17:15 〜 18:45
[SVC28-P02] 亀裂の卓越した花崗岩試料中の浸透率と電気インピーダンス同時測定
キーワード:比抵抗、浸透率、流動と電気伝導、亀裂ネットワーク、岩石物性測定
火山や地熱地域の比抵抗構造は地下深部の熱水分布や温度構造を理解する上で極めて重要な情報である。一般に、地熱開発ではこの比抵抗構造を基に、地熱資源が存在する領域を推定し資源開発を実施する。この時、掘削対象領域の浸透率を推定できれば、資源開発の効率が大幅に向上することが期待される。そこで、本研究では比抵抗から浸透率を推定する手法を開発するための岩石物理学モデルの構築を目指し、亀裂の卓越した花崗岩試料を用いて比抵抗と浸透率を同時に測定する実験を行った。
実験では25MPaの静水圧環境下(PC)に設置した熱性亀裂を持つ花崗岩試料に、一定流量(0.1mL/min)で塩水((0.1 M/L KCl水溶液)を注入し、電気インピーダンスと間隙流体圧、下流側の塩水流量(FR)の変化を測定した。下流側の間隙流体圧(PD)を0.5MPa、5MPa、10MPaの3段階で変化させて実験を行った。0.5MPaの圧力条件下では、塩水の注入に伴い上流側の間隙流体圧(PU)が急激に上昇し、その結果FRも大きな変化を示した。その後、PUとFRはほぼ一定となった。この圧力上昇の過程で、塩水は既存の亀裂ネットワークを利用して流路を形成していると考えられる。本研究では、PUの上昇過程を非定常状態、PUとFRの変化が見られなくなった状態を定常状態として浸透率を計算した。次に、PDを段階的に上昇させて一定流量(0.1mL/min)で塩水を注入し、非定常状態と定常状態のPUとFRを測定した。また電気インピーダンスも浸透率の計算を行うタイミングでそれぞれ計測した。その後、間隙流体圧(PUおよびPD)を8MPa、2MPa、1MPaと段階的に下げて電気インピーダンスの測定を行った。圧力低下の直後にFRの変化が見られなくなったため、減圧過程では塩水の流動は無いとして浸透率の評価は行わなかった。
本研究の結果、浸透率は定常状態と非定常状態に関わらず、有効封圧 (Peff: PC-(PU-PD)/2)と負の関係を示した。これは高いPUによる塩水の注入により岩石中の亀裂がネットワークを形成し、浸透性が向上することを示している。また、塩水流動が定常状態となった後は、形成された流路を利用し、新たなネットワーク形成が起こりにくいことを示唆している。また電気インピーダンスの測定では、流路形成過程において電気インピーダンスが増加する傾向が確認できた。これは昇圧に伴う亀裂ネットワークの形成によって、初期の飽和状態で孤立していた亀裂に存在する塩水が、ネットワークの形成に伴い流出し、相対的に電気インピーダンス測定領域内の荷電粒子の総量が減少したためだと考えられる。この後、流路の形成後はPDの増加に伴い、電気インピーダンスが減少した。この結果は形成された流路内で塩水の総量の増加に伴い、荷電粒子の総数が増加したためだと考えられる。
最後に測定したインピーダンスを基に比抵抗を算出し、浸透率との関係について検討した。定常状態では、比抵抗と浸透率は負の関係を持つことが明らかになった。一方、非定常状態(流路形成過程)ではこの関係が明確ではない。これは電気インピーダンスの測定領域内において、定常状態では亀裂系岩石中の塩水の流路と電気の伝導経路がほぼ同一であるのに対し、流路の形成過程では両者が異なっている可能性があることを示している。
実験では25MPaの静水圧環境下(PC)に設置した熱性亀裂を持つ花崗岩試料に、一定流量(0.1mL/min)で塩水((0.1 M/L KCl水溶液)を注入し、電気インピーダンスと間隙流体圧、下流側の塩水流量(FR)の変化を測定した。下流側の間隙流体圧(PD)を0.5MPa、5MPa、10MPaの3段階で変化させて実験を行った。0.5MPaの圧力条件下では、塩水の注入に伴い上流側の間隙流体圧(PU)が急激に上昇し、その結果FRも大きな変化を示した。その後、PUとFRはほぼ一定となった。この圧力上昇の過程で、塩水は既存の亀裂ネットワークを利用して流路を形成していると考えられる。本研究では、PUの上昇過程を非定常状態、PUとFRの変化が見られなくなった状態を定常状態として浸透率を計算した。次に、PDを段階的に上昇させて一定流量(0.1mL/min)で塩水を注入し、非定常状態と定常状態のPUとFRを測定した。また電気インピーダンスも浸透率の計算を行うタイミングでそれぞれ計測した。その後、間隙流体圧(PUおよびPD)を8MPa、2MPa、1MPaと段階的に下げて電気インピーダンスの測定を行った。圧力低下の直後にFRの変化が見られなくなったため、減圧過程では塩水の流動は無いとして浸透率の評価は行わなかった。
本研究の結果、浸透率は定常状態と非定常状態に関わらず、有効封圧 (Peff: PC-(PU-PD)/2)と負の関係を示した。これは高いPUによる塩水の注入により岩石中の亀裂がネットワークを形成し、浸透性が向上することを示している。また、塩水流動が定常状態となった後は、形成された流路を利用し、新たなネットワーク形成が起こりにくいことを示唆している。また電気インピーダンスの測定では、流路形成過程において電気インピーダンスが増加する傾向が確認できた。これは昇圧に伴う亀裂ネットワークの形成によって、初期の飽和状態で孤立していた亀裂に存在する塩水が、ネットワークの形成に伴い流出し、相対的に電気インピーダンス測定領域内の荷電粒子の総量が減少したためだと考えられる。この後、流路の形成後はPDの増加に伴い、電気インピーダンスが減少した。この結果は形成された流路内で塩水の総量の増加に伴い、荷電粒子の総数が増加したためだと考えられる。
最後に測定したインピーダンスを基に比抵抗を算出し、浸透率との関係について検討した。定常状態では、比抵抗と浸透率は負の関係を持つことが明らかになった。一方、非定常状態(流路形成過程)ではこの関係が明確ではない。これは電気インピーダンスの測定領域内において、定常状態では亀裂系岩石中の塩水の流路と電気の伝導経路がほぼ同一であるのに対し、流路の形成過程では両者が異なっている可能性があることを示している。