にある GEONET 箱根観測点を参照点として、大涌谷は12mm の沈降、大涌谷三叉路付近（中央火口丘北部）は3㎜のわずかな隆起を示した。2015年 12月－2021 年 12 月の8年間の累積変動量としては、大涌谷は76mm の沈降、大涌谷三叉路付近は15mmの隆起が検出された。
　参照点としたGEONET箱根観測点は、カルデラの中に位置し箱根火山の上下変動の影響を受ける可能性がある。そこで、厚木観測点を基準として上下変動を議論する。GENET箱根観測点は、2021年 12 月―2023 年 12 月の期間に、厚木観測点を基準として7mm の隆起を示している。GEONET 箱根観測点の上下変動を水準測量の結果に加え補正した場合、2020 年 12 月―2021 年 12 月は、大涌谷三叉路付近で10㎜の隆起となる。この期間中の2021年12月に芦ノ湖南部、2023年5月に駒ケ岳、10月に神山付近で一時的な地震活動の高まりがみられた。
2021年12月―2023年12月の2年間の水平変動は、GEONET厚木を基準として、大涌谷三叉路のHK05で東南東方向に8㎜であった。中央火口丘北部に位置する他の観測点の変動は5㎜以下の小さな変化であった。
〈謝辞〉本研究は、その研究経費の一部として令和5年度箱根ジオパーク学術研究助成を受け、実施されたものです。ここに記して感謝いたします。