日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC28] 火山の熱水系

2024年5月30日(木) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:藤光 康宏(九州大学大学院工学研究院地球資源システム工学部門)、神田 径(東京工業大学科学技術創成研究院多元レジリエンス研究センター)、谷口 無我(気象庁気象研究所)

17:15 〜 18:45

[SVC28-P03] 別府・阿蘇の地熱・火山地域で採取された岩石試料の比抵抗・浸透率測定

*鈴木 健士1澤山 和貴1 (1.京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設)

キーワード:電気比抵抗、浸透率、岩石物理学、表面伝導

火山熱水系は火山・地熱活動と深く関係している。比抵抗は流体に対して強い感度を持つため、熱水系における流体分布や流体の流れを決定するために用いられる。空間的に広がる低比抵抗領域は地熱流体の流路と解釈でき、その領域の含水率や浸透率は比抵抗から推定される。しかし、比抵抗から推定される含水率は、推定に用いる経験式や理論モデルなどの選択に強く依存する。また、比抵抗から浸透率を推定するモデルは十分には確立されておらず、比抵抗構造からは未だ単純な浸透率構造しか構築されていない。加えて、地熱・火山地帯の比抵抗には、熱水変質による表面伝導の影響が含まれている可能性がある。
比抵抗・浸透率・空隙率の関係を説明可能な岩石物理モデルを検討する方法の一つとして、火山・地熱地域で採取された岩石試料の物性測定が挙げられる。本研究では、日本有数の地熱・火山地域である別府・阿蘇で採取した試料の比抵抗・浸透率・空隙率を測定し、それらの関係を調べた。また、いくつかの塩分濃度のNaCl溶液で試料を飽和させ、それぞれの条件でインピーダンス測定を実施し、そこからRevilのモデルに基づき表面伝導率を推定した。
実験の結果、別府と阿蘇の両試料で空隙率の増加に対する比抵抗の減少を確認できたが、一方で表面伝導の影響も確認された。推定された表面伝導度は、試料の変質具合と相関していた。また、溶岩およびアグルチネート試料の透水係数は、比抵抗の変化に対して両対数軸上で直線的関係を示した。しかし、同程度の浸透率であった溶岩試料と砂岩試料においても、その比抵抗値が異なるという事例も確認された。これら結果は、火山・地熱地域における地下の比抵抗について、砂岩で得られている知見のみで正確に解釈することは難しいということを示している。